ブルゴーニュで自然派ワインといえば?
この質問にパカレの名を挙げる方も多いのではないでしょうか。
少なくとも私はそうでした。
実はこのフィリップ・パカレ氏、自分から自然派を名乗る事はなく、周りがそう評価することで「自然派ワインの代名詞」とまで言われるようになったのです。
そのような一般的評価はさておき、
私はボージョレ・ヌーボー(ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーボー)を生み、日本で購入可能な主要生産者を30程ピックアップし、その中で多くの日本の消費者の方々に実際飲まれ、そして口コミ評価の高いワインはどれだろうという客観的視点から調べてみました。
その結果非常に多くの方に飲まれ、高い満足度を獲得していると感じた生産者の一つにパカレのボージョレ・プリムールがあました。
その他にそのような条件を満たしていると感じたのは、
■ルー・デュモン
■ジャン・フォイヤール
■ドミニク・ローラン
■ドメーヌ・ド・ラ・マドンヌ
■ルロワ
以上の生産者達でした。
ちなみにヌーボーではなくプリムールって何?
と思った方もおられるでしょう。
言葉の意味としては【ヌーボー=新しい】【プリムール=1番目の】という事ですが、プリムールは熟成にの耐える高品質ワインの初集荷といった意味合いがあり、要するに、単に新酒のヌーボーよりもプリムールの方が上質というように知っておけば良いでしょう。
《ワイン名》 フィリップ・パカレ ボジョレー プリムール
《価格》
【3000~4000円】
《ブドウ品種》ガメイ
《ボディ》 ライト~ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ボージョレ
《生産者》 フィリップ・パカレ
それでは、簡単に経歴紹介。
■フィリップ・パカレ氏はボジョレーのブドウ栽培および醸造一家に生まれ育つ。
■ディション大学で醸造学を学ぶ。この時ビオディナミ農法の先駆者であるジュール・ショヴェ氏と運命的出会いを果たし、自然栽培などの知識を深める。
■卒業後ビオロジック農法団体「ナチュール・プログレ」で2年間従事。
■シャトー・ラヤス(ローヌの名門)、ルロワで修業。
■プリューレ・ロック(DRCの共同経営者のドメーヌ)で醸造・販売責任者を務める。
そして10年でこのプリューレ・ロックの評価をみるみる高めた事で、パカレ氏は知名度を上げる。
■その手腕を買われ、DRCの醸造長のオファーもありましたが辞退し、自らが目指すワインを造るため独立。
2001年からリリースを始める。
■2019年現在ボーヌに本拠地を置き、ほぼ全ての畑を賃貸契約で借り、自らの専門栽培チームに緻密な指示を出して栽培されるブドウから造るスタイルを確立。これは限りなくドメーヌに近いネゴシアンスタイルと言えます。
といった経歴です。
《味わいの特徴》
繊細でピュア
ワンランク上のボージョレ
このワインの特徴は、並のボージョレに無い透き通るような透明感や、ミネラルや旨味などの繊細なニュアンスが感じられる品質にあり、その味わいは主張しすぎる事はありませんが、ワンランク上のボージョレである事を感じさせます。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■農薬は一切使用しない■
これは畑に生息する野生酵母が死滅させてしまうからという理由が最も大きく、そのような野生酵母の働きのある土壌によって得られるブドウは、土壌のミネラル分などの特徴を反映した上質な果実を実らせます。
■ありのままの発酵■
発酵においても野生酵母の働きを阻害する酸化防止用のSO2(亜硫酸塩)を使わず、野性酵母の働きによる発酵を待ち、さらにありのままの酵母の働きを促進させるため、発酵中の温度管理はあえて行いません。
これによって、土地の特性を表現した複雑な風味を持つ上質ワインが生まれます。
ボージョレにおいては、フレッシュな果実感と旨味、透き通るような繊細さを持ったワインが生まれます。
■控えめの樽■
樽香が反映しやす新樽の使用比率をあえて低くすることで、ブドウ本来の風味を感じやすくし、ほどよい樽のニュアンスも感じられるスタイルにしています。
■そのままボトリング■
ありのままのブドウの成分をボトルに詰め込むために、熟成中の澱引き・清澄(ワインの透明度を高める工程)・濾過も行いません。
その他にも様々な取り組みはありますが、主に以上のような理由により、土地の特性をよく表現した風味豊かでバランスの良いワインとなるわけです。
【外観】
深みのある赤紫色
【香り】
イチゴやラズベリーなどの赤い果実のフレッシュな香りに、ブルーベリーやチェリーにバナナなどのフルーティでな香り、バラの華やかさや、ほのかな硫黄のようなニュアンスも感じられます。
【味わい】
ほんのり甘味を伴ったフルーティな果実味は透明感があり、女性的な繊細さが感じられます。
穏やかなタンニンと心地よい旨味も広がり、生き生きとした酸が味わいをまとめた後、心地よい余韻へと導かれます。
《飲む時の適正温度》
【12℃~18℃】
低めの温度すれば酸味やフレッシュ感が際立ち軽快な飲み口になりますし、温度を上げるほど酸は穏やかに感じられ、甘味や複雑な風味の広がりある味わいを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃》
飲み頃はブドウ収穫年から
【およそ0年~3年】
一般的傾向や飲んだ方の評価傾向から推測すると、これくらいではないかという個人的見解です。
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
芳醇な香りと、繊細な味わいを持った上質ワインです。
香りが取りやすく、甘味を感じやすいように設計された、ふくらみのあるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
カプレーゼ
チキンのグリルをベリーソースで
など、ほどよいコクのある味わいの料理に合わせる事で、繊細なワインの味わいが料理を引き立て、また、料理がワインを引き立て、心地よい風味の広がるマリアージュが楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
ワンランク上のボージョレヌーボーを選ぶ時の候補におすすめする一本です。
自然派のパカレらしいピュアな味わいは多くの方の支持を得ていますし、ちょっとしたプレゼントや手土産にしても、盛り上がるアイテムとして活躍してくれそうです。
《こんな場合には不適切!?》
長期熟成に耐えるワインではありませんから、適切な環境であっても、10年も熟成させるのはやめましょう。
1~3年程度の熟成は、賛否はありますが耐えるワインではあります。
ボジョレーの10年物!!どんな味わいになっているのか!!
そんなスリルを体験したい方はやりましょう!!(笑)
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「ルロワのプリムールの後に飲んではいけません。悪くないのに悪く思えてしまう。並のボージョレに比べれば格別に良いですが。」
「グリーンラベルとレッドラベルは輸入業者の違いだけで中身は同じ、だけど香りがレッドの方が芳醇なのは、ボトル差?管理の差?」
「2019は2018程の感動は無いかな。しみじみ旨い系だけど。それからあえて2ヶ月だけ置いてみましたが、やや酸化気味で、早い段階の方が良かったと個人的には思いました。」
【良い口コミ】
「色合いに透明感があり過ぎないところが自然派って感じがして絶妙に良い。軽快でフレッシュなんだけど、しっかりと味わい深いところがいいですね。ラズベリーなどの赤い果実のフレッシュさに、カシスやプルーンのフルーティさもあります。今回は2019、来年もまた買っちゃいます。」
「安くて不味いと噂されるボージョレ。だけどパカレのそれはちょっと違うみたいだ。高くて旨いが当てはまる。」
「プリムールクラスになると熟成にも耐える!?多くの方が試しているので私もやってみた。1年熟成の2018はブドウの皮にバラ、少しの硫黄っぽさがビオだと感じさせます。少しの炭酸を持ち、生き生きとした果実味で酸はまろやかな印象。やはり少しの落ち着きを感じますね。時間経過で甘味や旨味が強くなってきて中々美味しく楽しめました。」
「発売から1ヶ月経過の2019は、複雑さも感じられる優れたボージョレ。開けたては綿菓子のようなニュアンス。すぐにそれは消え、次は紅茶にバラ、そしてシナモン。鉄っぽいミネラルも感じられ、納得の品質って感じです。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 0%
美味しい 30%
普通 70%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
比較的手頃なボージョレという事で、感動を覚えるような品質ではありませんが、並のボージョレに比べれば奥行きのある味わいで、まあボチボチ旨いと感じる方もいれば、さすがパカレは一味違うと感じる方もおられました。
特に否定的なコメントも見当たりませんし、外したくない時、安心して選べるちょっと上質なボージョレだと感じる結果となりました。
濃厚なワインや、大人っぽい落ち着きある上級ピノを求める方は、そもそもこの記事には辿り着かないでしょうが、フレッシュでチャーミングな風味の中に、繊細さや奥深さも垣間見せるワンランク上のプリムールは、選択肢に持っておいても良さそうです。
以上です。
夜空を見て思いました。
星の数はいくつあるのかは知りませんが、星の数ほどある記事の中から、この記事に辿り着く事は奇跡の確立なのかもしれません。
記事の数もいくつか知りませんが(笑)。
わからないことだらけのこの世界。
ワインも常に変化し、ヴィンテージ・品種・産地・熟成度合い・造り手・温度・飲む相手・合わせる料理・体調などの様々な要素の組み合わせで、唯一無二の味わいを表現します。
そんな無限とも言えるワインの中から、素敵な一本を見つけ出すのは難解であり、宝探しのような楽しさもあると感じています。
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
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