モレ・サン・ドニにおいてデュジャックと双璧をなすスタードメーヌ。
歴史は1872年からと古く、1932年からは自身の育てたブドウを自身で醸造するドメーヌスタイルをいち早く始めます。
このドメーヌスタイルは当時のブルゴーニュでは非常に珍しいことで、先駆けの存在になったことで一目置かれるようになりました。
グランクリュをはじめとする優良な畑をいくつも所有し、秀逸なワインを生産し続けており、2017年には英国の高級ワインプラットフォームLiv-exの「パワー100」において6位、ブルゴーニュではDRCに次いでの2位を獲得しました。
このパワー100は、その年に取り引きされたワインをブランドでグループ化し、価格、取り引きの実績、数量、平均価格などに基づいて定めたランキングという事で、データ実績においても裏付けされるように、モレ・サン・ドニの域を超えブルゴーニュを代表する生産者と言えるでしょう。
今回紹介するプルミエクリュは、様々なラインナップのある中で、特に多くの方が実際に口にしており、そして高評価を得ている傾向が感じられたので紹介する事にさせていただきました。
あなたのワイン選びの一助になれば嬉しく思います。
《ワイン名》 ドメーヌ ポンソ モレ・サン・ドニ プルミエクリュ キュヴェ・デ・ザルエット
《価格》
【16000~24000円】
《ブドウ品種》ピノノワール
《ボディ》 ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>モレ・サン・ドニ
《生産者》 ドメーヌ ポンソ
《特徴》
ブドウ本来のピュアな旨味
繊細でありながら存在感を放つ
まずはこのプルミエクリュ キュヴェ・デ・ザルーエット は特級畑クロ・ド・ラ・ロッシュと、一級畑モン・リュイザンの若樹のブドウを使用しています。
樹齢の高い樹のブドウの方が上質なブドウを実らせますが、樹齢こそ若いものの、テロワールの素晴らしさは言うまでもありません。
そんなブドウから造られるワインは、繊細でありながらハッキリとした輪郭を持った質感で、そのポテンシャルの高さは熟成によって本来の力を発揮します。
そのような品質になる理由をいくつか挙げます。
■ポンソではピュアなブドウの味わいを表現するために、自然派ワインという概念が生まれる前から、化学薬品を使用しない栽培を実践しており、健全で成分豊かな土壌のエキスを吸い上げたピュアなブドウが育ちます。
■極めて低収量である事も大きな特徴で、厳しい剪定によって残されたブドウには成分が集中し、上質なワインが生まれます。
■収穫は最も遅い事でも有名で、熟度が高く成分豊かなブドウを育てます。
■醸造は「決まりのないことが決まり」という独特のスタイル。
ブドウの実の付いた枝の部分を梗(こう)と呼びますが、それを残して発酵するか外すか、発酵中のピジャージュ(棒でまぜる作業)の頻度などは、ヴィンテージごとのブドウの状態によって変えるという事です。
主に以上のようなことで、他を圧倒する天才的手法と言われる由縁でもあります。
【外観】
深みのあるルビーレッド。
熟成が進むほどレンガ色に近づいていきます。
【香り】
ラズベリーやチェリーにカシスなどの果実香にバラの華やかさ、樽のニュアンスはほどよくキノコや土のニュアンスも感じられます。
熟成が進むほど果実香は落ち着きある熟した果実のニュアンスが強まり、腐葉土や動物的な香りなどの熟成香も加わり円熟味を感じます。
【味わい】
若いうちはフレッシュな果実の引き締める酸が特徴的で、その奥に潜む旨味をほのかに感じます。タンニンは穏やかで、ポテンシャルを感じさせる味わいです。
熟成させるほど酸味などの成分が溶け合う事で、ピュアで繊細な果実味と、なめらかで旨味たっぷりの味わいに成長し、複雑な熟成香も加わり魅惑的な品質に変貌していきます。
《飲む時の適正温度》
【14℃~18℃】
少し低めの温度にすれば、酸味を感じやすくエレガントな飲み口が楽しめますし、温度を上げるほど甘味を感じやすく酸は穏やかな印象になり、豊かで複雑な風味の広がりを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から5年~30年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ赤のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1990年 5
1991年 3
1992年 2
1993年 4
1994年 2
1995年 4
1996年 5
1997年 3
1998年 3
1999年 4
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 3
2004年 2
2005年 5
2006年 3
2007年 2
2008年 3
2009年 5
2010年 5
2011年 3
2012年 4
2013年 3
2014年 4
2015年 5
2016年 4
2017年 4
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
豊かな香りとエレガントで複雑な味わいを持った上質なワインです。
香りが取りやすく、温度が少しずつ上がる事で甘味を感じやすいように設計された、ふくらみのあるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
鴨鍋
ラムチョップ
など、豊かなコクのある味わいの料理に合わせる事で、豊かでエレガントなワインの味わいが料理を引き立て、また、料理がワインを引き立て、複雑でやさしい風味の広がる上質なマリアージュが楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
モレ・サン・ドニの優秀なワインを選ぶのであれば、ポンソは選択肢から外すべきではないでしょう。
毎年ブドウの状態を見て醸造方法を変えるような、独特で天使的な造り手であり、ワインのおもしろさを本気で追求したい方が選ぶべきワインかもしれません。
ワイン経験豊富な方ほど、ポンソは魅力的で興味深いのではないかと思うので、そのような方への贈り物やプレゼントにしても素敵ですね。
《こんな場合には不適切!?》
ポンソの魅力を存分に感じるためには、ある程度の経験値が必要かもしれません。
ワイン初心者の方が、いきなりポンソでは「旨い!!たぶん。」かもしれません。(笑)
とは言うものの、ワインはお酒であり楽しむ事が一番大切だと思いますので、不適切な場面というのは本当は無いのかもしれません。
あえて言うなら、場面の雰囲気を悪くするような飲み方は不適切という事でしょう。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「4年目の2013はまだ若すぎたかな。酸っぱそうな香りでやっぱり酸っぱい味。タンニンは感じにくく旨味も薄いか。時間経過で酸は丸くなったような感じはあり、不味いワインではないのだが期待には応えていない。」
「9年目の2006はまだ硬いかな。90分ほど経過したら格別なワインに変貌したが、もう2・3年熟成させても良いか。」
「4年目の2012とあってちょっと若いのだが、ポテンシャルは感じバランスの良いワイン。しかし24000円は高すぎるやろ。」
【良い口コミ】
「当たり年のポンソは秀逸だ。凝縮されたベリーの風味でしなやかであり、心地よい余韻。16年熟成の1999。」
「とっても優雅で美しいワイン。上質な酸味に出汁感。女性に例えられるのが納得できるエレガントさを8年目の2008からは感じます。」
「9年目の2008は、カツオ出汁を思わせる香りにキノコも加わり癒し系の心地よさ。旨味たっぷりで美味しいです。さらに熟成させたらどうなんだろうという妄想も膨らみ楽しめました。(笑)秀逸ですね。」
「11年熟成の2008。2年前に同ヴィンテージを飲んだが、非常に個性的な印象。熟成香にカツオ出汁に酸味の主張が強く、果実味は感じにくいものだった。今回はカツオ出汁のニュアンスは感じられず、青い野菜や土っぽさ、そして若干ひねた感じ。一緒に飲んだ仲間たちも『ポンソはやっぱり個性的だね~』と慰めモードだったが、時間経過で果実味が前面に現れとても秀逸な味わいに変貌。同じワインでも、これだけの変化を楽しめるという意味でもとても良いワインだった。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 24%
美味しい 63%
普通 13%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
ポンソのワインは結構個性的な部分があり、熟成した時に豊かに感じられる和風出汁やキノコ類のニュアンスが印象的で、とても高い評価を受けている方が多い傾向でした。
しかし成分の溶け合いの浅い若いうちは、ポテンシャルは感じる良いワインではあるけど、酸が立ちすぎて旨味を感じにくい傾向もありましたので、飲み頃を見極める必要もあると感じました。
いずれにせよ、ポンソのただ者ではない雰囲気は、実際飲んだ方々の口コミからひしひしと伝わってきました。
以上です。
ポンソは天才的で革新的な生産者なのですね。
実はその他にも特徴的な要素があります。
【独自の合成コルク】
天然コルクの酵素透過の不確実性が熟成に不適切と考えるポンソは、2008年以降、長期熟成に適したことが実験により証明された合成コルクを使用しています。
【ボトルに温度センサー】
ラベルに温度センサーの役割を果たす特殊インクが使われ、瓶内温度が28℃を超えると黄色がオレンジ色になり、1度変色すると元に戻りません。
これによって保存状態が適切だったかどうかが判別できます。
【偽装対策】
2009以降キャップシール部分に複製不可能な泡状模様が施され、この模様を専用サイトで照合することで正規品である事を確かめることができます。
このような取り組みは正に世界の最先端を行く生産者と言えるでしょう。
ポンソを知るという事は、ワイン界の最先端を知る事。
そういう事なのかもしれません。
あなたのワインのある生活が豊かになる事を願っております。
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