アンリ・ジャイエ。
言わずと知れた今は亡きブルゴーニュワイン造りの神と呼ばれる人物です。
ワイン造りを極めつつ、次世代の育成にも積極的な人物で、彼が育てたメオ・カミュゼ、エマニュエル・ルジェ、フーリエなどは今やブルゴーニュを代表する偉大な生産者となりました。
今回紹介するフィリップ・シャルロパンも、そんなアンリ・ジャイエの教えを直接受けた人物の一人。何度も試行錯誤を繰り返し造り上げたワインを師匠のところに持って行き、ついには「まさに私が言いたかったように、そのとおりに造っているな」と、言われたということです。
そんなシャルロパンのワインは品質がかなり高いにもかかわらず、価格が値打ちという事ですぐに売れてしまい、なかなか手に入れにくい点が難点ではありますが、必ず知っておくべきワインだと感じています。
今回はペルナン・ヴェルジュレスで実際多くの方に飲まれて、口コミ評価の高いワインはどれだろうと客観的視点から調べてみた結果、際立って皆様を満足させていると感じたのがシャルロパン。
私の調べた限りでは突出したNO1でした。
ちょっとマイナーイメージも強いこのような産地の、優れたワインを知っておくという事は、選択肢の幅を広げ様々なワインを楽しむ一助になるのではないかと考えています。
《ワイン名》 ドメーヌ フィリップ・シャルロパン ペルナン・ヴェルジュレス ルージュ
《価格》
【5000~6000円】
《ブドウ品種》ピノノワール
《ボディ》 ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ペルナン・ヴェルジュレス
《生産者》 ドメーヌ・フィリップ・シャルロパン・パリゾ
《特徴》
豊潤で親しみやすく
ほどよい複雑性と優雅さ
このワインの特徴は、シャルロパンらしい豊潤な果実味があり、控えめなタンニンと雑味の無い透明感のある質感は、口当たり優しく親しみやすいもので、ブルゴーニュピノらしい複雑さと優雅さも持ち合わせている点にあります。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■リュット・レゾネ■
ブドウの質がワインを決めると考えるシャルロパンは、自然の力を邪魔しないように、極力農薬や化学肥料は使用しないリュット・レゾネ(減農薬農法)を実践し健全な土壌を育て、そのありのままの土壌の豊かな成分を吸い上げた上質なブドウが育てます。
■完熟を待つ■
完熟ブドウになるまで収穫しないため、豊潤な果実味を持ったワインになります。
■厳しい選果■
ブドウの一粒一粒を厳しく選別し、洗練された雑味の無いワインが生まれます。
■完全除梗■
アンリ・ジャイエの教え同様に、ブドウの梗(果実の付いた枝のような部分)は一切使用しない事もシャルロパンの大きな特徴。
そうする事で、より洗練度の高い透明感溢れる品質になります。
※ただしDRCなどの極一部のトップ生産者は、ワインの複雑性や熟成能力を高めるために、梗の部分を全て使用する全房発酵を行っています。
■低温浸漬■
果実の香りや色の要素を抽出する工程(マセラシオン)を1週間ごく低温で行うことで、純度やフレッシュ感を保つことを可能にしています。
■ほどよい樽香■
以前は樽の風味が反映しやすい新樽の使用比率100%で熟成していましたが、近年はその比率を下げることで、果実の繊細な風味も感じつつ、樽の風味も感じられるワインを生んでいます。
他にも様々な取り組みがありますが、以上のようなことで上質で人気の高いワインを生みだしているわけです。
【外観】
輝くルビーレッド
【香り】
チェリーやラズベリーのような生き生きとした果実香に、カシスやプルーンのような甘やかな果実香も感じられ、バラの華やかさや樽に由来するバニラのニュアンスもほどよく感じられ、熟成をすることで土や革製品のような熟成香も広がりを見せます。
【味わい】
豊潤でピュアな果実味は透明感があり親しみやすさがあり、心地よい甘味とコクがあります。
穏やかなタンニンはなめらかな質感を表現し、美しい酸味は味わいを引き締めた後、果実香にバニラや土など複雑な風味を残したエレガントな余韻が続いていきます。
熟成するほど成分は溶け合いコクとまろやかさが増し、若々しいフレッシュなニュアンスは減り、落ち着きある旨味を持った艶やかな品質へと成長してゆくでしょう。
《飲む時の適正温度》
【14℃~18℃】
その豊かで心地よい香りと味わいを感じるには、このくらいの温度帯が最も広がりある風味を楽しめるでしょう。
少し冷やし気味にすれば酸味が際立ち軽快さのある飲み口になりますし、温度を上げるほど酸は穏やかに感じられ、甘味や風味の広がりある優雅な味わいを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から3~15年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ赤のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
2004年 2
2005年 5
2006年 3
2007年 2
2008年 3
2009年 5
2010年 5
2011年 3
2012年 4
2013年 3
2014年 4
2015年 5
2016年 4
2017年 4
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
豊かな香りと、エレガントで優雅な味わいを持った上質ワインです。
香りが取りやすく、温度が少しずつ上がる事で甘味を感じやすいように設計された、ふくらみのあるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
キノコのリゾット
鴨鍋
など、ほどよいコクのある味わいの料理に合わせる事で、豊かで優雅な風味の広がる上質なマリアージュが楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
親しみやすい上質ブルゴーニュピノをお探しでしたら、シャルロパンはこのペルナン・ヴェルジュレスに限った話ではありませんがおすすめです。
このペルナン・ヴェルジュレスは、ややマイナー産地でジュヴレ・シャンベルタンなどと比べてもお値打ちで購入でき、品質がそこまで劣るわけではありませんから、そういったコスパ面でも優れていると言えるでしょう。
そして、そのマイナーさ(意外性)はワインの知識が豊富な方にこそ興味深く感じる可能性も大いにありそうですから、そのような方へのちょっとしたプレゼントや贈り物にしても喜んでもらえそうです。
《こんな場合には不適切!?》
ワインはお酒であり楽しむことが最も大切だと考えますから、生産者に敬意の無い飲み方や、場面の雰囲気を悪くしてしまうような飲み方をしない限り、不適切な場合は無いのかもしれません。
そのような事を踏まえてあえて言うとすれば、ボルドー格付けワインやニューワールド系の凝縮された成分を持ったワインが好みの方や、そのようなワインを飲んだ後にこのワインを口にすると、せっかくの繊細な優雅さをただの薄いワインと感じてしまう事もありそうです。
それぞれのワインの良い部分を感じていただければ幸いですが、飲み順も意識するともっと楽しめそうです。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「コルクが臭い・・ワインもピノの香りが無い・・。味も水っぽく、翌日はもう無理な味。廃棄。」
「6年目の2013はラズベリーなどの果実香に、革製品や土を思わせる野性味あるアロマ。酸とタンニンは穏やかで心地よいのだが、少しの苦味が気になるかな。これをアクセントと捉えるか雑味と捉えるかは意見が割れそうだね。」
【良い口コミ】
「3年目の2013は若いかと思いましたが、そんな事ありませんでした。厚みのある果実味は心地よい甘味があり、ストラクチャーはハッキリしていますが優しさもありますね。いいワインです。」
「やっぱりシャルロパンはいいねぇ~。小梅を感じさせる豊かな芳香性で、味わいも優しくてボリューミーだぁ。6年熟成の2011は十分に満足できる品質で、もっと高いのも造ってるみたいだけど、俺はもうこれ以上は求めないよ(笑)」
「エレガントとはこのようなワインの事を言うのでしょうね。5年熟成の2014はシャルロパンらしい香りが満開。サクランボにイチゴ、バラに鉄っぽさもありますね。味わいはチャーミングでふくよか、全体のバランスも良く安定感がありますね。」
「グランクリュでもプルミエクリュでもない村名ワインでこの品質。非常に洗練された優しさを持っている。ペルナン・ヴェルジュレスの中では突出した逸品だと思う。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 3%
美味しい 67%
普通 27%
良くない 3%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
残念なブショネを経験された方以外は、感動レベルとまではいかないまでも、シャルロパンらしい優しく優雅な味わいに、高い満足度を感じられている傾向が強かったように思います。
シャルロパンは他のAOCでもかなり高評価を得ており、ブルゴーニュでも屈指の優良生産者である事を改めて確認する結果となりました。
以上です。
今回もなんだかシャルロパンびいきの記事っぽくなってしまいました。。。
しかし、私はあくまで皆様の口コミ評価や一般的評価を軸に、客観的視点から感想を入れつつ記事制作を行っているのであり、決してひいきにしているわけではありません。
そういった意味では、いかに多くの方に支持されているかがよくわかります。
私の調べる限り価格も加えた総合満足度では、ブルゴーニュでトップあるいはトップクラスの生産者である事は揺るぎないでしょう。
そして、シャルロパンを見るとコロンビアのバルデラマを思い出してしまうのは私だけでしょうか。。。
最後に、おかしな発言をしてしまいました。
あなたのワイン選びの一助になれれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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