ブルゴーニュで自然派ワインといえば?
この質問にパカレの名を挙げる方も多いのではないでしょうか。
少なくとも私はそうでした。
実はこのフィリップ・パカレ氏、自分から自然派を名乗る事はなく、周りがそう評価することで「自然派ワインの代名詞」とまで言われるようになったのです。
パカレの評判は日本でも高く、ジュヴレ・シャンベルタンやニュイ・サン・ジョルジュでも紹介させていただきましたが、今回はポマールというわけです。
ポマールのワインで多くの方に飲まれ、そして口コミ評価の高いワインはどれだろうという客観的視点から調べてみた結果、パカレのワインは一際多くの方に飲まれ高い評価を受けていると感じたので、紹介する事に決めました。
《ワイン名》 フィリップ・パカレ ポマール
《価格》
【8000~10000円】
《ブドウ品種》ピノノワール
《ボディ》 ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ポマール
《生産者》 フィリップ・パカレ
それでは、簡単に経歴紹介。
■ボジョレーのブドウ栽培および醸造一家に生まれ育つ。
■ディション大学で醸造学を学ぶ。この時ビオディナミ農法の先駆者であるジュール・ショヴェ氏と運命的出会いを果たし、自然栽培などの知識を深める。
■卒業後ビオロジック農法団体「ナチュール・プログレ」で2年間従事。
■シャトー・ラヤス(ローヌの名門)、ルロワで修業。
■プリューレ・ロック(DRCの共同経営者のドメーヌ)で醸造・販売責任者を務める。
そして10年でこのプリューレ・ロックの評価をみるみる高めた事で、パカレ氏は知名度を上げる。
■その手腕を買われ、DRCの醸造長のオファーもありましたが辞退し、自らが目指すワインを造るため独立。
2001年からリリースを始める。
■2019年現在ボーヌに本拠地を置き、ほぼ全ての畑を賃貸契約で借り、自らの専門栽培チームに緻密な指示を出して栽培されるブドウから造るスタイルを確立。これは限りなくドメーヌに近いネゴシアンスタイルと言えます。
といった経歴です。
《特徴》
優しくバランスの良い
上質な薄旨ピノ
このワインの特徴は、果実味・タンニン・酸味のどの成分が主張しすぎる事はありませんが、土地の成分を存分に吸い上げた、複雑な風味や旨味がじんわりと感じられるような品質にあり、全体の優れたバランス感覚で繊細で奥深い味わいを表現した薄旨ピノと言えるところです。
そのような品質になる理由をいくつか挙げます。
■農薬は一切使用しない■
これは畑に生息する野生酵母が死滅させてしまうからという理由が最も大きく、そのような野生酵母の働きのある土壌によって得られるブドウは、土壌のミネラル分などの特徴を反映した上質な果実を実らせます。
■ありのままの発酵■
発酵においても野生酵母の働きを阻害する酸化防止用のSO2(亜硫酸塩)を使わず、野性酵母の働きによる発酵を待ち、さらにありのままの酵母の働きを促進させるため、発酵中の温度管理はあえて行いません。
これによって、土地の特性を表現した複雑な風味を持つ上質ワインが生まれます。
ポマールにおいては、しなやかなタンニンと心地よい果実味が感じられる優しい印象のワインが生まれます。
■控えめの樽■
樽香が反映しやす新樽の使用比率をあえて低くすることで、ブドウ本来の風味を感じやすくし、ほどよい樽のニュアンスも感じられるスタイルにしています。
■そのままボトリング■
ありのままのブドウの成分をボトルに詰め込むために、熟成中の澱引き・清澄(ワインの透明度を高める工程)・濾過も行いません。
その他にも様々な取り組みはありますが、主に以上のような理由により、土地の特性をよく表現した風味豊かでバランスの良いワインとなるわけです。
【外観】
透明感のあるルビーレッド。
熟成が進むほどレンガ色に近づいていきます。
【香り】
イチゴやラズベリーなどの赤い果実のフレッシュな果実香に、カシスなどのフルーティな果実香も感じられ、樽のニュアンスも加わります。
熟成させるほど果実香は円熟味の増した印象になり、紅茶・土・キノコを思わせる熟成香も加わり複雑性が高まります。
【味わい】
心地よい果実味としなやかなタンニンはスッと口に入って来るような繊細さがあり、美しい酸味は心地よくバランスを整え、出汁の効いたような旨味と繊細な風味を伴った余韻が長く続きます。
熟成させるほど成分は溶け合いなめらかさが増し、紅茶にキノコや土といった熟成を感じさせる風味と、円熟を感じさせる甘みと旨味を伴った果実味が広がり、長い余韻があります。
《飲む時の適正温度》
【14℃~18℃】
その複雑で心地よい香りと味わいを感じるには、このくらいの温度帯が最も広がりある風味を楽しめるでしょう。
少し冷やし気味にすれば酸味が際立ち軽快さのある飲み口になりますし、温度を上げるほど酸は穏やかに感じられ、甘味や風味の広がりある味わいを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から3~20年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ赤のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1999年 4
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 3
2004年 2
2005年 5
2006年 3
2007年 2
2008年 3
2009年 5
2010年 5
2011年 3
2012年 4
2013年 3
2014年 4
2015年 5
2016年 4
2017年 4
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
心地よい香りと、エレガントで複雑な味わいを持った上質ワインです。
香りが取りやすく、温度が少しずつ上がる事で甘味を感じやすいように設計された、ふくらみのあるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
アワビバター
鴨鍋
など、ほどよいコクのある味わいの料理に合わせる事で、繊細でエレガントな風味の広がる上質なマリアージュが楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
ガツンとしっかり赤ワインと言うよりは、しなやかで出汁の効いたような旨味も感じられるピノノワールです。
ちょっと疲れた体を癒したいような時は、ガツンとくるような品質よりも、スッと体に溶け込むような優しさを持ったワインを選んでも良いでしょう。
《こんな場合には不適切!?》
元気が溢れガツンと赤ワインを飲みたいような時には、このワインが物足りなく感じてしまう事もありそう。
濃厚な肉料理などには、パワフルなボルドー格付けワインや果実の凝縮感溢れるニューワールド系のワインを選んだ方が合うでしょう。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「3年熟成の2014は淡い色調で、梅や沢庵を思わせる香りがあります。全体の印象はやや線が細い印象です。20年も熟成させれば風味が膨らみしなやかになるとの事ですが、現段階ではエレガントで酸味が心地よい平均的なワインかな。」
【良い口コミ】
「6年熟成の2011はタンニンがワインに馴染みしなやかで複雑な風味がある。まだ若々しい酸がとっても美しくていいワインだと感じました。」
「10年熟成の07は雑味無くしなやかな味わいでバランスが素晴らしい。心地よい香りとほどよい果実味にタンニン、そして長い余韻。いい熟成を経ているね。」
「8年熟成の09。タンニンと酸を包み込むような熟成感はとても優しい印象で、時間経過で現れる果実の甘味も素晴らしく心地よいものがあります。これは秀逸というべきでしょう。」
「一見エレガントで繊細なだけのようにも思えたが、じんわりと広がるような後口は中々面白い。3年目の2014か、これから先も楽しみな一本だ。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 3%
美味しい 53%
普通 44%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
やはりパカレは安定して高いレベルの品質を維持しているな、というのが第一印象で、感動レベルの評価をされる方はほとんど見当たりませんでしたが、上級すぎずカジュアルすぎる事もない、エレガントで出汁の効いたような旨味も感じられる心地よい品質に、高い満足度を得ている傾向が強いと感じました。
ただしそのようなピノノワールらしい美しい酸と、主張し過ぎないエレガントな味わいは、ニューワールド系のような果実の凝縮感の感じられるワインが好みの方には、やや酸っぱく感じたり薄く感じたりしてしまう事もあるかもしれないと感じました。
以上です。
パカレのポマールのイメージは広がりましたでしょうか。
私は最近おでこが広がりました・・薄旨ならぬ薄頭って事で・・・。
さておき、パカレは非常にたくさんの産地のワインを生産し、レベルの高いワインを生んでいる事がよくわかります。
お値段も若干高めですが・・
しかし、それでも多くの方に選ばれるという事で、その品質の高さがうかがえます。
やはり選択肢の一つにパカレは持っておいても良いのではないでしょうか。
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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