サンジョベーゼの最高傑作と呼ばれる銘柄。
キャンティ クラシコでも際立つ人気ぶりで紹介したサン ジュスト ア レンテンナーノですが、そんな生産者が手掛けるトップキュベの人気ぶりも目を見張るものがありました。
トップキュベは2つあり、メルローで造られる「リコルマ」も好評ですが、それ以上に「ペルカルロ」への口コミ満足度(vinica)は際立っている印象。
特に10年以上の熟成物に対する評価は高く、2万を超えるスーパートスカーナと比肩する満足度を考慮すると、コスパ面においても優れる銘柄だと強く感じました。
この記事を最後まで読み進めていただき、知識と共に深まるワインの味わいを楽しんでいただければ幸いです。
《ワイン名》サン ジュスト ア レンテンナーノ ペルカルロ
《価格》
【9,000~2万円】
※1万前後が多く古酒ほど高額な傾向
《ブドウ品種》サンジョベーゼ
《ボディ》 フルボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 イタリア>トスカーナ州
《生産者》 サン ジュスト ア レンテンナーノ
サン ジュスト ア レンテンナーノは、キャンティクラシコ地区を代表するトップ生産者のひとつ。
サン ジュスト ア レンテンナーノとは土地の名前で、「ジュスト」は「正義 公正」などの意。エチケットには公平を表す天秤がデザインされています。歴史は長く、1100年代にシトー派修道院の醸造所として誕生しており、長らく名門リカーゾリ家が所有していましたが、1914年の婚姻に伴いマルティーニ ディ チガーラ家の所有となりました。
1981年から瓶詰めを開始しており、「ラ リコルマ」「ペルカルロ」の2つの銘柄の成功で、キャンティクラシコ地区のトップ生産者としての地位を確立。造られるワインは世界的ワイン誌「ワインアドヴォケイト」などでも高く評価され、日本のワイン誌である「ワイナート」では「ペルカルロ」が表紙に掲載された実績も持っています。
今回紹介しているのがそのペルカルロで、サンジョベーゼの最高傑作の一つと呼ばれる銘柄です。
様々なワイン誌や評論家にも高い評価を受けており、その一例は以下の通り。
【ワインアドヴォケイト】
2008年 95
2009年 95
2014年 92
2016年 98+
【アントニオガッローニ】
2015年 98
2016年 99
【ワインスペクテイター】
2015年 95
《味わいの特徴》
充実した成分による風格
熟成で真価を発揮する
秀逸なサンジョベーゼ
このワインの特徴は、凝縮された深い果実味、強靭なタンニン、凛としたミネラル感、引き締める酸といった充実感に溢れた味わいにあり、スパイスや樽などの風味も加わった複雑な味わいからは、風格やスケールが感じられます。
また、そのような充実した成分がある事で長期熟成に耐えるポテンシャルも十分で、熟成するほど成分は溶け合いしなやかさが増し、円熟した魅力を発揮。
サンジョベーゼの最高傑作と呼ばれるだけのポテンシャルを持ったワインと言えるでしょう。
【外観】
ガーネットを帯びた深いルビーレッド
熟成するほどレンガ色に近づきます
【香り】
プラム、カシス、ブラックチェリーなど円熟した果実香を主体に、バラやスミレの華やかさやクローヴやシナモンのスパイス。樽に由来するバニラやチョコレートのニュアンスや革製品のような熟成香も適度に加わり、それらが一体となった複雑で心地よい芳香が広がります。
熟成するほど果実香はより円熟味を増し、革製品や腐葉土といった熟成香も強まった複雑で魅惑的な芳香が広がります。
【味わい】
凝縮感のある厚い果実味は適度な甘味と深いコクを伴いますが、強靭なタンニンと凛としたミネラル、そして味わいを引き締める酸がある事で風格あるドライな飲み口を表現。果実の風味に加え適度な樽やスパイスの風味も加わった複雑さは、奥行きある味わいにさらに深みを与えており、それらの要素を残した長い余韻が続きます。
熟成するほどタンニン、ミネラル、酸などの豊富な成分が円熟した果実味と溶け合い滑らかさが増します。
風格やスケール感に満ちた若い頃と比較すると穏やかで優しい印象になり、円熟した果実の甘味や深いコク。革製品や腐葉土といった熟成香も強まった複雑でエレガントな味わいに成長していきます。
それでは、そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■品種の個性■
キャンティに使用されるサンジョベーゼは、スミレやチェリーを思わせるフレッシュな香りを持ち、味わいも豊富な酸とフレッシュな果実味を持ったワインを生む傾向です。
しかしレンテンナーノが生み出すサンジョベーゼは、平均的なものより凝縮感のある味わい深さがあり、特にペルカルロは別格。
その要因は以下の通りです。
■ブドウの凝縮度■
通常サンジョベーゼは1房約300gになりますが、ペルカルロに使われるブドウは約100g。
成分が充実しつつ水分が少ない小さなブドウは、凝縮された味わいを生む要因になっており、そのようなブドウが育つのは以下の要因があります。
■優れた自然環境■
所有するキャンティ地区の南部の畑には特徴的な《気候》と《土壌》があり、例外的な凝縮感を生みだしています。
《気候》
7月と8月は雨が降らず高温になり、水分が制限されることで果実は凝縮され、高温はブドウの完熟を促します。
《土壌》
表面が砂利質でその下に粘土質土壌が適度に存在する土壌で、粘土質土壌の保水性により完全に渇水することがなく、ブドウを健全に育てます。
■厳しい収量制限■
剪定などを行い収穫量をあえて抑えることで、残されたブドウに成分を集中させます。
その中でも特に優れたブドウだけをペルカルロに使用しており、果実味、タンニン、酸、ミネラル分など、充実し洗練された成分を持つブドウに由来するポテンシャル溢れるワインが誕生。
長期熟成で成分が溶け合い優雅で魅惑的なワインへと成長していきます。
■適度で上品な樽感■
醸造を終えたワインは、フレンチオークの小樽(バリック)で20~ 22ヶ月間熟成させます。
大樽と比較して樽の風味が反映されやすく、酸やタンニンがマイルドになるのが小樽の特徴。
また、より樽の風味が反映されやすい新樽ではなく、適度に反映する古樽を使い、ブドウの繊細なニュアンスを隠さない程度の上品な樽の風味を与えます。
優しい味わいを生む小樽を使用しているにも関わらず、若いうちは硬いと言われるほどで、逆言えばそれほどポテンシャルに溢れたブドウをペルカルロに使用している事が窺い知れます。
《飲む時の適正温度》
【14℃~20℃】
冷やし気味にすれば引き締まった印象。酸やタンニンが際立ちエレガントな飲み口に。
温度を上げるほど穏やかな印象。甘味や複雑な風味の広がりが楽しめます。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から6~35年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
参考までに、キャンティクラシコ地区のヴィンテージチャートと、わかる範囲でWA(ワインアドヴォケイト)の得点も載せておきます。
良い年ほど成分が充実し、飲み頃になるのは遅いが長期熟成に向く。
難しい年ほど成分はやや希薄になり、早く飲み頃に達するが長期熟成には向かない傾向があります。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1990年 4
1991年 3
1992年 2
1993年 4
1994年 3WA94
1995年 3
1996年 3
1997年 5
1998年 3
1999年 4
2000年 3
2001年 4
2002年 2
2003年 4
2004年 4
2005年 3
2006年 5
2007年 4
2008年 4WA95
2009年 4WA95
2010年 4
2011年 4
2012年 4
2013年 5
2014年 3WA92
2015年 5
2016年 5WA98+
2017年 3
2018年 3
WA=ワインアドヴォケイト
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
香りが取りやすく、甘味を感じやすい分、酸は穏やかに感じられるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
イベリコ豚のハーブグリル
うなぎのかば焼き
力強く複雑な味わいを持ったワインです。
合わせる料理も深いコクを持ったものが適切で、ワインと料理が互いの味わい深さをさらに引き立て合います。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
5年熟成の2015は中々良い香りです。味わいは時間が経つほどに柔らかさが出てきましたが、開けたてはまだまだ硬く若いと感じました。
【良い口コミ】
キャンティ地区のワインっぽさはあんまりなくて、バローロとサンテミリオンを足して割ったような感じ。6年熟成2014はとても美味しいです♪
16年の熟成を経て04はまさに飲み頃。香り高く角の取れたしなやかな質感で、味わいの均衡が保たれている。完熟プラムの果汁が連想され、サンジョベーゼの良い部分が凝縮されている。
飲み頃を見極めるのが難しいペルカルロですが、9年熟成の2010は開けたてから状態良く、30分も経過すれば綺麗に開きました。樽もいい感じでワインに溶け込んだ感じで、伸びやかな酸を伴った長い余韻が続きます。
ワインバーでいただいた7年熟成の2012。若いワインだがグラスで提供されるとあって、既に開封済みだった事がよかったのだろう。香りは開いていて、プラム系の甘味を連想させる果実香に樽のバニラ感が加わる。凝縮感のある果実味が口に広がり、穏やかな酸が味わいを締める味わいは、濃いというよりは深いという印象。香りから余韻に至るまでの構成が非常に心地よいワインでした。
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると、
感動的!! 17%
美味しい 63%
普通 20%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
かなりポテンシャルが高く、10年以上の熟成を経て本領を発揮する優れたサンジョベーゼという印象でした。
若いワインの場合、ガチッと骨太な味わいが好きな方には向きそうですが、まだまだ硬く閉じ気味という意見も多く、時間経過や数日置くことで開き、良くなる傾向が読み取れました。
10年以上の熟成物に対する評価はかなり高いもので、成分が溶け合い滑らかさが増し、円熟したエレガントさで多くの方を魅了していました。(ただし古酒ほど高額です。)
1万前後のトスカーナのワインの中でも目を引く満足度の高さで、じっくりと時間をかけて楽しむ場合や、10年以上寝かせてから楽しむワインの候補として、選択肢に入れるべき優れた赤ワインと感じる結果となりました。
まとめ
それでは最後に情報整理です。
サンジュスト ア レンテンナーノ ペルカルロは
【価格】
9,000~2万
※1万前後が多く古酒ほど高額な傾向
【味】
凝縮された深い果実味、強靭なタンニン、凛としたミネラル感、引き締める酸といった充実感に溢れた味わいで、スパイスや樽などの風味も加わった複雑な味わいからは、風格やスケールが感じられる。
また、そのような充実した成分がある事で長期熟成に耐えるポテンシャルも十分で、熟成するほど成分は溶け合いしなやかさが増し、円熟した魅力を発揮する。
【飲み頃】
ブドウ収穫年から6~35年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
キャンティクラシコ地区のヴィンテージチャートと、わかる範囲でのWA(ワインアドヴォケイト)の得点は以下の通り。
良い年ほど成分が充実し、飲み頃になるのは遅いが長期熟成に向く。
難しい年ほど成分はやや希薄になり、早く飲み頃に達するが長期熟成には向かない傾向があります。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1990年 4
1991年 3
1992年 2
1993年 4
1994年 3WA94
1995年 3
1996年 3
1997年 5
1998年 3
1999年 4
2000年 3
2001年 4
2002年 2
2003年 4
2004年 4
2005年 3
2006年 5
2007年 4
2008年 4WA95
2009年 4WA95
2010年 4
2011年 4
2012年 4
2013年 5
2014年 3WA92
2015年 5
2016年 5WA98+
2017年 3
2018年 3
WA=ワインアドヴォケイト
【口コミ】
1万前後のトスカーナのワインの中でも目を引く満足度の高さ。
若いワインの場合、ガチッと骨太な味わいが好きな方には向きそうだが、まだまだ硬く閉じ気味という意見も多く、時間経過や数日置くことで開き、良くなる傾向。
10年以上の熟成物に対する評価はかなり高いもので、成分が溶け合い滑らかさが増し、円熟したエレガントさで多くの方を魅了している。
以上です。
調べるほどに私自身が飲みたくなる銘柄でした。(苦笑)
あなたはどのように感じましたでしょうか。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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