「シャンパーニュにおける頂点とは?」
この質問に、ドンペリにクリュッグ、あるいはジャック・セロスを挙げる方もおられるでしょうが、今回紹介するサロンを挙げる方も少なくないでしょう。
そんなサロンの価格、味わいとその理由、当たり年と飲み頃、皆様の口コミなどについて詳しく解説していきます。
《ワイン名》 サロン
《価格》
【8万~12万円】
《ブドウ品種》シャルドネ
《ボディ》 ミディアムボディ~フルボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>シャンパーニュ地方
《生産者》 サロン(ドゥラモット)
サロンの歴史は1900年初頭、毛皮商で成功していたウジェーヌ・エメ・サロン氏が、仲間たちと楽しむために自らの手でシャンパーニュを造った事に始まる。
元々シャンパーニュ好きだった同氏は市販品に満足できず、最も優れたシャルドネが育つことで知られるコート・デ・ブランの中のメニル・シュール・オジェにある「サロンの庭」と呼ばれる畑を購入し、シャンパーニュを製造。その品質の高さで注目を集め知名度も上昇した。
ウジェーヌ・エメ・サロン氏が1943年に亡くなってからは甥がメゾンを継承。1988年にはローラン・ペリエの傘下に入る。そして同時期にローラン・ペリエに売却され、同じ村にあった歴史ある生産者のドゥラモットは姉妹メゾンという位置付けになり、ディディエ・デュポン氏が社長として2つのメゾンを指揮しており、醸造設備もシェアしている。
《味わいの特徴》
気品と優雅さに満ちた
凄みのある上品さは
熟成で円熟し魅惑的品質に
このワインの特徴は、若い段階では鋭くキレる酸や背筋の通ったような凛としたミネラル感を中心に、充実した果実味や旨味などの味わい深さも加わったバランスの良さにあり、その洗練され充実した酸やミネラルは品格を感じさせるほどで、時に近寄り難い硬い印象を与える場合もあります。
熟成するほど酸やミネラルはワインに溶け込み、気品に満ちた風格を残しつつも円熟した果実感やハチミツの甘やかさ、トーストやナッツなどの落ち着いた風味も広がるようになり、類い稀な妖艶さが現れてきます。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■当たり年しか生産しない■
充実した成分を持ったブドウが収穫された年しか生産されず、洗練された気品に満ちた品質は長期熟成に耐える能力を十分に持ち合わせています。
■ブラン・ド・ブラン■
優れたシャルドネを生む産地として知られるコート・デ・ブラン地区の中でも、シャンパーニュにおける最高ランクのグラン・クリュ(特級畑)があるメニル・シュール・オジェの優れたシャルドネだけで造られます。
※ブラン・ド・ブランのブランは白を意味し、「白の白」つまり白ブドウだけで造られるスパークリングワインを指します。
シャルドネは洗練された酸や凛とした鉱物的なミネラル感を多く持ち、逆に果実感は主張しすぎないため、上品で気品に満ちた品質を生む傾向があります。
特に上質なシャルドネを使用したサロンは、際立つ酸やミネラルを持った背筋の通った品格ある味わいですが、長期熟成を経る事でそれらの成分が溶け合い、果実感や甘やかな蜜に奥深い旨味などが広がる魅惑的品質に成長していきます。
■ノン・マロラクティック■
マロラクティック発酵とは、アルコール発酵の次に行われる発酵で、味わいにまろやかさをもたらしますが、酸も減少します。
長期熟成に耐えるには豊富な酸は必須の要素であり、クリュッグやランソンにゴッセもそうですが、あえてマロラクティック発酵は行わない事で、高い酸度を保ち長期熟成に耐える品質を生んでいます。
■長期瓶内熟成■
ノンヴィンテージのシャンパーニュの瓶内熟成の規定は最低15ヶ月、ヴィンテージ・シャンパーニュ(ミレジメ)で36ヶ月ですが、サロンは約10年の熟成期間を設けており、旨味や奥深さを生む澱との接触期間を長くしています。
【外観】
輝くレモンゴールド。
熟成させるほど深いゴールドそして琥珀色へと変化していきます。
微細で豊かな泡立ち。
【香り】
柑橘類やラフランスに白い花といったフレッシュで華やかな香りに、蜂蜜やナッツ類にトーストの風味も広がりを見せます。
熟成するほど円熟した果実や黄色い花に蜜のニュアンスは強まり、トーストにナッツの風味も加わった複雑で妖艶な香りに包まれます。
【味わい】
キメ細かな泡立ちはしなやかな口当たりで、厚みのある果実味を洗練された酸が引き締めます。
鉱物的なミネラル感は豊富で、凛とした気品ある味わいを表現しつつ、奥深い旨味や複雑な風味を伴った余韻へと導かれます。
熟成するほど豊富な酸やミネラルはワインに溶け込み、円熟した上品な甘やかさを持った果実味や、奥深いコクをにナッツやトーストの風味を伴った魅惑的味わいになり、至福の余韻に包み込まれます。
《飲む時の適正温度》
【6℃~14℃】
よく冷やせば酸味や凛としたミネラル感が際立ち、上品さや気品に満ちたエレガンスが感じられます。
温度を上げるほど充実した果実感やトーストに蜜など複雑な風味が広がり、芳醇で優雅な味わいを楽しめます。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から約10~50年
10~20年程度の若い段階では、美しい酸や気品を感じる凛としたミネラルが際立った、爽やかでスケールを感じさせる味わい傾向。
熟成するほどにそれらの成分は溶け合い、円熟した果実感や旨味に複雑な風味が現れた妖艶さが増してきます。
【当たり年】
基本的にブドウの質が高かった年しか生産されません。
近年生産されて、購入可能と思われるヴィンテージは、
1985.1988.1990.1995.1996.1997.1999.2002.2004.2006.2007. 2008
でした。
尚、一般的なシャンパーニュのヴィンテージチャートは以下のようになっています。
※やはり点数の高い年ほど成分が充実し、評価も高い傾向です。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1985年 4ココ
1986年 3
1987年 4
1988年 4ココ
1989年 4
1990年 5ココ
1991年 3
1992年 2
1993年 2
1994年 2
1995年 4ココ
1996年 5ココ
1997年 3ココ
1998年 4
1999年 3ココ
2000年 4
2001年 2
2002年 4ココ
2003年 2
2004年 3ココ
2005年 3
2006年 3ココ
2007年 2ココ
2008年 5ココ
2009年 3
2010年 2
2011年 2
2012年 5
2013年 4
2014年 3
2015年 4
2016年 4
2017年 2
《適正グラス》
【ふくらみのあるフルート型グラス】
美しいグラスのフォルムに加え優美な泡立ちを見れます。
また空気に触れる面積も小さいため、温度も上がりにくいと同時に炭酸も抜けにくい形状に設計されています。
そして類い稀な芳香性を楽しむには、細身のフルートグラスより膨らみのあるフルートグラスがより最適ですし、あえてブルゴーニュグラスを選んでも優雅な風味は高まるでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
天然真鯛のカルパッチョ
地鶏のグリルをレモンと塩で
など、洗練された充実感やエレガンスを持ったサロンには、特に上質で適度な強さの味わいを持った料理が合いますが、爽快な発泡性と美しい酸は口の中をスッキリさせる効果もあるため、強い味わいの料理にも合わせられる万能性があります。
また、皮目をしっかり焼いた地鶏や天ぷらなどのように【パリッ】【サクッ】とした食感の料理には【シュワツ】としたシャンパーニュは相性が良いですね。
そして、このクラスのシャンパーニュですと、しっかり向かって単体で楽しむというアプローチも素晴らしいですね。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「私の味覚音痴のせい?12年熟成の07は適度なトースト香があり、ボリューム感のある味わいを美しい酸が引き締めて美味しい・・・って、それにしてもコスパ悪すぎでしょ。」
「21年熟成の99だ。確かにいいシャンパンなのはわかるけど、近年の高騰ぶりは疑問だね。何万も払う気にはなれないよ。」
「12年熟成の07は洗練されており雑味がありません。美しい酸が印象的でブリオッシュのような風味も心地よい。ただ旨味と言うか奥深さはそこまで感じられなく、10万も出すのであればもっと美味しいものが2万程度でも見つかる気がします。」
【良い口コミ】
「15年経過でこの初々しい美しさ!!そして複雑でパワー漲る味わいには情熱を感じる。2004は現段階でも素晴らしく、未来を想像するとさらに興奮してしまうよ。」
「サロンは若いうちは鋼のような硬さで閉じていますが、長期熟成で硬さは解れ甘やかさや複雑な旨味が広がってくる。22年熟成の97はようやくそのような一面が現れれてきており、全く雑味の無い味わいで、エレガンスの極みを見せつけてくれるようでした。」
「20年熟成の99は、若々しさと熟成感が混在した格別の味わいだ。非の打ち所が無いよ。」
「13年熟成の06です。初めは閉じ気味でしたが、時間経過で醤油やキノコ類にコーヒーの香りも広がりだす。鋭くキレる酸はノンマロラクティックに由来しており、熟成感のある果実味と旨みも相まってバランスが素晴らしい。完成されたブラン・ド・ブランとはこのような品質を言うのでしょうね。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると、
感動的!! 27%
美味しい 63%
普通 10%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
品質が高い事は揺るぎないようですが、価格とのバランスを考えると否定的コメントをされる方も意外と多かった印象です。
20年以上の熟成物への満足感は非常に高い傾向もありましたが、若い段階ではまだまだ本領を発揮していない事がそのようなコスパの悪さを感じる要因になっているのではないかと思いました。
30年を超えるよな熟成物への評価が見当たらず残念でしたが、20年越えの物でもまだまだポテンシャルは十分な傾向も考慮すれば、ますます魅惑的品質に成長することは間違いなさそうです。
とは言え20年以下の熟成物への評価は、他のプレスティージュと比較した場合、やや劣る印象は否めませんでした。
まとめ
それでは最後に情報整理です。
サロンは
【価格】
およそ8万~12万円
【味】
気品と優雅さに満ちた凄みのある上品さは、熟成で円熟し魅惑的品質に。
【飲み頃と当たり年】
・飲み頃
ブドウ収穫年から約10~50年
・当たり年
基本的にブドウの質が高かった年しか生産されない。
近年生産されて、購入可能と思われるヴィンテージは、
1985.1988.1990.1995.1996.1997.1999.2002.2004.2006.2007. 2008
尚、一般的なシャンパーニュのヴィンテージチャートは以下の通り。
※やはり点数の高い年ほど成分が充実し、評価も高い傾向。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1985年 4ココ
1986年 3
1987年 4
1988年 4ココ
1989年 4
1990年 5ココ
1991年 3
1992年 2
1993年 2
1994年 2
1995年 4ココ
1996年 5ココ
1997年 3ココ
1998年 4
1999年 3ココ
2000年 4
2001年 2
2002年 4ココ
2003年 2
2004年 3ココ
2005年 3
2006年 3ココ
2007年 2ココ
2008年 5ココ
【口コミ】
品質が高い事は揺るぎないが、価格とのバランスを考えると否定的コメントをされる方も意外と多かった印象。
20年以上の熟成物への満足感は非常に高い傾向で、若い段階ではまだまだ本領を発揮していない事がそのようなコスパの悪さを感じる要因になっている可能性が高い。
いかがでしたでしょうか。
個人的にはこのクラスのシャンパーニュにしては感動が小さかった印象ですが、20年~30年以上の熟成物への期待も高まる一本でした。
特別な場面にドンペリでもクリュッグでもなくサロン、しかも20年以上の熟成物を選択できるなんて一目置かれそうですね。
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなることをお祈りしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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