私がコルトンを選ぶのであれば、第一希望にこのワインを挙げるという事で紹介したのがドメーヌ・トロ・ボー コルトン グラン・クリュ。
「ん~。もう少し手頃なのありませんか。」
こう聞かれたならば、その候補の一つにトロ・ボーの村名ワインを推薦するでしょう。
アーロス・コルトンのワインで多くの方に選ばれ、口コミ評価の高いワインはどれだろうという客観的視点から調べてみた結果、トロ・ボーのワインは一際目立ち、と言うよりはトロ・ボー以外の生産者のアーロス・コルトンは、そのマイナーイメージのあるAOCによるものか、ほとんど口コミもありませんでした。
という事で、唯一多くの方に選ばれそして口コミでも高い評価を受けていたのがトロ・ボー。
1880年に始まる家族経営のドメーヌで、本拠地はショレイ・レ・ボーヌです。
ドメーヌ名の由来は、創設者のアレクサンドル・トロ氏と妻の苗字「ボー」を合わせて「トロ・ボー」です。
現在は5代目のナタリー女史(とても素敵な笑顔をお持ちの女性です)がドメーヌを切り盛りしており、非常にコスパに優れるワインを生むとして、多くのブルゴーニュラバー達から愛されています。
生産量の少なさもあり選択肢の幅が狭い事がありますが、必ず試しておきたい生産者ではないかと感じています。
《ワイン名》 ドメーヌ・トロ・ボー アロース・コルトン
《価格》
【7000円前後】
《ブドウ品種》ピノノワール
《ボディ》 ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>アーロス・コルトン
《生産者》 ドメーヌ・トロ・ボー
《特徴》
豊潤でしなやか
気品あるエレガンス
このワインの特徴は、豊潤な果実味を持ちながら存在感はあるもののしなやかなタンニンは心地よく、美しい酸味も持ち合わせた味わいは、上質ピノノワールらしい気品とエレガンスを感じられる品質にあり、若くしてもバランスの良い味わいを楽しむことができますし、熟成させても妖艶な風味を楽しめるところです。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■ドメーヌの哲学■
「私達のワイン造りは心からその土地を愛し、ブドウの魅力を的確に伝えていくこと。仕事の8割は畑で最高のブドウを育てることに尽きます」
ナタリー女史がこう語るように、この事を基本理念においてワイン造りが行われています。
■畑の低密度化■
高密度に植えられていたブドウの樹を、1/2以下の密度に下げたことで果実に成分が集まり、土地の成分を存分に吸い上げた上質なブドウが育ちます。
■減農薬農法■
農薬や化学肥料を極力使用しない減農薬農法(リュット・レゾネ)の実践により、土地の微生物の働きなども加わった健全で成分豊かな土壌が育ち、その成分を吸収土地の特性を反映したブドウが育ちます。
■樽香は控えめ■
樽のニュアンスの反映しやすい新樽の使用比率を20~30%程度に抑えることで、ブドウの繊細な風味も感じられるワインを生んでいます。
その他にも、馬を使った耕作や丁寧な手摘み収穫などが行われていますが、その根底には土地を愛し、ブドウの魅力を伝えるという基本理念に基づいています。
【外観】
透明感のある紫がかった深いルビーレッド。
熟成が進むほどレンガ色に近づいていきます。
【香り】
ラズベリーやブラックチェリーなどの豊かな果実香に、バラの花の華やかさに樽のほのかなニュアンスが感じられます。
熟成が進むほど落ち着きある熟した果実や、ドライフルーツにドライフラワーのような円熟味が現れ、なめし革や甘草に紅茶などの熟成香も加わり魅惑的な広がりを見せます。
【味わい】
若いうちは豊かな果実味が広がり、透明感のある味わいは繊細さも持ち合わせており、バランス感覚に優れたシルキーなタンニンと美しい酸味は心地よく、エレガントな余韻が続きます。
熟成が進むほどタンニンや酸はさらにワインに溶け込むことで穏やかな印象になり、円熟を感じさせる甘やかな果実味と旨味、複雑な風味を伴った味わいは魅惑的であり、長い余韻へと導いてくれます。
《飲む時の適正温度》
【14℃~18℃】
その豊かで心地よい香りと味わいを感じるには、このくらいの温度帯が最も広がりある風味を楽しめるでしょう。
少し冷やし気味にすれば酸味が際立ち軽快さのある飲み口になりますし、温度を上げるほど酸は穏やかに感じられ、甘味や風味の広がりある味わいを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から3~20年
※一般的傾向や口コミから推測
※口コミでは、適切に保存されたビッグヴィンテージが30年経っても素晴らしかったという例もある
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ赤のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1990年 5
1991年 3
1992年 2
1993年 4
1994年 2
1995年 4
1996年 5
1997年 3
1998年 3
1999年 4
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 3
2004年 2
2005年 5
2006年 3
2007年 2
2008年 3
2009年 5
2010年 5
2011年 3
2012年 4
2013年 3
2014年 4
2015年 5
2016年 4
2017年 4
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
豊かな香りと、エレガントで優雅な味わいを持った良質なワインです。
香りが取りやすく、温度が少しずつ上がる事で甘味を感じやすいように設計された、ふくらみのあるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
鴨鍋
地鶏のグリルをベリーソースで
など、ほどよいコクのある味わいの料理に合わせる事で、複雑でエレガントな風味の広がる上質なマリアージュが楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
簡単に手に入るワインではありませんし、そもそもある程度ワインに詳しくないと、アーロス・コルトン?だと思います。
ですから、ブルゴーニュワインに造詣の深い方などにプレゼントにしたり、一緒にちょっと珍しいワインを楽しむといったアプローチで選ぶと力を発揮してくれるのではないかと考えます。
《こんな場合には不適切!?》
やや玄人向けというかマニアックというか、こちらから探さなければ出会いにくいワインです。
ワインをそんなに詳しくない方に、このワインをプレゼントしても「アーロス・コルトン?」かもしれませんので、そのような方には、ヴォーヌ・ロマネやジュヴレ・シャンベルタンの方が「わかるわかる。」となっていいかもしれません。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「2011は7年熟成ですが、そこそこ美味しく、まあ普通でしょうか。期待しすぎてしまったことが良くなかったのでしょう。」
「5年目の2012は余韻が短くていまいちだな。」
「ちょっと前に飲んだ05が素晴らしかったから、7年目の2011も買ってみたんだけどね。なんだか水っぽいというか薄いのでしょう。バランスにもやや欠ける印象で残念だ。香りはいいのにな~。」
【良い口コミ】
「抜栓と共に広がる豊かな果実香。目鼻立ちのハッキリとした味わいでありながら、上品さも兼ね備えており優雅な気分を満喫できました。3年目の2014という事で、若いですが美味しいですね。ただザラッとしたタンニンが気になったけど、調べてみたら長期熟成を想定したボトル形状にしてあるようです。なるほど、熟成後も楽しみな優れ者ですね。」
「以前コルトンを飲んで失敗した事があったから、イメージは良くなかったのだが、この生産者のコルトンはいいね。トロ・ボー4年目の2013は良質だ。」
「10年熟成の99、20年の99、ほぼ30年の90の素敵な飲み比べ。結論、1番90、2番09、3番99。90は思いのほかまだ若さを感じる心地よい果実香に革製品に紅茶などの熟成香、チェリーの果実味主体の味わいは複雑で上品な淡さがあり素晴らしい古酒。09はまだまだチャーミングさがありますが土っぽい素朴さも感じ、豊かな酸とほどよいタンニンのバランスもいい感じ。99はその間って感じですが良いのですが、両者に比べるとやや気難しさを感じるかな。総じてしまえば、とても素晴らしい体験だったと言えるでしょう。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 10%
美味しい 57%
普通 26%
良くない 7%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
若くしても熟成させても楽しめる傾向は、グランクリュのコルトンにも共通しおり、とても安心感のあるワインだと感じました。
ただし、ヴィンテージ(11・12)によっては薄く感じてしまった方もおられましたので、心得ておくべきかとも感じました。
そして、おおよそ30年経過の適切に保存されたであろうビッグヴィンテージのワインで、大変高評価をされている方々もおられましたので、特に良い年ではそれほどのポテンシャルを持っている事も確認できました。
以上です。
甘すぎず辛すぎず。
安すぎず高すぎず。
不味すぎず旨すぎない?
・・・なんか失礼ですね。
浅すぎず深すぎない。
が、いいでしょうか。
とても優良な村名ワインだと思います。
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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