「ブルゴーニュワインは高額で手が出せない。」
そう思っている方はいないでしょうか。
確かにロマネ・コンティをはじめとする、ブルゴーニュ北部に位置するコート・ドールのワインは、品質は秀逸で多くの方々が求めるため、価格も高騰しがちです。
しかしブルゴーニュには日常消費にも向き、かつブルゴーニュらしい上品さを兼ね備えたコスパワインを生む産地も存在します。
穏やかで手頃な価格帯のワインを生むヴィレ・クレッセは、高級ワインを生むブルゴーニュ北部ではなく、南部のマコネ地区の村名ワインです。
そんなヴィレ・クレッセにおいて、日本の一般消費者の方々に多く飲まれ、そして口コミ評価の高いワインはどれだろうと客観的視点から調べてみた結果、
■ドメーヌ・ド・ラ・ボングラン
■ドメーヌ・ド・ロアリー
■ドメーヌ・サント・バルブ
■コント・ラフォン
などがそのような条件を満たしていると感じました。
今回はその一つであるドメーヌ・ド・ロアリーのヴィレ・クレッセです。
このドメーヌの当主アンリ・ゴヤール氏は、前回紹介したのドメーヌ・ド・ラ・ボングランのジャン・テヴネ氏の親友。
リュウマチに侵され、後継者もいないアンリ氏はジャン氏に相談し、醸造を任せることとなったドメーヌです。
という経緯もあり、独特の製法により非常にリッチなワインを生むドメーヌ・ド・ラ・ボングランの特徴と共通点も多いワインは、多くの飲み手を喜ばせています。
そして価格の面では、ボングランに比べて3~4割程度値打ちなところも魅力の一つと言えるでしょう。
《ワイン名》 ドメーヌ・ド・ロアリー ヴィレ・クレッセ
《価格》
【3000円前後】
《ブドウ品種》シャルドネ
《ボディ》 ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>マコネ>ヴィレ・クレッセ
《生産者》 ドメーヌ・ド・ロアリー
《特徴》
豊潤でまろやか
親しみやすい
コスパブルゴーニュ
このワインの特徴は、穏やかな気候の産地らしさを感じさせる上品な蜜のニュアンスに、豊潤な果実味と適度な酸を持った味わいにあります。
親しみやすくもブルゴーニュらしい上品さがありつつ、価格が抑えられている点も特徴的で、品質も価格も親しみやすいコスパブルゴーニュと言えるでしょう。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■ビオロジック農法■
化学肥料や農薬を使用しないことで微生物の働きが活発になり、健全で成分豊かな土壌が育ち、その豊かなミネラルなどの成分を吸い上げ土壌の特徴を反映した、ピュアなワインを生むブドウが得られます。
■ヴィエイユ・ヴィーニュ■
平均樹齢およそ60年。
土地の成分を吸い上げる能力が高いなど、上質な果実を実らせる樹齢の高い古木(ヴィエイユ・ヴィーニュ)のブドウを使用しています。
■収量制限■
ヴィレ・クレッセでは1ha当り62hlまで収量が認められていますが、ロアリーはブドウの収穫量をあえて45hl程度に制限することで、残された果実に成分が集中し、凝縮感あるブドウが育ちます。
■低温長期発酵■
ドメーヌ・ド・ラ・ボングランのジャン・テヴネ氏の影響もあり、ワインに複雑性を与えるために長期間かけての発酵が行われ、その発酵温度も14~16℃と低めにし、なんと1年にも及ぶ発酵を実践しています。
※通常の白ワインは、15℃~20℃で1~2週間程度です。
【外観】
輝くイエローゴールド
【香り】
黄桃やアンズにラフランスなどの豊潤な果実の香りに上品な蜂蜜の甘やかさ、グレープフルーツや青リンゴの爽やかなニュアンスも心地よく広がります。
【味わい】
ボリューム感のある熟した果実の風味に、ほんのり甘い上品な蜜のニュアンスが広がり、適度な酸は心地よくバランスを整え、心地よい果実の風味を伴った余韻が続きます。
《飲む時の適正温度》
【8℃~14℃】
冷やし気味にすれば軽快さが増し、エレガントさのある飲み口になります。
温度を上げるほど穏やかな風味の広がりを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
飲み頃はブドウ収穫年から
【およそ3年~6年】
一般的傾向や飲んだ方の評価傾向から推測すると、これくらいではないかという個人的見解です。
参考のためにヴィンテージチャートも載せておきます。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
2014年 5
2015年 3
2016年 4
2017年 5
《適正グラス》
【ふくらみのあるシャルドネグラス】
少し温度を上げることで広がる風味を楽しめますから、香りが取りやすく温度も少しずつ上がるように設計された、ふくらみのあるグラスを選ぶことをおすすめします。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
チキンのグリル
カプレーゼ
など、ほどよくコクのある料理などと合わせることで、やさしい風味とコクの広がりあるマリアージュを楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
日常消費用のバランスの良い白ワインをお探しでしたら、ワンラック上の上品さも持ったこのワインを候補に入れても良いと思います。
甘すぎず辛すぎず酸も適度で、親しみやすい味わいは様々な場面や料理に、優しく寄り添う順応性があると感じています。
《こんな場合には不適切!?》
上品なバランス型白ワインですから、深いコクを持った素材や濃厚なソースなどと合わせると、ちょっとワインが物足りなく感じてしまう事もありそうです。
強い味わいの料理には、強い赤ワインなどがマッチするでしょう。
あと、不適切という観点とはちょっと違うかもしれませんが、長期熟成に耐えるワインではありませんから、購入したら早く飲んでしまった方が良いでしょう。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「透明に近い麦藁色。グレープフルーツや強めの甘味を持ったオレンジのニュアンス。3年熟成の2014はちょっと舌を縮めるような渋味が気になる。普通で。」
【良い口コミ】
「ワイン初心者が白を飲むなら、まずはマコネ地区から攻めろ的な事聞きまして。4年熟成の2013は素直に美味しいです。穏やかでフルーティで、酸のバランスもいいですね。」
「白桃や青リンゴに蜂蜜のニュアンス。絶妙な酸も心地よく、安旨ワインとしてはかなり良くできていると思います。」
「特筆すべき点は無いけど、安心して飲める心地よさがある。ありですね。」
「蜂蜜のような甘味があってトロンとした質感がいいですね~。なんだけども甘口じゃなくって辛口なところがまたいいですね~。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 3%
美味しい 44%
普通 53%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
ほんのり甘い豊潤な果実味と綺麗な酸を持った品質への好感は高いですが、品格を感じるような充実感はなく、そこそこのワインと評する方もチラホラでした。
品格あるワインへの口コミは、ワインの複雑性の力もあってか、非常にたくさんの言葉を駆使してコメントされる方が多いですが、このワインの場合は比較的短いコメントが多く、そこまでの奥深さは持たない事が伝わってきます。
とは言うものの、価格も考慮すれば非常に満足できると感じた方が最も多い印象で、「親しみやすい上品なコスパブルゴーニュ」という表現がハマるようなワインだと感じる結果となりました。
以上です。
このワインに限った事ではありませんが、マコネ地区のワインは価格も品質も「親しみやすい」という言葉がピッタリハマるような産地です。
口コミでもありましたが、ワイン初心者が最初に飲むべきワインはマコネだというのにも納得ができるもので、マコネのバランスの良い味わいを軸に、シャブリは酸が切れるとか、カリフォルニアはさらに果実感が強いとか、ソーヴィニョンブランは爽やかなど、判断がつきやすくなるのではないかと感じています。
そして、この地区でも多くの消費者を納得させているロアリーのワインは、やはり候補の一つに持っておいても良いのではないでしょうか。
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
コメント