珍しい品種を使った評判の良い自然派白ワイン。
ただでさえマニアック感漂うフリウリ州ですが、さらに同州にしかない古代品種を100%使用した白ワイン。
調べる限り口コミ量は少ないながら消費者の好感は高い印象で、その珍しさは知識豊富な方にこそ興味深くもあるのではないかと思えるものでした。
普通のワインでは面白くない!!
そんな方が集まるワイン会などにも活躍が見込める面白いワインだと感じています。
この記事を最後まで読み進めていただき、知識と共に深まるワインの味わいを楽しんでいただければ幸いです。
《ワイン名》エディ カンテ ヴィトフスカ
《価格》
【3500前後】
《ブドウ品種》ヴィトフスカ
《ボディ》 ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 イタリア>フリウリ ヴェネツィア ジューリア州
《生産者》 エディ カンテ
カンテはフリウリ州のカルソ地区にあるワイナリーで、「ヴィトヴスカの救世主」とも呼ばれるイタリア屈指の白ワイン生産者です。
1840年頃からワイン造りを行う家系で、2021年現在オーナーであるエディ カンテ氏はカルソのDOC認定の立役者であり、同地区のコンソルツィオ(協会)の初代会長でもあった人物。
エディ カンテ氏は少年時代から研究熱心で、13歳の時からブドウの交配の研究を始めるほどで、同州の偉大な白ワイン生産者であるグラヴネルとも知り合うようになり、知識を深めていきます。
そして、カルソ地区の古代品種で絶滅しかけていたヴィトフスカの高いポテンシャル気付きます。
栽培が難しくワイン造りには向かないとされてきた品種ですが、試行錯誤を繰り返すことで現在ではこの地区を代表するブドウ品種に成長。
カンテを追うようにヴォドピーヴェッツやジダリッヒなどがヴィトフスカを扱う生産者が増えていきました。
今回紹介している銘柄がそのヴィトフスカを100%使用して造られる白ワイン。
様々なワイン誌などでも高く評価されており、日本の一般消費者の満足度も高い銘柄です。
※エディカンテ氏はDOCの規定に捉われず自由なワイン造りをしたいため、生産するほとんどの銘柄はDOCの格下であるIGT、またはVdTとしてリリースしています。
また農薬や化学肥料は一切使用しませんが、ビオロジックやビオディナミ認証には興味が無く、それらの姿勢は本質のみを追求するカンテ氏の信念が垣間見えます。
《味わいの特徴》
軽快でミネラリー
時間経過で風味が増す
このワインの特徴は、フルーティーで軽快な味わいの中に硬質で凛としたミネラル感があること。
また、時間経過で温度も上昇するほど果実のボリューム感が増し、広がりある味わいが楽しめる点も特徴的です。
【外観】
輝きのある淡いレモンゴールド
【香り】
青リンゴや柑橘類の爽やかさにラフランスや白桃のフルーティーな果実香があり、石灰を思わせるミネラル香も感じられます。
また、時間経過と温度上昇でパイナップルやマンゴーを思わせる、南国果実のトロピカルなニュアンスも広がるようになります。
【味わい】
ほんのり甘味を伴ったフルーティーな果実味を適度な酸がまとめる軽快な飲み口で、鉱物的な凛としたミネラルのニュアンスが特徴的。
温度が上がるほどボリューム感と落ち着きある味わいになります。
それでは、そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■土壌の個性■
このワインが生まれるカルソ地区は地面のすぐ下に岩盤があり、土が少なく石灰質が豊富な痩せた土壌です。
このような土壌からは、鉱物的な凛としたニュアンスや塩気を伴ったミネラル感が現れるのが特徴的。
また、水はけが良い痩せた土壌では樹が成長しすぎず収穫量が自然に抑えられ、樹は種の保存のために果実に栄養を集中させます。
■品種の個性■
ヴィトフスカは同地区で生産されるシャルドネと比較すると、果実味は抑え気味で、凛としたミネラル感や清々しい酸を生み出す傾向があります。
■本質の追求■
カンテ氏は物事の本質のみを追求する人物。
栽培においては農薬や化学肥料は使用せず、土地の微生物の働きなどが加わった健全な土壌でブドウを育てます。
醸造においても酸化防止効果のあるSO2(二酸化硫黄)は瓶詰時に少量添加するのみ。
このことは自然の中で生まれたブドウのピュアな味わいを、そのまま表現しようとする姿勢が垣間見えます。
■醸造と熟成■
ブドウの果皮を果汁と共に漬け込み色素や成分を抽出する工程をマセラシオンと呼び、フリウリ州ではそうして造られるオレンジワインが人気。
しかしカンテ氏はマセラシオンは行いません。(試したが納得できず辞めたとの事。)
そのためブドウの果汁のみの通常の白ワインであり、ピュアでクリアーな味わいになります。
発酵には樽のニュアンスが反映しにくい古樽が使われ、熟成も古樽で1年。その後半年ステンレスタンクで熟成後、濾過せず瓶詰。
樽の風味が出すぎずブドウの繊細なニュアンスが感じられるワインを生んでいます。
《飲む時の適正温度》
【6℃~12℃】
よく冷やせば酸味が際立ち引き締まった印象。軽快な飲み口が楽しめます。
少し温度を上げれば穏やかな印象。フルーティで豊かな風味の広がりが楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃》
ブドウ収穫年から3~10年
※一般的傾向や口コミから推測
《適正グラス》
【小ぶりのグラス】
【中庸で膨らみのあるグラス】
温度が上がりにくい小ぶりのグラスで飲めば、軽快で上品な味わいが楽しめます。
香りが取りやすく温度も上がりやすい膨らみのあるグラスで飲めば、風味の広がりある味わいが楽しめます。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
真鯛のカルパッチョ
ボンゴレビアンコ
など、比較的繊細な味わいから程良いコクを持つ料理に合わせると良いでしょう。凛としたミネラル感が特徴的なワインで、同じくミネラル豊富な魚貝類とのもよく合います。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《飲んだ人の口コミ》
【ネガティブな口コミ】
このワインに対する具体的なネガティブコメントはありませんでした。
【良い口コミ】
時間経過で良くなるワイン!!4年熟成の2011は抜栓直後はサラッとした印象で平凡な印象でしたが、時間経過で温度も上昇してくると、パイナップルや白桃などのトロピカルな果実感が次々に現れて美味しくなってきました!♪
酸が控えめで優しい口当たりなんだけど、硬質なミネラル感が凛とした飲み口を表現し、余韻も長い。
3年熟成の2014。ヴィトフスカってこんなにポテンシャルあるんですね!♪熟成後も楽しみな深みのある味わいでした。
4年熟成の2014は柑橘系のスッキリした味わいでしたが、徐々に桃やパイナップルの要素が湧き出てきて、後半に広がるミネラル感も豊富。旨い!!
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると、
感動的!! 10%
美味しい 43%
普通 47%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
そもそも口コミ量の少ない銘柄でしたが、好感は高い印象。
硬質なミネラル感が広がるスッキリとした味わいで、時間経過と温度上昇で膨らみある味わいが現れ満足度も上がる傾向のようです。
5年以上の熟成物に対するコメントは無く残念でしたが、果実感が増し円熟した味わいになることが想像されます。
ボリューム感のあるカリフォルニアのようなリッチさを求める方には、少し物足りなく感じ不向きとも感じましたが、上品な白ワインの選択肢に持っておきたい銘柄。かなり珍しいヴィトフスカは、ブラインドでワインを楽しむ会などに登場させても面白いと感じる結果となりました。
まとめ
それでは最後に情報整理です。
エディ カンテ ヴィトフスカは
【価格】
3500前後
【味】
フルーティーで軽快な味わいの中に硬質で凛としたミネラル感がある。
また、時間経過で温度も上昇するほど果実のボリューム感が増し、広がりある味わいが現れる。
【飲み頃】
ブドウ収穫年から3~10年
※一般的傾向や口コミから推測
【口コミ】
口コミ量は少ないながら好感は高い印象。
硬質なミネラル感が広がるスッキリとした味わいで、時間経過と温度上昇で膨らみある味わいが現れ満足度も上がる傾向。
以上です。
今回は特に特徴的で評判も高いと感じたヴィトフスカを紹介しましたが、カンテはどの銘柄も満足度は高い印象で優良生産者だと感じています。
下記のリンク先では様々なラインナップが紹介されていますから、参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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