シャンパーニュをはじめとするスパークリングワインは、ノンヴィンテージの場合いつ出荷されたものなのか疑問に思った事はありませんか。
いくつかの収穫年のブドウがブレンドされてるわけですから、ヴィンテージ表記はできないのは理解できますが、製造年月日のような表記が裏面にでもされていれば、消費者にも親切ですし、お店で扱う場合も品質を見極める上でとても参考になる指標になると思います。
きっとそのような表記はこれから増えてくるのではないか、いや、そうあってほしいと思うのでした。
フィリポナのように。
さて、私は非常に多くの生産者が手掛けるシャンパーニュにおいて、日本の一般消費者の方々に多く選ばれ(口コミされ)、そして口コミ評価の高い銘柄はどれだろうという好奇心の元、信頼できる口コミが見られるVinicaを利用してリサーチを行いました。
その結果日本で購入可能な約100の生産者の中でも、特に多くの方を満足させていると感じたのは25の生産者達。
今回紹介するフィリポナ ロワイヤル リザーヴ ブリュットは、それほど多くの口コミ量ではありませんでしたが、その品質への評価には目が引かれ、ボリューム感のある品質は興味深いと感じたわけです。
スッキリ系のシャンパーニュも素敵ですが、ふくよかでボリューム感のあるシャンパーニュも選択肢の幅を広げてくれる事でしょう。
それでは始めましょう。
《ワイン名》 フィリポナ ロワイヤル リザーヴ
《価格》
【4500~7000円】
《ブドウ品種》
・ピノ・ノワール
・シャルドネ
・ムニエ
《ボディ》 ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>シャンパーニュ地方
《生産者》 フィリポナ
【ここで簡単にプロフィール】
1522年、アイ村に定住しシャンパーニュを造るようになったのが歴史の始まりで、1697年にはフィリポナ社を設立。
ブドウを仕入れてシャンパーニュを製造するNM(ネゴシアン・マニピュラン)。
シャンパーニュ屈指の畑と呼ばれる「クロ・デ・ゴワセ」を単独所有することでも知られる名門であり、現在は16代社長シャルル・フィリポナ氏の指揮のもと、さらなる進化を目指している。
主となるブドウの収穫年や、瓶内熟成を経てデゴルジュマン(澱引き)した日付をボトル裏面に表記しており、信頼が持てると同時に、品質を見極める点においても消費者に親切と言える。
《味わいの特徴》
ふくよかさを軸に
キレの良い上品さも持ち合わせた
バランス型
このワインの特徴は、ほんのり甘味を伴った厚みのある果実味や、蜂蜜にトーストの風味も加わったふくよかな品質にありますが、適度で美しい酸も持ち合わせる事で、上品さも兼ね備えたバランスの良さがあります。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■ピノ・ノワール主体■
このワインはピノ・ノワール65%という事で、味わいに膨らみのある果実味やコクをもたらすピノの特徴が反映された品質傾向です。
とは言え、シャルドネも30%使用されており、繊細さや上品さを表現するシャルドネの特徴も反映したバランスの良さも合わせ持っています。
■リザーヴワイン20~30%■
平均熟成年数は定かではありませんが、複数年のワインがブレンドされた取り置きのワイン(リザーヴワイン)を20~30%の比率でブレンドされます。
そうすることで味わいに熟成感や複雑味が適度に加わるというわけです。
■長期瓶内熟成■
ノンヴィンテージのシャンパーニュの瓶内熟成の規定は最低15ヶ月ですが、36ヶ月以上の長期熟成を実施しており、旨味や奥深さを生む澱との接触期間を長くしています。
※ただしどの生産者も規定よりも長く熟成期間を設けている場合がほとんどです。
【外観】
輝くレモンゴールド
細かで豊富な泡立ち
【香り】
グレープフルーツや青リンゴに白い花の爽やかで華やかなニュアンスに、アンズやパイナップルなどのフルーティさも感じられ、蜂蜜やトーストの甘く芳ばしいニュアンスも広がりを見せます。
熟成するほどフレッシュさよりも、フルーティさや甘く芳ばしいニュアンスが強く感じられます。
【味わい】
キメ細かな泡立ちはしなやかな口当たりで、ボリューム感のある果実味が少しの甘味や旨味を伴って広がりを見せ、美しく上品な酸味は味わいをまとめます。
果実感や蜜の甘味にトーストの風味を残した余韻は心地よく続きます。
熟成させるほど成分は溶け合いまろやかな印象になり、果実感や蜜のニュアンスが広がる円熟味が楽しめます。
《飲む時の適正温度》
【6℃~12℃】
酸味を際立たせ、キレのある爽快でエレガントな飲み口を楽しむ場合は低めの温度。
豊かな果実感や複雑な風味を広げ、ふくらみのある優雅な味わいを楽しむ場合は、少し温度を上げるべきでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年からおよそ10年以内
このシャンパーニュはノンヴィンテージであり、複数年のブドウがブレンドされるためヴィンテージ表記はされていませんが、
主となるブドウの収穫年が裏面に小さく書いてあります。
※輸入業者によっては書いてない場合もあるようですが!!
・VENDANGE(ヴァンダンジュ)2015
・DEGORGEMENT(デゴルジュマン)2020
というような表記で、
ヴァンダンジュ=ブドウの収穫
デゴルジュマン=澱引き
を意味し、澱引き後半年~1年後に出荷されます。
飲み頃のタイミングで出荷されますから、買った時は飲み頃と言えますが、早ければフレッシュな味わいが楽しめますし、ヴァンダンジュからおよそ10年程度までは熟成に耐える能力もあり、フレッシュさは弱まりますが円熟した甘味を持った果実実など複雑な風味を楽しむこともできます。
※ただし適切な保存は大前提です。
【当たり年】
ありません
いくつかのヴィンテージのワインをブレンド(アッサンブラージュ)して造られるもので、年による品質の差は少ないという事です。
当たり年を意識するのは、単一年のブドウだけで造られたヴィンテージシャンパーニュ(ミレジメ)の場合のみですね。
《適正グラス》
【フルート型グラス】
美しい泡立ちを見れますし、空気に触れる部分も少ないため、温度も上がりにくいと同時に炭酸も抜けにくい形状に設計されています。
シャンパーニュの華やかさは、グラスの美しい外観によってもさらに引き立ちます。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
天ぷら各種をレモンと塩で
ポークソテー
など、ふくよかな果実味を持ちコクも豊かでバランスも良いフィリポナ ロワイヤル リザーヴ ブリュットは、適度な強さの味わいを持った料理との相性が良いですが、爽やかな発泡性と酸はスッキリさせる効果もあるため、強い味わいの料理にも無難に適応する万能性があります。
また、天ぷらなどのように【パリッ】【サクッ】とした食感の料理には【シュワツ】としたシャンパーニュは相性が良いですね。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「このクラスの価格帯の中では香りのボリューム感の大きさが際立っている。黄色い花にトーストに樽にグレープフルーツ、そして蜜のニュアンスが特に強い。それを支える酸があるからバランスは保たれており品質自体は悪くないが、このグラマラスなテイストは好みが分かれそうだね。私はもっとスレンダーでシャープなのが良い。」
【良い口コミ】
「柑橘類の爽やかさに白い花の華やかさ、蜜の甘さにトーストの芳ばしさが香る。口にするとラフランスのような芳醇な香りを伴った果実味を、美しい酸が引き締める。熟成で溶け合った成分のまろやかさが感じられる良質シャンパーニュだ。」
「クリーミーな泡立ちから膨らみのある果実味、爽やかな酸とコクもあり単純に美味しい。スタンダードキュベでこのレベルなら、上級キュベの期待も高まる。フィリポナは中々やりますね。」
「気に入ったぜ。熟した柑橘類にリンゴの果実香に、蜂蜜にトースト香が広がる。フルーティでミディアムボディの味わいを適度で美しい酸がバランスを取る。また飲みたいね~~(笑)」
「黄金の輝き。蜜の甘やかな芳香性で熟成を感じさせる厚みのある味わい。5000円前後の価格帯ならトップクラスに好みです。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると、
感動的!! 3%
美味しい 57%
普通 40%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
特徴が比較的ハッキリしており、スッキリサッパリではなく厚みがありグラマラスな品質傾向が読み取れ、そのような個性をやや苦手と評する方もおられましたが、品質自体を低く評価するものではありませんでした。
中価格帯のシャンパーニュという事で感動的評価を与える方もごく少数でしたが、適度な深さや複雑性も感じられる品質への満足度は高く、口コミ量の少なさも考慮すると、隠れた銘酒感も漂う上質シャンパーニュであると感じる結果となりました。
スッキリ系よりもボリューム系を求め、しかも定番ではおもしろくないと感じるような時に重宝しそうな銘柄です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
それでは最後に情報整理です。
フィリポナ ロワイヤル リザーヴ ブリュットは
【価格】
およそ4500~7000円
【味】
ほんのり甘味を伴った厚みのある果実味や、蜂蜜にトーストの風味も加わったふくよかな品質で、適度で美しい酸も持ち合わせる事で、上品さも兼ね備えたバランスの良さがある。
【飲み頃と当たり年】
飲み頃はブドウ収穫【VENDANGE(ヴァンダンジュ)】年からおよそ10年以内
当たり年の概念は無い。
【口コミ】
否定的評価や感動的評価はわずかで、スッキリ系と言うよりはグラマラス系寄りの味わいで好感を集める。
ピノ主体で少しグラマラスな傾向という事で、ブラン・ド・ブランやノン・ドサージュのシャンパーニュ達のようなスッキリエレガント系とは違いますね。
そのような違いを楽しめるという意味でも、個人的にも興味深いシャンパーニュでした。
何度も言ってしまってますが「みんな違って、みんな良い。」という事で、高級ワインもカジュアルワインも、辛口ワインも甘口ワインも、スッキリ系もグラマラス系も、それぞれのワインの良さを感じる飲み方をしたいものです。
きっとその方が楽しくて幸せですからね。
もし、ブショネや品質劣化に出会っても、
「これがブショネか、勉強になる・・・。いや、むしろ出会えて幸せ!!」
とはなかなか思えないかもしれませんが、そこまでいけば幸せ者な気もします。(笑)
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなることをお祈りしております。
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