イタリアのカベルネ フランの頂点だと感じた銘柄の紹介です。
カベルネ フランの世界最高峰といえばシュヴァル ブランで、知名度も品質も類い稀な銘柄として紹介しましたが、価格も相応で別格。
今回紹介するパレオ ロッソは、ボルゲリの小さな農家が長年の研究の結果で完成させたカベルネ フラン100%の銘柄。
サッシカイアやオルネライアを筆頭にいくつもの「スーパートスカーナ」を輩出するボルゲリ地区ですが、2万を超えるスーパートスカーナ達と比肩する口コミ高評価(vinica)を獲得していると感じたのがパレオ ロッソ。
調べる限りカベルネフラン100%でこれほど成功している生産者は他に無く、その他のラインアップでも非常に高い評価を受けている事もあり、知っておくべき特別な銘柄だと感じました。
この記事を最後まで読み進めていただき、知識と共に深まるワインの味わいを楽しんでいただければ幸いです。
《ワイン名》レ マッキオーレ パレオ ロッソ
《価格》
【1,5万前後】
《ブドウ品種》カベルネ フラン
《ボディ》 フルボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 イタリア>トスカーナ州>ボルゲリ
《生産者》 レ マッキオーレ
生粋のボルゲリ出身の農家が始めた唯一のワイナリー。
貴族が大半の土地を所有するボルゲリにおいて、ただひとり地元の農家が始めたワイナリーがレ マッキオーレです。
始まりは1983年。この地の可能性を見出したエウジェニオ カンポルミ氏は、ワイン造りの経験はありませんでしたが、手探りでワイン造りに挑戦。ひたむきな努力と情熱の下、4年後の1987年に初めて出荷にこぎつけます。
1990年代に入ると更なる研究成果もあり、品質は向上。
1995年には「パレオ ロッソ91」がイタリアで最大規模のワイン見本市ヴィーニタリーで、サッシカイアやオルネライアなどを差し置き2位を獲得し知名度を上げます。
しかし2002年にエウジェニオ氏は、わずか40歳という若さで他界してしまいます。
ワインの品質を上げ、高評価を獲得していたレ マッキオーレには多くの買収の話が押し寄せますが、設立当初から苦難を共にしてきた妻のチンチア女史は、若きスタッフと共に再スタートを切る事を決意。
亡き夫と共にある情熱の下、ブドウ栽培やワイン醸造に手間の掛かる緻密な手入れを行い、類い稀なる職人技のワインを生むようになります。
そして、メッソーリオ2004がワインスペクテイターで100点満点。
2009年にはイタリアソムリエ協会による最優秀ワイナリーの栄誉を獲得。
ワインアドヴォケイトなど数々のワイン誌で90点以上の高評価を何度も獲得。
など、イタリアを代表する小さな実力派ワイナリーとなりました。
今回紹介しているパレオ ロッソはレ マッキオーレを代表する銘柄の一つ。
1989年から造られる銘柄で、当初はカベルネ ソーヴィニヨン主体でしたが徐々にカベルネ フランの比率を上げ、2001ヴィンテージからはカベルネ フラン100%で造られるようになっています。
《味わいの特徴》
イタリアCFの最高峰
甘美な濃厚さがあり
複雑でバランスに優れる
このワインの特徴は、熟した果実の凝縮された味わいやシルクのようなタンニンに、樽に由来するコーヒーやチョコレートのようなニュアンスも加わった濃厚で甘美な味わいにあります。
また、ハーブ、スパイス、革製品などの複雑な風味も折り重なった味わいは奥深く、適度な酸味が味わいを綺麗にまとめるバランス感覚にも優れています。
【外観】
紫を帯びた深いルビーレッド
熟成するほどレンガ色に近づきます
【香り】
カシスやプルーンなど熟した果実香は、樽に由来するコーヒーやチョコレートのニュアンスも加わって甘美な印象。ほのかに加わるハーブや杉の青いニュアンスや、シナモンやクローヴなどのオリエンタルスパイスの香りに、革製品や腐葉土などの熟成香も複雑に折り重なり、それらが一体となった魅惑的な芳香が広がります。
【味わい】
香りから連想される通り、凝縮感された果実味は円熟した甘味や深いコクを伴っており、トロリとした質感と相まって甘美な飲み口。タンニンは豊富ながら絹のようなしなやかさで、高いアルコール分はボディのある味わいを表現。中程度の酸味が味わいをバランス良くまとめると、深いコクや樽やスパイスのなどの複雑な風味を残した余韻に包まれます。
それでは、そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■緻密で丁寧な管理■
「テロワール(ブドウを取り巻く自然環境)を尊重し、最高のブドウを栽培し醸造する。」
このような信条を持つ生産者で、ブドウの樹を自分の子のように大切に扱い、毎日畑に入りチェックし手入れを施します。
「ボルゲリで最も美しい畑」と他の生産者から言われるほどで、そのような姿勢が雑味無く深い味わいを持ったワインを生む要因の一つになっています。
■恵まれた環境■
ボルゲリの温暖な気候と豊富な日照はブドウの熟度を高めます。
未熟な場合、ハーブやピーマンのような青いニュアンスが強く出てしまうのがカベルネフランの特徴ですが、完熟のタイミングで収穫されることでそのようなニュアンスは穏やかで、円熟した甘美な果実味を持ったワインが誕生します。
また、夜の涼しさは適度な酸をブドウにもたらし、果実味を美しくまとめるバランスを生みます。
■ビオロジック農法■
農薬や化学肥料を使用しないビオロジック農法を実践。
土地の天然酵母など、様々な微生物などの働きが加わった土壌は健全で成分豊かな状態になり、充実したワインを生む要因の一つになっています。
■高密植栽培■
ブドウの樹の間隔を狭くする高密植栽培を実践。
そうすることで生存競争が高まり、地中深くまで根を伸ばすブドウは、ミネラル分豊富な地下水を吸い上げる事になり、充実した成分を蓄えた果実を実らせます。
※密植度は1haあたり10,000株で、これはブルゴーニュの特級クラスの密植率。一般的には5,000~7,000本程度が平均的とされています。
■小樽で熟成■
醸造を終えたワインはフレンチオークの小樽(バリック)で20ヶ月熟成されます。
大樽に比べ酸やタンニンがマイルドになり、樽の風味が反映されやすいのが小樽の特徴。
また、新樽を75%使用しており、古樽に比べて樽の風味が強く反映されます。
小樽の新樽を多く使用しますが、ブドウのピュアな風味を覆い隠さない程度のバランス感覚が保たれており、逆に言えば、それだけブドウに力がある事が窺い知れます。
《飲む時の適正温度》
【14℃~20℃】
少し低めの温度にすれば酸や凛としたミネラルが際立ち、エレガントな飲み口が楽しめます。
温度を上げるほど果実感や複雑な風味が広がり、大らかでボリューム感のある味わいが楽しめます。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から5~20年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
参考までに、ボルゲリのヴィンテージチャートと評価誌の得点も載せておきます。
良い年ほど成分が充実し、飲み頃になるのは遅いが長期熟成に向く。
難しい年ほど成分はやや希薄になり、早く飲み頃に達するが長期熟成には向かない傾向があります。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1996年 4
1997年 5
1998年 4
1999年 4
2000年 3WA91点
2001年 5この年からカベルネフラン100%
2002年 3
2003年 3
2004年 4
2005年 4WA93点
2006年 5WA93点
2007年 5WA95点
2008年 4JS97点
2009年 4WA93点
2010年 4
2011年 4
2012年 4
2013年 5WA97点JS97点
2014年 3
2015年 5JS97点
2016年 5WA97点JS96点
2017年 3
2018年 3
WA=ワインアドヴォケイト
JS=ジェームズサックリング
《適正グラス》
【チューリップ型ボルドーグラス】
香りが取りやすく温度が少しずつ上がるように設計されたボルドーグラスを選ぶことで、芳醇な香りと味わいをバランス良く感じ取れます。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
フォアグラのポワレ
和牛すき焼き
など、上質で深いコクのある料理との相性が良く、パワフルで複雑かつ優しいワインの味わいが料理と溶け合い、互いを引き立て合います。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
9年熟成の2011は、カベルネフラン特有の茎やハーブ系の青いニュアンスは少なく、樽のバニラ感も控えめな感じ。力強いのを想像してたけどタンニンも優しい。抜栓して4時間も経過すると香りは弱まりピークアウトしていき、良いワインなのに特徴を捉えきれず終わってしまった。
充実した成分があり上質なワインではあるけど、個人的には好みではないかな。。。6年熟成に2012は果実感やタンニンの凝縮感が強く濃い。旨味と苦味が広がる味わいはビターチョコを思わせます。ステーキなど、かなりガッツリ系じゃないと合わないでしょうね。
【良い口コミ】
芳しく堂々とした味わいは、優雅で風格ある女王の佇まい。普段ワインを飲むことがない両親だが、5年熟成の2012には満足してくれた。
6年熟成の2012。口いっぱいに広がるカシス系の果実味は心地よいコクを伴い、チョコレートのニュアンスもあって余韻も長~い♪
7年熟成の2014は中々ですよ。深く艶のあるブラックに近い色調で、煮詰めた黒系果実にクローヴのようなスパイス香に火を入れたピーマンなどの香りが広がる。生クリームを思わせる非常に滑らかな質感で、層をなした厚い果実味はピュアでボリューム感満載。強いアルコール感はボディを表現し、酸は適度で、樽の芳ばしい風味も心地よく溶け合っていますよ。
「ビロードのような」という表現があるけど、重厚だけど柔らかなタンニンはまさにそれ!!味わい深い9年熟成の2011でした♪
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると、
感動的!! 25%
美味しい 55%
普通 20%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
なかなか満足度の高い銘柄というのが第一印象。
具体的ネガティブコメントはほとんど見当たらず、若いヴィンテージでも熟成物でも安定して高評価を獲得しており、時間経過で変化し向上する味わいに高い評価を与える方が多い印象です。
ボルゲリでは(イタリア全体でも)珍しいカベルネフラン100%のワインですが、見事成功している印象で、2万を超えるスーパートスカーナ達と比肩する高評価を考えると、コスパ面においても優れている印象です。(近年価格は上昇しているようですが。。。)
まとめ
それでは最後に情報整理です。
レ マッキオーレ パレオ ロッソは
【価格】
1,5万前後
【味】
熟した果実の凝縮された味わいやシルクのようなタンニンに、樽に由来するコーヒーやチョコレートのようなニュアンスも加わった濃厚で甘美な味わい。また、ハーブ、スパイス、革製品などの複雑な風味も折り重なった味わいは奥深く、適度な酸味が味わいを綺麗にまとめるバランス感覚にも優れている。
【飲み頃】
ブドウ収穫年から5~20年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
ボルゲリのヴィンテージチャートと評価誌の得点は以下の通り。
良い年ほど成分が充実し、飲み頃になるのは遅いが長期熟成に向く。
難しい年ほど成分はやや希薄になり、早く飲み頃に達するが長期熟成には向かない傾向があります。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1996年 4
1997年 5
1998年 4
1999年 4
2000年 3WA91点
2001年 5この年からカベルネフラン100%
2002年 3
2003年 3
2004年 4
2005年 4WA93点
2006年 5WA93点
2007年 5WA95点
2008年 4JS97点
2009年 4WA93点
2010年 4
2011年 4
2012年 4
2013年 5WA97点JS97点
2014年 3
2015年 5JS97点
2016年 5WA97点JS96点
2017年 3
2018年 3
WA=ワインアドヴォケイト
JS=ジェームズサックリング
【口コミ】
具体的ネガティブコメントはほとんど見当たらず、若いヴィンテージでも熟成物でも安定して高評価を獲得しており、時間経過で変化し向上する味わいに高い評価を与える方が多い印象。
2万を超えるスーパートスカーナ達と比肩する高評価を考えると、コスパ面においても優れていると感じた。
以上です。
非常に温かみのあるエチケットが印象的ですが、ワインの落ち着きある優しい味わいを表現しているのかな?
そんな事も感じたパレオロッソでした。
トップクラスのカベルネフランを楽しみたい時。
珍しいスーパートスカーナを選ぶ時。
パレオロッソは有力な候補に入れるべきでしょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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