天・地・人
ブルゴーニュワインを嗜む方でしたらこれだけで生産者がわかる事でしょう。
海外で活躍する日本人ワイン生産者で、最も有名なのが仲田晃司氏ではないでしょうか。
品質も高く、世界的にも認められたワインをいくつも生み出しています。
それでは簡単に経歴をまとめます。
■仲田晃司氏は大学時代のアルバイト先のレストランでワインに魅了され、「いつかは自分でワインを造りたい」と夢を抱く。
■1995年。単身渡仏。フランス語を学びつつ各地で修業。
■1999年。委託生産・瓶買いを始める。
■2000年。ニュイ・サン・ジョルジュにワイナリー【ルー・デュモン】設立。
※「ルー」は、仲田夫妻が(カトリックの洗礼式における)”代親”になった、ルーちゃんという女の子にちなんでつけた名前。
「デュモン」は山を意味し、故郷である岡山県の備中松山城をイメージしており、心の中にはいつも故郷があるという想いが込められています。
■2003年。念願の自社の醸造所をジュヴレ・シャンベルタンに開設。
※この時お披露目パーティーに招かれたアンリ・ジャイエ氏は、仲田氏のワインを絶賛。発言力の影響を考え、滅多にワインを評価しないアンリ・ジャイエが認めたという事で、「神が認めたブルゴーニュ」となりました。
■2008年。ジュヴレ・シャンベルタンに自社畑・カーヴも取得。
■現在も様々な取り組みを実践し、世界的に認められた生産者として活動。
以上が簡単ではありますがザックリとした経歴です。
そして、もう一つ特徴的で有名なのがラベルに書かれた「天・地・人」ではないでしょうか。
これは、アンリ・ジャイエ氏に「自分自身のアイデンティティをワインに表現せよ」とアドバイスを受けた仲田氏が、「日本人であるということ」「自然と人間に対する真摯な尊敬の念」の象徴として、「天・地・人」という文字をあしらったという事で、まさに日本人らしさを表現した考えをエチケットに反映させたわけです。
今回紹介するワインは村名AOCシャンボール・ミュジニーです。
シャンボール・ミュジニーを造る生産者は非常に多く存在しますが、その中でも多くの人に飲まれ、そして口コミ評価の高いワインはどれだろうと調べてみた結果、ルー・デュモンのワインは特に評判が高く、しかも価格が比較的値打ちという事で、紹介すべきだと感じました。
《ワイン名》 ルー・デュモン シャンボール・ミュジニー
《価格》
【9000円前後】
《ブドウ品種》ピノノワール
《ボディ》 ライト~ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>シャンボール・ミュジニー
《生産者》 ルー・デュモン
《特徴》
繊細で瑞々しく可憐
ルー・デュモンのシャンボール・ミュジニーはとてもシャンボール・ミュジニーらしい繊細でエレガントな品質です。
果実味は瑞々しく主張しすぎる事なく出汁の効いたような心地よい旨味があり、タンニンは非常にやさしく、美しい酸味が味わいを引き締めるような質感で、繊細な女性を思わせるようなエレガントさがあります。
そのような品質にするための取り組みを挙げると、
・健全な土壌によるシャンボール・ミュジニーらしい繊細さを持ったブドウを得るため、農薬を使用しないビオロジック農法によるブドウを仕入れています。
・樽のニュアンスを反映しやすい新樽の使用比率を低くする事で、ブドウの繊細な風味を感じやすいワインを造っています。
その他にも様々な取り組みで、研究・実践を現在も繰り返す仲田氏は、いかにも日本人的で職人的であり、緻密な部分までこだわる執念を持っており、これからの成長にも期待できる生産者と呼べるでしょう。
【外観】
透明感のある美しいルビーレッド。
熟成が進むほどレンガ色に近づいていきます。
【香り】
イチゴやラズベリーなどのフレッシュな果実香に、カシスやブラックチェリーのフルーティな果実香も華やかに広がり、ほのかに樽のニュアンスも感じられます。
熟成するほど果実香は落ち着きある甘やかなニュアンスが現れ、土や革製品などの熟成香も加わり円熟味を感じさせます。
【味わい】
洗練された果実味は瑞々しくエレガントで心地よい旨味があり、ほのかなタンニンはやさしい質感で、美しい酸味が味わいをまとめ、心地よい風味を残した余韻が続きます。
熟成するほど成分は溶け合いなめらかさがさらに増し、複雑な風味と旨味を伴った上品で妖艶な品質に成長していくでしょう。
《飲む時の適正温度》
【14℃~18℃】
その華やかな香りと繊細な味わいを感じるには、このくらいの温度帯が最も広がりある風味を楽しめるでしょう。
少し冷え気味にすれば酸味が際立ち軽快さのある飲み口になりますし、温度を上げるほど甘味や風味の広がりある味わいを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から3年~15年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ赤のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
2004年 2
2005年 5
2006年 3
2007年 2
2008年 3
2009年 5
2010年 5
2011年 3
2012年 4
2013年 3
2014年 4
2015年 5
2016年 4
2017年 4
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
華やかな香りと、エレガントで繊細な味わいを持った良質なワインです。
香りが取りやすく、温度が少しずつ上がる事で甘味を感じやすいように設計された、ふくらみのあるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
バーニャカウダ
地鶏のグリル
など、ほどよくコクのある味わいの料理に合わせる事で、エレガントで繊細なワインの味わいが料理に寄り添い、また、料理がワインに寄り添い、上品で心地よい風味の広がる上質なマリアージュを楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「良質なワインですが、ウナギに合わせるにはちょっとエレガント過ぎたかな。」
【良い口コミ】
「初めは森の植物の香り、時間経過で開いてくるとオレンジやバニラの香りが広がります。4年目の2010は開けたても、しばらく置いてからも楽しめるワイン。鶏肉の赤ワイン煮込みともよく合い、幸せな時間を過ごせました。」
「9年熟成の2007はまさに飲み頃。このタイミングで飲めたことに喜びを感じる。」
「仲田氏曰く、疲れて癒しが必要な時に選びたいワイン。なるほどエレガントで飲み疲れしない繊細なワインです。」
「繊細で綺麗な飲み心地だ。軽すぎず重すぎず、カジュアルすぎず風格を感じるほどでもない。ほどよいコクと深さを持った心地よい良質なワイン。価格も考えれば上出来だ。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 10%
美味しい 70%
普通 20%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
とてもシャンボール・ミュジニーらしい繊細で飲み疲れしないワインである事が伝わってきました。
口コミの内容は、グランクリュやプルミエクリュに比べると比較的短くまとめられており、いろんな角度から味わいを表現したくなるほど奥深い味わいではないにせよ、ほどよいコクとバランスをもったエレガントなワインといった印象です。
やはり奥深いワインほど、口コミはいろんな言葉でその味わいを伝えようとしてくださるため、長くなる傾向があります。
逆にカジュアルでシンプルなワインほど、「安旨!!」など簡単なコメントが多いですね。(笑)
それからこのワインは、悪いニュアンスを感じる口コミがほとんど見つからなかったことも印象的でした。
日本人醸造家である中田氏に敬意を払っているのか、繊細なワインが好みの方が主に飲まれているのか。
定かではありませんが悪くは言われてません。
果実味のパワーが豊かな、ニューワールド系のワインが好みの方には向かない気もするのですが、そもそもそのような方は繊細でエレガントで有名なシャンボール・ミュジニーは選択しないのかもしれません。
以上です。
ここまで読み進めていただきありがとうございます。
ルー・デュモンは様々な産地のブドウを仕入れワインを生産しており、このシャンボール・ミュジニーも人気ワインの一つです。
が・・
最後に言うのも申し訳ないのですが、ほとんど売っていません!!(2019年現在)
もしも下のリンク先に無かったら、ジュヴレ・シャンベルタンもルー・デュモンの主力ワインとして人気で、比較的販売されていますから参考になれば嬉しく思います。
あなただけのの好みの一本、忘れられない一本が見つかる事をお祈りしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
コメント