今回のワインは王道ブルゴーニュ白ではなく、ちょっと変わった白ワインです。
私は多くの方に選ばれそして口コミ評価の高いワインはどれだろう、という客観的視点に基づいて様々なワインを紹介しているのですが、たまに自身の好みや非常に興味深いワインを選ぶ場合もあります。
今回はその非常に興味深いというアプローチになります。
さて、ニュイ・サン・ジョルジュは赤ワインの産地として有名ですが、極少量白ワインも生産されます。
その珍しさも加わって、実際飲まれている方は少なかったのですが、非常に経験豊かな飲み手の皆様が興味深いと感じ、そして楽しまれていると感じたので紹介しておこうと思いました。
「ニュイ・サン・ジョルジュの王様」
ロバート・パーカーはそう評しており、1930年代からドメーヌ元詰めを始めたパイオニアです。
所有する畑は全てニュイ・サン・ジョルジュにあり、このエリアに特化した正に王様と呼ぶに相応しい生産者と言えるでしょう。
2000年にロベール・シュヴィヨン氏が引退、現在は息子のドゥニ・シュヴィヨン氏とベルトラン・シュヴィヨン氏の兄弟により運営されています。
《ワイン名》 ロベール・シュヴィヨン ニュイ・サン・ジョルジュ ヴィエイユ・ヴィーニュ ブラン
《価格》
【7000~11000円】
《ブドウ品種》ピノ・グ―ジュ(ピノ・ブランと表記される場合が多いようです)
《ボディ》 ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ニュイ・サン・ジョルジュ
《生産者》 ドメーヌ ロベール・シュヴィヨン
《特徴》
ボリューム感があり
豊かな酸でドライな味わい
このワインの特徴は、ボリューム感のあるフルーティで樽の効いた香りがあり、味わいも香り同様ボリューム感のある果実味ですが、豊かな酸が味わいを引き締め、全体的にはドライな印象の味わいにあります。
また非常に珍しいのが、ピノ・グージュというピノ・ノワールの突然変異のブドウから造られるワインという事で、どこか赤ワインのニュアンスを持っている事も特徴的です。
いつもですと、ここでなぜそのような味わいになるのかの解説もするのですが、あまりの情報の少なさに解説不能になりました。
よって、「ワインの良し悪しは畑の段階で決まる」
その哲学の下で造られるワインは、ニュイ・サン・ジョルジュのテロワール(ブドウを取り巻く自然環境)がしっかりと表現されている、とだけお伝えしておきます。
【外観】
濃いめのイエローゴールド。
熟成が進むほど深いゴールドの色調に変化していきます。
【香り】
若いうはピーチにメロンにアプリコットなどの豊潤な香りに、石灰を思わせるミネラル香、樽のニュアンスを感じさせる香りも加わります。
熟成するほど果実香は円熟味を増しハチミツなど甘やかさが感じられ、樽の心地よい香りと共に落ち着きあるニュアンスが感じられます。
【味わい】
ボリューム感のある果実味を生き生きとした酸味が引き締め、凛としたミネラル感と共にしっかりと構造を形成し、比較的ドライな印象の味わいは、果実と樽の風味を伴った長い余韻があります。
熟成するほど成分は溶け合い円熟味が増し、凝縮感のある果実味とミネラル感が一体となり旨味が増し、心地よい酸がバランスを取り優雅な余韻へ導いてくれます。
そしてその果実味の中には、どこか赤ワインを連想させる、赤果実のニュアンスを持っているところも特徴的です。
《飲む時の適正温度》
【8℃~14℃】
冷やし気味にすれば酸味が際立ち軽快さが増します。
温度を上げるほど複雑な風味の広がりを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から3~10年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
ヴィンテージによって飲み頃にも差がありますから、参考にヴィンテージチャートも載せておきます。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
2005年 4
2006年 3
2007年 4
2008年 4
2009年 3
2010年 5
2011年 4
2012年 3
2013年 4
2014年 5
2015年 3
2016年 4
2017年 5
《適正グラス》
【ふくらみのあるシャルドネグラス】
少し温度を上げることで広がる風味を楽しめますから、香りが取りやすく温度も少しずつ上がるように設計された、ふくらみのあるグラスを選ぶことをおすすめします。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
ホタテバター
地鶏のグリル
など、比較的コクのある味付けをした料理などと合わせることで、豊かな風味とコクの広がりある上質なマリアージュを楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
とても珍しいワインですから、持ち寄りのワイン会などにこのようなニュイ・サン・ジョルジュを持って行っても盛り上がりそうです。
シャルドネでも、アリゴテでも、ソーヴィニョン・ブランでもないピノ・グ―ジュを選べる方はそうはいないでしょう。
いろんなワインを好む方へのプレゼントにしても、王道のニュイ・サン・ジョルジュのピノと思わせといて白!!しかも聞いた事無い品種!!
となれば、知的好奇心をものすごく擽る事になるのかもしれません。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「3年熟成の2013は樽が強めで酸も高め、そして果皮由来のタンニン?ん~普通かな。」
「14年経過の05はやや枯れ気味か。でも悪くない・・かな。もう少し果実味の感じられる数年前。って何年前?そんな話をしながら時が過ごせた意味では良かったか。」
【良い口コミ】
「綺麗なイエローゴールド。4年熟成の2013はメロンや桃のフルーティな果実香に樽の風味も加わります。甘くないイチゴジュースにミネラル感とほどよい酸味があり、樽の風味を感じる長い余韻。時間が経つほどに甘味は増し、プラムジュースのような独特のニュアンスに変化し、白ワインですが赤い果実の風味を感じる。これはピノ・ノワールの突然変異由来なのか。おもしろいですね。」
「3年熟成の2014は濃~い黄色。パンチの効いた果実味に苦味がアクセントで旨味もたっぷりです。ピノ・グ―ジュですか。おもしろいですね。」
「ちょっと変わっているわね。でもね、そんなとこがまたいいじゃない(笑)。溢れる果実感に豊かな酸で、アルコール感も強めでボディがしっかり。目をつぶって飲んだら赤ワインかと思うかも。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 0%
美味しい 55%
普通 45%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
なかなかの個性的な品質に、低評価まではいかないまでも好みはしない方もおられましたし、面白いという事で感動するまではいかないまでも、高評価をされる方もいらっしゃいました。
ニュイ・サン・ジョルジュを代表するロベール・シュビオンの作品という事で、良質なワインである事は皆様の口コミから伝わってきましたが、なかなかの変化球的要素満載のワインという事で、場面を選ぶ必要もあるかと感じました。
以上です。
いかがでしたでしょうか。
なかなか唯一無二なニュアンスがムンムンなワインでした。
正直私自身5年間ソムリエやってきましたが、初めてピノ・グ―ジュという言葉に出会いました。
しかし、もうこの瞬間から「ニュイサンのあれね。」
と、言えます。(笑)
もう少し詳しく言うと、ニュイ・サン・ジョルジュの老舗生産者のアンリ・グージュの畑で発見された、ピノ・ノワールの突然変異の白ブドウという事でグージュというわけですね。
これであなたも、「ニュイサンのアンリ・グ―ジュのあれね。」
と、言えるわけです。。。
冗談はさておき、上級者程このワインの変化球的要素は理解できるのではないかと思います。
選択肢の一つに持っておいても面白そうなワインです。
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
コメント