「完璧主義」「パーカー5ッ星生産者」
現当主アンリ・ボワイヨ氏は医学を志すほど博学な人物で、ワインの製造においても栽培から醸造まで緻密な工程を踏んでおり、その緻密さは「完璧主義」と評される由縁です。
1997年にロバート・パーカー氏から最高ランクである「5ツ星生産者」の評価を獲得し、現在もその地位を維持しています。
一旦そのような評論家の評価は置いておきまして、ピュリニー・モンラッシェのワインで多くの一般消費者の皆様に飲まれ(口コミされ)、かつ口コミ評価の高いワインはどれだろうという客観的視点から調べてみた結果、アンリ・ボワイヨのワインは目を引く好感を得ており、特にモノポール(単独所有畑)のクロ・ド・ラ・ムシェール はルフレーヴやソゼと比べても遜色ないほどの評価を得ており、紹介すべきワインだと思いました。
1885年創業のヴォルネイに本拠地を置くドメーヌ。
創業者は、現当主アンリ・ボワイヨ氏の祖父のアンリ・ボワイヨ氏(名前が一緒なんですね)、先代のジャン・ボワイヨ氏の時代には「ドメーヌ・ジャン・ボワイヨ」という名でしたが、2005年から再び「アンリ・ボワイヨ」を名乗るようになった経緯があります。
2006年からは息子のギヨーム氏も加わり、これからの進化にも期待できる5ツ星生産者です。
《ワイン名》 アンリ・ボワイヨ ピュリニー・モンラッシェ 1er クロ・ド・ラ・ムシェール
《価格》
【1,6~2,2万円】
《ブドウ品種》シャルドネ
《ボディ》 ミディアム~フルボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ピュリニー・モンラッシェ>1er クロ・ド・ラ・ムシェール
《生産者》 ドメーヌ アンリ ボワイヨ
《特徴》
透明感とスケール感を両立し
ピュリニーらしい気品に溢れる
このワインの特徴は、充実した成分に由来するスケール感のある品質でありながら、雑味のない透明感も感じられる品質にあり、ピュリニー・モンラッシェらしい凛としたミネラル感や美しい酸は、背筋の通ったような気品に溢れた味わいを表現、それを包み込むような果実実や優しい樽の風味がバランス良く融合しています。
また、熟成能力にも優れるこのワインは、年数を経るほどに成分が溶け合い円熟味が増し、優雅な品質に成長していきます。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■優れたモノポール■
アンリ・ボワイヨのモノポール(単独所有畑)でありフラッグシップワインを生む畑です。
シャルドネにとって最適なテロワール(ブドウを取り巻く自然環境)が整っており、その豊かな成分を吸い上げる能力の高いヴィエイユ・ヴィーニュ(古木)の樹齢は約80年。
豊富なミネラルと美しい酸に果実味などを持ち併せた、熟成にも耐えるスケール感を持ったブドウが得られます。
■リュット・レゾネ■
化学肥料や農薬を極力使用しない減農薬農法(リュット・レゾネ)を実践することで健全な土壌が育ち、その土地の成分を吸い上げた上質なブドウが実ります。
アンリ・ボワイヨでは年に8~10回程度畑を耕すことで雑草を排除しています。
■緻密な選果■
摘芽(てきが)や剪定により収量を抑えることで、残されたブドウに成分が集まり上質なブドウが実ります。
アンリ・ボワイヨは、そのブドウを厳しく選果することで有名。
他の生産者ならば使用するであろうブドウも、納得できないブドウは全て捨ててしまうほどで、ブドウ病害が広まった年(2001)は、ピンセットで選果を行ったエピソードは有名で、そのようなこだわりが完璧主義と呼ばれる所以となっているのでしょう。
そのような事もあって、アンリ・ボワイヨのワインは非常に透明感に溢れるエレガントな品質になるわけです。
■樽へのこだわり■
通常熟成に使用する樽というのは228Lですが、アンリ・ボワイヨではフランソワ・フレール社の350Lの樽を使用します。
そうすることでワインは樽との接触は少なくなり、ブドウの繊細な風味を感じさせつつ程良い樽香が反映され、熟成速度も緩やかなものとなり透明感ある品質になります。
【外観】
輝くレモンゴールド。
熟成が進むほど濃いゴールドの色調に変化していきます。
【香り】
グレープフルーツにリンゴや白い花など清潔感ある香りが広がり、樽にナッツ類に上品な蜜のニュアンスにミネラルを予感させる鉱物的なニュアンスも感じられます。
熟成が進むほど果実香は黄桃や熟したリンゴにシロップなどの落ち着きある甘やかさが現れ、ナッツ類にバターや焼いたパンのようなニュアンスも広がりを見せます。
【味わい】
柑橘類の酸を持った果実味は透明感を感じさせるピュアな味わいで、ほんのり蜜のニュアンスも感じられます。
ミネラル分も豊富で、凛と背筋の通ったような質感は少しの苦味がアクセントになり、ナッツ類や白い花に果実の風味を残したエレガントな余韻が続きます。
熟成が進むほど果実味は黄桃などの熟した果実のニュアンスや蜂蜜の甘やかさが強まり、酸やミネラル分などの成分もワインに溶け合う事でなめらかさが増し、落ち着きと深みのある旨味を持った味わい成長し、優雅で長い余韻へと導いてくれます。
《飲む時の適正温度》
【8℃~14℃】
冷やし気味にすればミネラルや酸味が際立ちエレガントさのある飲み口になります。
温度を上げるほどボリューム感ある優雅な風味の広がりを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から3~20年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ白のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 2
2004年 4
2005年 4
2006年 3
2007年 4
2008年 4
2009年 3
2010年 5
2011年 4
2012年 3
2013年 4
2014年 5
2015年 3
2016年 4
2017年 5
《適正グラス》
【ふくらみのあるシャルドネグラス】
少し温度を上げることで広がる風味を楽しめますから、香りが取りやすく温度も少しずつ上がるように設計された、ふくらみのあるグラスを選ぶことをおすすめします。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
地鶏のグリル
アワビバター
など、上質でコクのある味付けをした料理などと合わせることで、洗練された気品溢れる風味とコクの広がりある優美なマリアージュを楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
非常に完成度の高いピュリニー・モンラッシェです。
ボトルデザインも期待が高まるような風格がありますし、もちろん品質も秀逸。
贈り物やプレゼントにしても良いでしょうし、優れた白ワインを選ぶ時、アンリ・ボワイヨは候補に入れるべき優良生産者だと感じています。
《こんな場合には不適切!?》
とても完成度が高くバランスの良い優れたワインで、特に不適切な場面も思い浮かびませんでした。
ちょっと違ったアプローチですが、熟成させることでさらに味わいは深まりますから、熟成させる場合適切な保存は必須と言えるでしょう。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「7年熟成の2012はグレープフルーツに樽や蜜の風味がしっかりと広がり、後口に残る苦味がアクセントになりなかなか良いのだが、少し角があるように思われる。すぐに飲んでしまった事も要因にあるだろうから、ゆっくり飲んで開かせても良かったのだろうね。」
「2年熟成の2016は若き貴婦人の佇まい。凛としてちょっと緊張気味かな。これはこれで良いのだけど、もう少し熟成するとほぐれてくるんだろうね。」
【良い口コミ】
「6年熟成の2013は黄色い花や黄桃に樽の効いたのようなボリューミーな香りで、スレンダーな果実味を美しいミネラルや酸が引き締める。時間経過で果実味は熟したトロピカルフルーツのニュアンスが現れ厚みが出てきて、ほんのり苦味の効いた味わいがじんわりと広がるようだ。もう少し寝かせるとさらに良くなりそうだが、現時点でもなかなかのもんだね。」
「最初っから開いていて感動ものです💛。8年熟成の2012は柑橘類に蜂蜜やバターにトーストなどの要素が次々と押し寄せ、時間経過でメープルシロップのような甘やかさも現れてきました。後口に上品な甘味を伴った余韻があり、幸せな時間を過ごすことができました。」
「これでプルミエ・クリュかい?14年熟成の05はグラン・クリュクラスのスケールを感じるね。05由来のボリューミーな果実感があるが、凛としたミネラルや美しい酸がしっかりとバランスを保っており、まさに飲み頃の秀逸なワインだ。」
「早すぎないかなって心配だったのですが、予想外に開いてました。3年目の2016は程良い熟成を経たかのような香りの広がりを見せます。バランスも既に良くって満足の品質ですね。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 17%
美味しい 66%
普通 17%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
流石パーカー5つ星生産者であり、完璧主義と評されるアンリ・ボワイヨのモノポール(単独所有畑)といった第一印象で、経験豊富なブルゴーニュラバーの皆様から、感動あるいはそれに近い評価を得ている傾向でした。
ボリューム感がありながら美しい酸やミネラルを持つことでエレガントさも併せ持ち、全体のバランス感覚に優れた品質は、若い段階でも高評価を与える方が多かったですが、ある程度熟成させることで増す深い円熟味に、より高い評価を与える方が多い傾向がありました。
以上です。
アンリ・ボワイヨ氏はとっても知的で男前な顔付をしておられます。
初めてその顔を拝見した時(ネット上で)、この生産者は素晴らしいワインを造るに違いないと勝手ながらに思いました。(笑)
実際多くの方々が魅了されるワインを生んでいますから、まだ飲んだ事が無い方には必ず体感していただきたい生産者だと感じています。
美味しいものを口にすると、明日もまた頑張ろう!!という気持ちになれていいですね。
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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