「上品な甘味を持ったリッチなワインを探しています。」
このような問い合わせがあったら、私はこのワインを候補の一つとして提案するでしょう。
穏やかで手頃な価格帯のワインを生むヴィレ・クレッセは、高級ワインを生むブルゴーニュ北部ではなく、南部のマコネ地区の村名ワインです。
そんなヴィレ・クレッセにおいて、日本の一般消費者の方々に多く飲まれ、そして口コミ評価の高いワインはどれだろうと客観的視点から調べてみた結果、
■ドメーヌ・ド・ラ・ボングラン
■ドメーヌ・ド・ロアリー
■ドメーヌ・サント・バルブ
■コント・ラフォン
などが条件を満たしていると感じました。
今回はその一つであるドメーヌ・ド・ラ・ボングラン のヴィレ・クレッセ キュヴェ・E.J.・テヴネ。
他の生産者に比べると若干高額なワインではありますが、独特の製造過程を経たリッチな品質は、多くの方の高い評価を獲得しており、紹介すべきワインだと感じました。
ドメーヌ・ド・ラ・ボングランは、15世紀からテヴネ家が所有する歴史あるドメーヌで、ヴィレ村とクレッセ村の間のカンテーヌ村が所在地です。
現在はジャン・テヴネ氏と息子のゴーチエ氏によって伝統が引き継がれ、変人?とも呼ばれる独特のスタイルで造られるワインは、多くの消費者を魅了しています。
※因みにキュベE.J.のEは先代のエミール、Jは現当主のジャンに由来しています。
《ワイン名》 ドメーヌ・ド・ラ・ボングラン ヴィレ・クレッセ キュヴェ・E.J.・テヴネ
《価格》
【4600~6000円】
《ブドウ品種》シャルドネ
《ボディ》 ミディアム~フルボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>マコネ>ヴィレ・クレッセ
《生産者》 ドメーヌ・ド・ラ・ボングラン
《特徴》
円熟した奥深い味わいは
上品な甘味があり
気品と優雅さが漂う
このワインの特徴は、複雑で厚みのある奥深い味わいで、凝縮感のある果実味は上品な甘やかさを持っており、鉱物的な凛としたミネラルや、穏やかな酸味は味わいに気品や優雅さをもたらしているところです。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■ビオロジック農法■
化学肥料や農薬を使用しないことで微生物の働きが活発になり、健全で成分豊かな土壌が育ち、その豊かなミネラルなどの成分を吸い上げ土壌の特徴を反映した、ピュアなワインを生むブドウが得られます。
■完熟あるいは貴腐のブドウ■
ブドウはしっかりと完熟したものを丁寧に手摘で収穫します。
また、貴腐化したブドウをブレンドする場合もあるため、凝縮された果実味と、上品な甘味を持ったワインが生まれます。
※貴腐ブドウとは、熟したブドウにカビの一種である貴腐菌をあえて繁殖させることで、ブドウの水分を蒸発させ干しブドウのようになった極甘口のブドウの事です。
■低温長期発酵■
ジャン・テヴネ氏は試行錯誤の末、ワインに複雑性を与えるためには長期間かけての発酵が必要という考えに至り、その発酵温度も10~16℃と低めにし、なんと2年にも及ぶ発酵を実践しています。
※通常の白ワインは、15℃~20℃で1~2週間程度です。
■木樽を使用しない熟成■
オーク樽を使わずステンレスタンクでゆっくり熟成させることで、樽の風味を付けずブドウ本来のピュアな風味を表現。
また、アルコール発酵で活躍した酵母の死骸である《澱》はあえて残したままにする事で、澱から抽出されるコクが反映された深みのある味わいを持ったワインが生まれます。
以上のような独特の工程を踏むため、出荷されるのは他の生産者に比べても2年近く遅くなり、複雑で円熟したワインが消費者の元に届きます。
おもしろいのは、熟成過程で樽を使用していないにも関わらず、ナッツ系の風味などが感じられるところで、多くの方の口コミで樽が効いてるとコメントされているところです。(長期間のアルコール発酵の時の樽の風味が出ているか、もしかして、近年樽を使用するようになったのかもしれませんが・・。)
【外観】
深みのあるイエローゴールド
【香り】
黄桃やアンズにラフランスなどの熟した果実の香りに蜂蜜の甘やかさ、柑橘フルーツやハーブの爽やかなニュアンスに、ナッツ類の風味も複雑性を高めます。
【味わい】
ボリューム感のある熟した果実の風味に、ほんのり甘い上品な蜜のニュアンスが広がり、穏やかな酸は心地よくバランスを整えます。
そしてナッツの風味や品の良い旨味も伴ったリッチな余韻が長く続きます。
《飲む時の適正温度》
【8℃~14℃】
冷やし気味にすれば軽快さが増し、エレガントさのある飲み口になります。
温度を上げるほどボリューム感あるリッチな風味の広がりを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から5~15年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ白のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
2005年 4
2006年 3
2007年 4
2008年 4
2009年 3
2010年 5
2011年 4
2012年 3
2013年 4
2014年 5
2015年 3
2016年 4
2017年 5
《適正グラス》
【ふくらみのあるシャルドネグラス】
少し温度を上げることで広がる風味を楽しめますから、香りが取りやすく温度も少しずつ上がるように設計された、ふくらみのあるグラスを選ぶことをおすすめします。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
アワビバター
ラザニア
など、コクのある味付けをした料理などと合わせることで、ボリューム感ある風味とコクの広がりあるリッチなマリアージュを楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
ほんのり甘味のあるリッチなワインがお好きな方におすすめしたいワインで、単調な甘味ではなく、複雑で奥深く気品も感じられる甘やかさがあります。
コクのある料理に合わせればとても優雅な気分が味わえますし、ちょっとしたプレゼントや手土産にしても力を発揮してくれそうです。
《こんな場合には不適切!?》
甘味のあるワインが好みでない方にはおすすめしませんし、繊細な素材の味わいを感じたい時には、ワインが主張しすぎるでしょうから向かないでしょう。
とは言え甘味が苦手という方にも、このワインの上質で品のある甘味は安っぽい甘味ではありませんから、試していただく価値はあるのではないかと感じています。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
このワインの悪い点を表現する具体的コメントは見当たりませんでした。
【良い口コミ】
「ゴールドに輝く液体は、黄桃にラフランス、そしてナッツ系の香りを纏う。熟した果実や蜜の甘やかさと、柑橘系やハーブの爽やかさのバランスも独特で絶妙。どのヴィンテージを飲んでも相変わらず素晴らしい。」
「フランスワインはあまり興味が無くて、ヴィレクレッセ?でしたが、手頃な割にはボリューム感があって、柔らかく円やかな印象でなかなかいいです。これは7年熟成の2012でした。」
「13年熟成の05は円熟した甘やかさとミネラリーな旨味が期待以上の美味しさ。柑橘類の爽やかさもありますが、黄桃やハチミツにナッツ類のふくらみのある香りで、香り同様に味わいも穏やかな酸を凝縮された果実味が包み込むような優しさがあり、14%のアルコールは中々のボディもありますね。周りのみんなの反応も上々でまた購入しようと思う。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 3%
美味しい 53%
普通 44%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
【完熟ブドウ】と【熟成を経た円熟味】の2つの要素が交わった、ブルゴーニュワインらしからぬボリューム感溢れる味わいへの満足感は高い印象。
感動を覚えるほどではないようですが、ネガティブなコメントも見当たりませんでした。
とは言うものの、スッキリと上品な品質を求める場合には、重すぎたり甘いと感じる事もあるでしょうから、ワンランク上のリッチな気分を味わえるワインを求める方にこそ、おすすめしたいワインだと感じました。
以上です。
なかなか特徴的な生産者でした。
買ってすぐに円熟味を体感できるワインもあまりありませんから、このようなワインを知っておくと重宝しそうです。
若々しい10代や20代の人のフレッシュな魅力というよりは、社会経験も10年を超え、落ち着きと余裕が出てきた30代中盤の人の魅力といったところでしょうか。
適切な熟成を経たワインのように、魅力的な人間になっていかないといけないな~。
と、なぜか思ってしまう回となりました。(笑)
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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