「失敗が怖い? 大丈夫。なぜなら成功か学習しかないのだから。」
今回はそんなマインドの方だけが読んでいただければ良いでしょう。
私はモンタニーのワインの中で、日本の一般消費者の方々に多く飲まれ、そして口コミ評価の高いワインはどれだろうと客観的視点から調べてみました。
そんな中で、これは面白いワインだと感じたのがドメーヌ・ド・ラ・トゥール。
なぜなら、多くの方を魅了しつつ失望させてもいたからです(笑)。
当主であるダニエル・ジョブロ氏は、
「ワインは熟成させてから飲むもの」
という信念の元、セラーで熟成させた古酒を少しずつリリースして販売しているとの事で、現在は引退し、残っている在庫が尽きればこの世から消えるワインでもあるという事です。
長期熟成古酒が手頃で購入できるという魅力を持ちつつ、ボトルごとの個体差も大きいようで、口コミ評価も賛否両論ですが、そんなリスクごと楽しめるポジティブシンキングをお持ちの方にこそ選んでいただきたい一本です。
《ワイン名》 ドメーヌ・ド・ラ・トゥール モンタニー プルミエ・クリュ
《価格》
【7000円前後】
《ブドウ品種》シャルドネ
《ボディ》 ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>コート・シャロネーズ>モンタニー1er
《生産者》 ドメーヌ・ド・ラ・トゥール
《特徴》
円熟味溢れる
長期熟成コスパ古酒
このワインの特徴は、長期熟成を経たことでフレッシュな果実実は消え、円熟した熟した果実やドライフルーツのニュアンス、あるいはブランデーのような甘やかさを伴った古酒ならではの魅力に満ちていますが、ボトルによっては完全に果実感は消え失せ、シェリー酒のようなニュアンスや、枯れてしまって旨味や甘味の感じられない品質になってしまっている場合もあります。
また、このような熟成酒が比較的手頃な価格で購入できるという、コスパの良さも特徴の一つと言えるでしょう。
情報の非常に少ない生産者でしたが、わかる範囲でそのような品質になる理由を挙げておきます。
■当主の思想■
「ワインは熟成させてから飲むもの」
これが、当主ダニエル・ジョブロ氏の信念であり、あまり商売っ気の無い人柄による良心的な価格が魅力のワインです。
■リュット・レゾネ■
化学肥料や農薬を極力使用しない減農薬農法(リュット・レゾネ)を実践することで、微生物の働きなどにより健全で成分豊かな土壌が育ち、その土地の成分を吸い上げた上質なブドウが実ります。
充実した成分を持つワインは長期熟成にも耐える力があるというわけです。
■ほどよい樽■
樽のニュアンスが反映されやすい新樽の使用比率は10%程度。
樽の風味もほどよく感じられるワインを生んでいます。
【外観】
深いイエロー~琥珀色
【香り】
円熟した黄桃やパイナップルなどの果実に蜂蜜の甘いニュアンス、樽に由来するナッツや木の風味はブランデーを連想させる奥深さがあります。
【味わい】
熟成によって成分が溶け込みあい、しなやかな質感で、円熟を感じる落ち着いた甘味を持った果実味と穏やかな酸に心地よい旨味があり、複雑な風味を伴った余韻が長く続きます。
※健全な熟成を経た場合は以上のような傾向ですが、場合によっては果実感は抜け、甘味や旨味も感じられない老ねた(枯れた)印象になっている場合もあります。
《飲む時の適正温度》
【8℃~14℃】
冷やし気味にすればミネラルや酸味が際立ちエレガントさのある飲み口になります。
温度を上げるほどボリューム感ある風味の広がりを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
既に20年以上経過しており飲み頃ですが、ボトルごとの個体差もありますから、どれくらいまで飲み頃が続くかはあえて未知とさせていただきます。
【当たり年】
ブルゴーニュ白のヴィンテージチャートは以下の通り
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1986年 3
1987年 3
1988年 3
1989年 5
1990年 4
1991年 2
1992年 4
1993年 2
1994年 2
1995年 4
1996年 5
1997年 3
1998年 2
1999年 3
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 2
2004年 4
2005年 4
2006年 3
2007年 4
2008年 4
2009年 3
2010年 5
2011年 4
2012年 3
2013年 4
2014年 5
2015年 3
2016年 4
2017年 5
《適正グラス》
【ふくらみのあるシャルドネグラス】
少し温度を上げることで広がる風味を楽しめますから、香りが取りやすく温度も少しずつ上がるように設計された、ふくらみのあるグラスを選ぶことをおすすめします。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
鴨やイノシシを使ったジビエ料理
燻製料理
など、やや強めの味わいを持った料理や、野性味あふれる料理、香ばしさを持つ料理に合いそうです。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
好奇心旺盛で、いろんなワインにチャレンジしてみたい方。
しかも劣化したワインに出会っても、
「なるほどこれが劣化したワインの味わいか。勉強になるね。」
と、超前向き思考になれる方には特におすすめできます。(笑)
この価格帯で熟成古酒に出会う事は困難ですし、もしも劣化していた場合も仕方ないと思える価格ではないでしょうか。
ワクワクやスリルを楽しみたい時、ワイン好きの友達との集まりなどで、このようなリスク満載の古酒が登場しても盛り上がりそうですね。
《こんな場合には不適切!?》
確実性を求められる場面では、こんな不適切なワインも少ないでしょう(笑)。
レストランでこのワインをオンリストさせオーダーが入ったら・・・
わかりますね。
毎回スリリング体験をしたい方は別ですが、なかなか心が疲れそうです(苦笑)。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「30年熟成の89は果実のフレッシュさは消え失せ、老ねた果実香に、時を経たぺトロール(石油香)のような人工的な香り。酸は当然溶け込んでおり、熟成には耐えない印象。想定内ではあるが残念。」
「29年物の98はとても上品な香りでシェリー化もしておらず健全。初めて白の古酒を美味しいと感じた。しかしデキャンタしてしまったこともありますが、翌日はへたった印象になってしまったので、すぐに飲んでしまうべきワインだったと反省しました。」
「期待が高まる濃いイエロー。20年熟成の96は果実感ゼロで、お酢感満載。これは枯れております。熟成物の白は難しいですね。」
【良い口コミ】
「黄金から琥珀色へと変化していく過程。19年熟成99は状態もよろしいようで、シェリーっぽさもなく甘味のあるブランデーのニュアンスを伴った熟成で、ギリギリ飲み頃って感じがします。温度が上がるとちょっと雑味が出ますが許容範囲内で、深みのある複雑な熟成感を味わえる良いワインですね。」
「この価格のワインが30年経っても生きているだけでも凄い。透明感のある色合いからは想像しにくい枯葉や樽の香りが湧き上がり、それに折り重なるシロップの甘やかさが広がる、こりゃたまらん89でした。」
「23年経過した96には、とても良い経験をさせてもらった。色調は既にゴールドを越えオレンジとも琥珀色とも言える状態。干したアンズや樽に蜂蜜のニュアンスも感じられる芳香性。トロミのある液体は、全ての成分が溶け合い丸みのある味わいで、なんとも表現しにくい面白いワインです。」
「28年物の90は、抜栓直後から黄桃やパイナップルなどの完熟果実の甘やかさが広がり、モンラッシェを彷彿させる密度がありバランスが素晴らしい。絶好のタイミングで飲めたことに感謝ですね。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 3%
美味しい 23%
普通 60%
良くない 14%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
この価格帯で20年以上の熟成を経たワインは、やはり個体差が結構ある印象で、すっかり果実感が消え失せ、枯れてしまったワインに残念な思いをした方もみえれば、適切な熟成を経て果実感も残っており、心地よい熟成感溢れる味わいに高い満足感を与える方もいらっしゃいました。
よって、かなり個体差がある事が特徴的で、確実性を求める場合には間違いなくおすすめできませんし、闇鍋的なスリルを楽しめるような方には、このようなリスクも持ち合わせたワインは絶妙にマッチし、状態が良かった場合の喜びは倍増するようなワクワク感があると思いました。
以上です。
とてもリスキーでありながらワクワク感もあるワインでした。
いつも美味しいワインを選択するのも素敵ですが、たまにちょっとダメなワインを口にする事で、本当に良いワインが理解できる場合もあります。
良い事もあれば悪い事もあるのが人生であり、良い事ばっかりでは、そもそも良い事も普通の事となってしまいそうです。
つまり振れ幅が大きいほど幸福感を味わえるという事でしょうか。
何が言いたいかというと、
このワインは「振れ幅ハンパない」って話です。
おあとがよろしいようで・・
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
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