「ポマールで優れたワインを探していますが、どれを選べばいいですか?」
こう聞かれたならば(なかなかこんなピンポイントな問い合わせも少ないでしょうが⦅笑⦆)、必ず候補に入れるべきと考えるワインの紹介です。
ポマールにドメーヌを構え、所有する畑もほとんどがポマールにあり(コルトンとボーヌにも少しあります)、ブルゴーニュ・ルージュの畑も全てポマール内、そして5つのプルミエ・クリュも所有するまさにポマールに特化したドメーヌ。
ポマールのワインで多くの方に飲まれ(口コミされ)、そして口コミ評価の高いワインはどれだろうという客観的視点から調べてみた結果、そこまで多くの口コミが無いポマール全体の傾向の中において、プルミエ・クリュのグラン・セプノは多くの方に飲まれ(口コミされ)、骨格ある品質に高い評価を与える方が多く存在し、名実ともにポマールで最高峰のワインである事が伝わってきましたので、紹介させていただく事にしました。
19世紀後半から始まるドメーヌで、先代のミシェル・ゴヌ―が評価を高め、1984年にミシェル氏が亡くなってからは、息子のアレクサンドル氏がワイン造りを担当し、家族でドメーヌを切り盛りしています。
※ちなみにこのアレクサンドル氏はミスター・ビーンにそっくり(笑)
《ワイン名》 ドメーヌ ミッシェル・ゴヌー ポマール プルミエ・クリュ グラン・セプノ
《価格》
【12000~22000円】
《ブドウ品種》ピノノワール
《ボディ》 ミディアム~フルボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ポマール>プルミエ・クリュ グラン・セプノ
《生産者》 ドメーヌ ミッシェル・ゴヌー
《特徴》
充実感に溢れしなやか
熟成で真価を発揮
このワインの特徴は充実感溢れる成分豊かな品質にあり、熟成を経る事で成分は溶け合い、しなやかで複雑な風味の広がりある品質に成長していく点にありますが、近年(2002以降)はエレガントな造りへの転換も図っているようで、以前のような男性的で骨格ある造りも残しつつ、透明感のある女性的なエレガンスも持ち合わせた品質は、比較的若くしても楽しめる造りになっています。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■優れたプルミエ・クリュ■
ポマールで最も優れた畑と評される「レ・ゼプノ」の中の、さらに優れた区画でグラン・クリュに匹敵すると評されるグラン・セプノからは、非常に充実した成分を持ったブドウが収穫され、スケール感のあるワインが誕生します。
■ヴィエイユ・ヴィーニュ■
土地の成分を吸い上げる能力が高いなど、上質な果実を実らせる樹齢の高い古木(ヴィエイユ・ヴィーニュ)のブドウを使用しています。
■完全除梗■
ブドウの梗(果実の付いた枝のような部分)は一切使用しません。
そうする事で、より洗練度の高い透明感溢れる品質になります。
※ただしDRCなどの極一部のトップ生産者は、ワインの複雑性や熟成能力を高めるために、梗の部分を全て使用する全房発酵を行っています。
■控えめの樽■
樽香が反映しやす新樽の使用比率を20%程度の低くさにすることで、ブドウ本来の風味を感じやすくし、ほどよい樽のニュアンスも感じられるスタイルにしています。
【外観】
深みのあるルビーレッド。
熟成が進むほどレンガ色に近づいていきます。
【香り】
ラズベリーやブラックチェリーなどの果実の香りに、樽に由来する煙草のニュアンスにスパイスや革製品の香りなどが心地よく広がります。
熟成させれば果実香は円熟を感じさせる落ち着きある甘やかさが現れ、腐葉土にキノコに獣といった複雑な香りも広がりを見せます。
【味わい】
若いうちは充実感のある果実味が豊かに広がり、存在感のあるタンニンはしなやかに骨格を形成し、美しい酸味が味わいを引き締めた後、果実や樽の風味を伴った心地よい長い余韻があります。
熟成が進むほどタンニンや酸はワインに溶け込むことでしなやかな印象になり、円熟を感じさせる甘やかな果実味と旨味に、樽香や熟成香も加わった複雑な風味は充実感に満ち、心地よく長い余韻へと導いてくれます。
《飲む時の適正温度》
【14℃~18℃】
その充実感のある複雑な香りと味わいを感じるには、このくらいの温度帯が最も広がりある風味を楽しめるでしょう。
少し冷やし気味にすれば酸味が際立ちエレガントな飲み口になりますし、温度を上げるほど酸やタンニンは穏やかに感じられ、甘味や複雑な風味の広がりある優雅な味わいを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から5~40年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ赤のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1976年 4
1977年 0
1978年 5
1979年 3
1980年 2
1981年 2
1982年 2
1983年 3
1984年 1
1985年 5
1986年 4
1987年 4
1988年 5
1989年 4
1990年 5
1991年 3
1992年 2
1993年 4
1994年 2
1995年 4
1996年 5
1997年 3
1998年 3
1999年 4
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 3
2004年 2
2005年 5
2006年 3
2007年 2
2008年 3
2009年 5
2010年 5
2011年 3
2012年 4
2013年 3
2014年 4
2015年 5
2016年 4
2017年 4
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
芳醇な香りと、充実感溢れる優雅な味わいを持ったポマールを代表するワインです。
香りが取りやすく、温度が少しずつ上がる事で甘味を感じやすいように設計された、ふくらみのあるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
和牛タタキ
うなぎの蒲焼
など、上質で豊かなコクのある味わいの料理に合わせる事で、芳醇なワインの味わいが料理を引き立て、また、料理がワインを引き立て、複雑で豊かな風味の広がるマリアージュが楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
ポマールのトップクラスで、特別な日に楽しむワインや贈り物にしても力を発揮してくれる事でしょう。
ややマイナ―イメージのあるポマールのトップクラスという絶妙な選択は、ワインに造詣の深い方などには特に興味深く楽しんでいただけるのではないでしょうか。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「生産するワインのほとんどがポマールの畑によるもので、まさにポマールに特化した珍しいドメーヌ。さて、4年熟成の2011という事だがさすがにまだまだ早すぎるね。ポテンシャルは感じるから熟成後に出会いたいワインと言える。」
【良い口コミ】
「38年物の78だよ。透明感のあるレンガ色に近い色調が熟成をうかがわせる。ドライフルーツに腐葉土の香りは円熟を感じさせるもので、染み入るような飲み口は非常に滑らかで角がない。出汁の効いたようなエレガントな旨味と甘味が素晴らしく、余韻にも長く残っている。このような健全な熟成物に出会えただけでも感謝に値するだろう。」
「21年経過した97はドライフラワーのようなアロマに紅茶も広がり香水のよう。熟成によって成分は溶け合いつつあり優雅さがありますが、芯の通ったタンニンもあり、今飲んでも素晴らしく、そしてまだ未来への期待も高まるそんな一本でした。」
「13年熟成2002。今やポマール随一と評されるゴヌーは凄くパワフルですね。これは長熟タイプで、力強さにおいてはブルゴーニュ随一と言えるかもしれませんね。いいワインだと思います。」
「今となってはクラシカルで長期熟成タイプのワインを造る生産者は少数派となってしまった。最低5年の熟成が必要と言われるワインで今日は6年目の2013だ。タバコや革製品に鉄に紅茶の香りがあり、果実味はやや控えめでキメの細かい豊かなタンニンは存在感があり酸も豊富。ハッキリとした構造を持った複雑なワイン。熟成後も楽しみだが今飲んでも楽しめる品質だ。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 10%
美味しい 50%
普通 40%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
前回紹介したコント・アルマン同様しっかり骨太なワインの傾向で、長期熟成を経り事で成分が馴染み真価を発揮するタイプのワインである事がわかりました。
適切に熟成された芯の通ったような優雅さを持った品質に、感動レベルの評価を与える方もちらほらで、そこまでいかなくとも好印象を感じた方が多い傾向でしたが、若くして口にした場合開いていないと感じる方はおられました。
そして無言の普通評価をされる方も見受けられ、若い場合、ヴィンテージ、ワインの状態、価格とのバランスなどの理由によってはそのような評価になるのかもしれないと勝手ながらに想像しました。
とは言え、ポマールに特化したスペシャリストであり、ポマールを代表する生産者である事は揺るぎない事も確認できました。
以上です。
ポマールの最高峰の味わいのイメージは広がりましたでしょうか。
実際口にする事でしかその答えはわかりませんが、試してみるだけの価値を十分に持った生産者だと感じます。
ワインは一説によるとヴィンテージ違いも含めると400万種あるといいます。
これは60年間毎日ワインを飲んだとして、1日約180種飲まなければなりませんが、限りある人生の中でより多くのワインとの出会いを楽しんでいただければ幸いです。
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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