皆様はサン・ト―バンのワインにどのようなイメージをお持ちでしょうか。
「給食トーバンなら、みんなやってるんじゃないですかね。」
おっとヘラクレスさん、久しぶりの登場。しかもしょーもない発言。。。
さておき、ピュリニー・モンラッシェにシャサーニュ・モンラッシェという超有名産地に隣接するサン・トーバンは、ややマイナーイメージが先行し、市場で見かけることも少ない産地と言えるため、イメージの湧かない方も多いのではないでしょうか。
そんなサン・ト―バンにおいて、多くの一般消費者の方々に多く飲まれ(口コミされ)、そして口コミ評価の高いワインはどれだろうという客観的視点から調べてみた結果、その条件に当てはまるワインはほとんどありませんでした。
しかし、私の調べる限りでは唯一その条件を満たしていたのが、今回紹介する白ワインというわけです。
1970年、マルク・コラン氏はサン・トーバンにドメーヌを設立、年々規模を拡大し、サン・トーバンやシャサーニュ・モンラッシェにピュリニー・モンラッシェなどに多くの畑を所有する生産者に成長します。
サン・トーバンにおいては、8つのプルミエ・クリュを所有するという事で、サン・トーバンを代表する生産者と呼べるでしょう。
現在はマルク・コラン氏の3人の子供が中心となり運営する、ドメーヌ兼ネゴシアンです。
そして今回紹介するプルミエ・クリュのアン・レミリィは、プルミエ・クリュの中でも最もピュリニー・モンラッシェに近い畑であり、そのような特徴が反映されたワインは多くの飲み手の高い満足度を獲得していました。
※多くの方を魅了していたのは、私が調べる限りではこのワインが唯一でした。
サン・トーバンの優れたワインを選ぶのであれば、このワインをまずは選ぶ、あるいは選択肢に必ず入れるべきと強く感じています。
《ワイン名》 マルク・コラン サントーバン 1er アン・レミリィ
《価格》
【6000円前後】
※扱いも少なく、希少性が高い印象です。
《ブドウ品種》シャルドネ
《ボディ》 ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>サン・トーバン>プルミエ・クリュ アンレミリー
《生産者》 ドメーヌ マルク・コラン・エ・フィス
《特徴》
ふくよかな果実味
美しい酸とミネラルは
ピュリニー・モンラッシェ
を彷彿する
このワインの特徴は、芳醇でふくよかな果実味の中に、美しく豊富な酸と凛としたミネラル感が感じられる質感にあり、その品質はピュリニー・モンラッシェを彷彿させる優雅さがあります。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■畑の立地■
サン・トーバンのプルミエ・クリュではありますが、モンラッシェの丘に位置する畑でもあるため、美しく豊富な酸とミネラルを感じる質感はピュリニー・モンラッシェの上質白ワインを彷彿させます。
■自然派農法■
栽培においては化学肥料や農薬を極力使用しない減農薬農法(リュット・レゾネ)、一部では完全に使用しないビオロジック農法を実践することで、微生物の働きも加わった成分豊かな健全な土壌が育ち、その土地の成分を吸い上げた上質なブドウが実ります。
アンレミリィにおいては、豊かな果実味と美しい酸にミネラルを多く含んだ果実が実るというわけです。
その他にも様々な取り組みがあると想像されますが、情報の少ない生産者のため具体的な技術は紹介できませんが、ワイン製造の根底にはピュアさとエレガントさ、そして余韻の長さを追求した白ワインを生むという理念があります。
【外観】
輝く淡いレモンゴールド。
熟成が進むほど濃いゴールドの色調に変化していきます。
【香り】
グレープフルーツに青リンゴや白い花など清潔感ある香りが広がり、ナッツ類に上品な蜜のニュアンス、石灰を思わせるミネラル香も感じられます。
熟成が進むほど果実香は熟したリンゴに蜂蜜などの落ち着きある甘やかさが現れ、ナッツ類に優しい樽のニュアンスも広がりを見せます。
【味わい】
柑橘類の酸と洋梨のようなフルーティーさも持ち合わせた果実味は、ふくよかで透明感を感じさせるピュアな味わいで、ほんのり蜜のニュアンスも感じられます。
ミネラル分も豊富で、凛と背筋の通ったような質感は美しい酸と共に構造を形成し、ナッツ類や白い花に果実の風味を残したエレガントな余韻が続きます。
熟成が進むほど果実味は蜜リンゴなどの熟した果実のニュアンスが強まり、酸やミネラル分などの成分もワインに溶け合う事でなめらかさが増し、落ち着きと深みのある旨味を持った味わい、そして長い余韻のあるワインに成長していきます。
《飲む時の適正温度》
【8℃~14℃】
冷やし気味にすれば酸味が際立ちエレガントさのある飲み口になります。
温度を上げるほどボリューム感ある風味の広がりを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から3~20年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ白のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 2
2004年 4
2005年 4
2006年 3
2007年 4
2008年 4
2009年 3
2010年 5
2011年 4
2012年 3
2013年 4
2014年 5
2015年 3
2016年 4
2017年 5
《適正グラス》
【ふくらみのあるシャルドネグラス】
少し温度を上げることで広がる風味を楽しめますから、香りが取りやすく温度も少しずつ上がるように設計された、ふくらみのあるグラスを選ぶことをおすすめします。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
天然真鯛のカルパッチョ
ホタテバター
など、上質でコクのある味付けをした料理などと合わせることで、バランスの良い風味とコクの広がりある優雅なマリアージュを楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
サン・トーバンを代表するワインを選ぶのであれば、このワインを選んで間違いないでしょう。
また、ピュリニー・モンラッシェのような品質を求めるのであれば、比較的手頃で上質なこのワインを選ぶのも良いと思います。
有名産地の優れたワインもいいですが、このようなややマイナー産地の上質ワインは、ワイン好きのあの人の知的好奇心を擽る絶妙な選択にもなり得そうです。
《こんな場合には不適切!?》
特に不適切な場面も思い浮かばないバランス型の白ワインですが、濃厚な赤ワインの後に飲んだりすると薄く感じてしまう事もありそうです。
いくつかのワインを楽しむ場合飲み順を意識することで、より全てのワインの味わいを感じやすくし、楽しめるのではないでしょうか。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「いつも素晴らしいはずのアン・レミリ―なんだけどな~。15年熟成の2000は閉じた印象。だんだん開いてくるんだけど、いつものような美しさ優雅さが無いですね。悪くはないんだけどね。」
【良い口コミ】
「日照に恵まれた2015だからでしょうか。3年目にして甘味を伴った果実味は既に開いており、香りも味わいも非常に親しみやすさがあります。豊富なミネラルを感じる後口は、この畑らしいですね。」
「3年目って事で最初は酸がやや立ち気味だったけど、青リンゴのフレッシュさとハチミツの上品な甘味も現れてくる。フレッシュな食べ物よりも焼いた料理によく合うね。飲むほどに風味は豊かになり、満足できる品質と言えるだろう。」
「4年熟成の2015はグリーンを帯びた淡いレモンイエロー。柑橘類や青リンゴのようなフレッシュな香りに石灰を思わせるミネラル香も豊かに広がります。生き生きとした果実味に豊富なミネラルを感じる味わいは、ボリューム感があってとても心地よい飲み心地。ピュリニー・モンラッシェに近いという事で酸の美しいニュアンスが確かに似ていると感じました。」
「9年熟成の08は最初やや閉じ気味だが、蜜りんごのような香りが時間と共に現れてきた。味わいもとても豊潤で、品を感じるような美しい酸がまた素晴らしい。更なる熟成も楽しみなワインだね。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 7%
美味しい 56%
普通 37%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
サン・トーバンというややマイナーイメージの強い産地のせいか、多くの方に選ばれて高評価を得ているワインを見つけ出すのに時間がかかりましたが、私のリサーチでは唯一その条件を満たしているのがこのワインでした。
モンラッシェに隣接する好立地の畑からは、モンラッシェにも似た豊富なミネラルや美しい酸を持ったワインが生まれます。
突き抜けるような品質ではありませんが、そのような美しくバランスの良い品質を高く評価する方が多いといった印象で、サント―バンの優れた白ワインを選ぶのであれば、このワインを必ず候補に入れるべきと感じる結果となりました。
以上です。
マルク・コランのアン・レミリィの味わいのイメージは広がりましたでしょうか。
「給食トーバンのイメージなら広がっていますよ!!」
おっと!!
まだ言ってる。
しかも強めに。。。
さておき、サン・トーバンの優れたワインを選ぶのであれば、ピュリニー・モンラッシェを彷彿させるこのワインを外すわけにはいかないと確認できました。
ピュリニー・モンラッシェでもシャサーニュ・モンラッシェでもムルソーでもシャブリでもない、サン・トーバンの優れた白ワインを選択できる方も少ない事でしょう。
選択肢の引き出しにこのようなワインを持っておけば、様々な場面で活躍が期待できそうです。
あなたのワイン選びの一助になれれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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