今回は「若き新星」「新しいスタイルを確立した異端児」と呼ばれる生産者のジュヴレ・シャンベルタンの紹介です。
モレ・サン・ドニを拠点にワイン造りを行っている生産者で、現当主(2019年現在)は5代目のフレデリック氏。
彼は、17歳からワイン造りを手伝いはじめ、ボーヌの醸造学校で学び、ドメーヌ・ジャン・ノエル・ガニャールでブルゴーニュワイン造りの基本を、カリフォルニアのカレラ、オーストラリアのバンノックバーンなどでピノ・ノワールの醸造方法を学び、1995年に自分の理想を追うため「フレデリック・マニャン」の名義でワインを造り始めました。
「新しいスタイルを確立した異端児」と呼ばれるのは、父が続けてきたドメーヌスタイル(自身の畑で育てたブドウを使ってワインを造ること)ではなく、新しい形のネゴシアンスタイル(自身の畑は持たず、ブドウ又はワインを仕入れるなどをして製造するスタイル)によっててワインを造り始めた事にあります。
ぶどう耕作専門会社を設立した彼は、自らが選び抜いた畑を決めたら、その畑の所有者に委託してもらい、自らの会社のスタッフで栽培するという、限りなくドメーヌに近いネゴシアンという新しい形を造ったというわけです。
フランスのワイン評論家、ミシェル・ベタンヌとティエリー・ドゥソーヴのワインガイドでは、2012年度版においてネゴシアンとしては最高評価のBDマーク4つを獲得している実績もあります。
しかし、私がマニャンを紹介しようと決めたのは、あくまで実際飲まれた方の評判が良かったという客観的視点によるもので、ジュヴレ・シャンベルタンの様々な生産者のワインと比較してみた結果、このワインは紹介するに値するワインだと感じたからです。
あなたのワイン選びの一助になれば嬉しく思います。
《ワイン名》 フレデリック マニャン ジュヴレ シャンベルタン ヴィエイユ ヴィーニュ
《価格》
【5500~8000円】
《ブドウ品種》ピノノワール
《ボディ》 ミディアム~フルボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ジュヴレ・シャンベルタン
《生産者》 フレデリック・マニャン
《特徴》
美しさと力強さを両立した
優美なバランス型
このワインの特徴は、土地の成分を十分に吸い上げた質の高いブドウの、美しくもあり力強くもあるジュヴレ・シャンベルタンらしい品質にあり、どの部分が際立つというよりは、全体のバランスで上質な味わいを表現しています。
そのようなワインが生まれるワイン造りの特徴を挙げましょう。
・ネゴシアンスタイルであるマニャンは、最も栽培条件の適した畑を自らの目で厳選し、直接その畑の所有者と交渉し委託を得ると、自社の栽培チームによって管理します。
・ブドウの樹は、土地の成分を吸い上げ上質な果実を実らせる古木(ヴィエイユ・ヴィーニュ)のみを使用します。
・無農薬・有機栽培はもちろん、天体の動きにあわせて各工程を進める栽培を行う事を実践しており、それによって健全な土壌が育ち、それによって土地の豊かな成分を吸い上げた上質なブドウが実ります。
・世界でも最高級のバリック樽を造ると言われるフランソワ・フレール社を、「自分が使うことでますます価値が上がる」と説き伏せて使用しており、ほどよく心地よい樽のニュアンスも感じられます。
※ちなみにフレール社製の樽を100%使用しているのは、あのドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ、コント・ラフォン、ルロワ、そしてフレデリック・マニャンのみという事です。
主に以上のような取り組みで、名実ともに優れたワインを生んでおり、これからにも期待できる生産者と言えるでしょう。
【外観】
深いルビレッド。
熟成が進むほどレンガ色に近づいていきます。
【香り】
ラズベリーにイチゴ、チェリーなどにスミレやバラの加わった華やかな果実香に、ほどよい樽のニュアンスも感じられます。
熟成するほど果実香は落ち着きある熟した果実の風味が現れ、土や革製品といった熟成香も加わり円熟味を感じさせます。
【味わい】
透明感のあるピュアな果実味は豊かで心地よく繊細な旨味を感じます。
キメの細かいタンニンはなめらかで、美しい酸味は味わいをまとめ、ほのかな苦味がアクセントになり、バランスの良い風味を残した余韻が続きます。
熟成するほど成分は溶け合い旨味となめらかさが増し、円熟味の増した熟した果実味や、土や革製品を思わせる複雑な風味も加わった、妖艶な品質に成長していきます。
《飲む時の適正温度》
【14℃~18℃】
やや低めの温度にすれば、酸味が際立ちエレガントで軽快な飲み口が楽しめますし、温度を上げるほど香りと味わいが広がり、豊かで複雑な風味を楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から5年~20年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ赤のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 3
2004年 2
2005年 5
2006年 3
2007年 2
2008年 3
2009年 5
2010年 5
2011年 3
2012年 4
2013年 3
2014年 4
2015年 5
2016年 4
2017年 4
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
豊かな香りとエレガントで複雑な味わいを持ったワインです。
香りが取りやすく、温度が少しずつ上がり、甘味を感じやすいように設計された、ふくらみのあるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
和牛のタタキ
うなぎのかば焼き
など、コクのある味わいの料理に合わせる事で、豊かで華やか、複雑な風味の広がる上質なマリアージュが楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
そこそこ上質なジュヴレ・シャンベルタンをそこそこの価格でお探しでしたら、マニャンを選択肢に入れるべきだと思います。
突き抜けてはいませんがそこそこで、価格も比較的親しみやすいそこそこさがあります。※そこそこを連発しています(笑)
また、そこそこのこのワインはそこそこ大切な場面を盛り上げたい時にも活躍が期待できます。
贈り物や、記念日に飲むワインの候補にしてみてはいかがでしょうか。
きっと喜んでもらえるでしょう。
そこそこに。(笑)
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「3年目の2013はまだ硬いです。でもデキャンタ―ジュにより開いたのでよいとしましょう。」
「3年熟成の2013はよくも悪くもジュヴレ・シャンベルタンらしさがよく表現されている。ただ私は好みでない。」
【良い口コミ】
「透明感があるという事で選びました。なるほど華やかでスッと口に入る心地よさ。日本酒の大吟醸のようかな?豊かな果実味で旨味もあり、それでいて洗練された美しい質感はスルスル飲めてしまうようで、飽きのこない秀逸なワイン。4年熟成の2013です。」
「ビッグヴィンテージで16年熟成のマニャン。滋味深く出汁の効いた味わは、まさに熟成ピノの素晴らしさが広がる素晴らしい品質だ。さあ、明日からもまた頑張ろうか。」
「4年目の2015。深いルビー色、熟した赤系果実にスミレ、腐葉土の香りがありしなやかな質感。酸は強すぎることなく心地よく、ほんのり苦味もあり、古木による深く複雑な味わいがあります。豊潤な味わいでとても満足度の高い味わいです。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 3%
美味しい 71%
普通 23%
良くない 3%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
このワインは、バランス感覚に優れており、飲み手を高いレベルで楽しませている傾向が感じられました。
3年程度の熟成では、硬いというコメントもちらほら見られましたが、デキャンタや時間経過で良くなったという傾向もあるため、熟成期間や抜栓のタイミング、デキャンタ―ジュなどを考慮する必要もあると感じました。
そして、熟成させたものは特に深みと旨味が現れ、評価の高い傾向がありますから、長期熟成させるのも選択肢に入れるべきとも思いました。
ごく少数の方が、苦手という意見をされていますが、ブルゴーニュのピノノワールやジュヴレ・シャンベルタンが好みの方には、安定的に良質なワインを生んでいる、マニャンのこのワインは安心しておすすめできる。そんなワインではないでしょうか。
以上です。
情報豊かな現在は、ワイン製造技術の進歩も加速しているように感じます。
これは同じ生産者であっても言えることで、年々その品質が改良されていくという事もざらにあります。
フレデリック・マニャンのような勢いある生産者を続けて飲む事で、年々変化(進化)してゆく味わいを楽しむのもまた有意義だと思います。
いろんなアプローチでワインは楽しめますね。
あなたのワインのある生活が豊かになる事を願っております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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