「新樽200%」
今回のキーワードです。
早速そのようなキーワードは一旦置いておきまして(笑)
ボーヌのワインで多くの方に選ばれ(口コミされ)、実際飲まれた消費者の皆様の口コミ評価の高いワインはどれだろうという客観的視点から調べてみた結果、そんなに多くの口コミ量はありませんでしたが、高い満足度を得ている傾向をこのワインからは強く感じました。
そして、私がこのワインを紹介しようと思ったもう一つの大きな理由は、このワインが他の生産者とは違った個性を持っている事を、皆様の口コミを拝見して感じたからです。
それでは簡単に歴史を解説します。
1989年、父の菓子店でパティシエとして働いていたドミニク・ローラン氏は、ワイン好きが高じて自分でワインが造りたいという想いが爆発し、ついにはネゴシアン(自社の畑を持たず、ブドウ又はワインを仕入れてワインを製造するスタイル)を設立。
ブドウ(ワイン)を仕入れる際の目利きの力と、独特の醸造技術を駆使し高品質なワインを次々に生むようになり、ブルゴーニュラバーであれば知らない人がいないほどの生産者に上り詰めたわけです。
今回のキーワードである「新樽200%」はその独特の醸造技術に含まれるわけですが、くわしくは特徴のところで解説させていただきます。
昨今のエレガント系ブルゴーニュ・ピノとは違った魅力を持っており、多くの方の支持を得ているという事で、選択肢の幅も広げてくれる優れたワインではないかと感じています。
《ワイン名》 ドミニク・ローラン ボーヌ プルミエ・クリュ ヴィエイユ・ヴィーニュ
《価格》
【6600~7700円】
《ブドウ品種》ピノノワール
《ボディ》 ミディアム~フルボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ボーヌ>プルミエ・クリュ
《生産者》 ドミニク・ローラン
《特徴》
芳醇で複雑
充実感溢れる果実と樽感
エレガンスを併せ持つ
このワインの特徴は、充実感のある果実の香りに、木樽に由来する芳ばしい香りを主体に感じられる複雑な芳香性と、ふくよかで密度の高い味わいにありますが、決して大雑把ではない繊細な風味や旨味も感じらせるようなエレガンスも併せ持っているところです。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■目利きの力■
ドミニク・ローランの目利きの力の高く厳しいもので、主に以下の条件を満たしていなければ引き取らないと言われています。
・ヴィエイユ・ヴィーニュ
土地の成分を吸い上げる能力が高いなど、上質な果実を実らせる樹齢の高い古木(ヴィエイユ・ヴィーニュ)のブドウを使用していること。
・100%手摘み
機械を使わず、ブドウを潰してしまうなどのリスクがなく、健全が果実が得られる手摘みの収穫であること。
・全房発酵
一般的にはブドウの粒のみを発酵させるのが主流ですが、粒の付いた枝のような部分を梗(こう)と呼び、その部分も含めて全て発酵させていること。
それによって、滑らかなタンニンが得られ長期熟成に耐える事や、梗由来の独特の苦味や風味が加わり、複雑な味わいになります。
※この全房発酵は非常に難易度の高い手法としても知られ、適切に行わないと青臭さ・酸味・ギスギスしたタンニンが出てしまいます。
そのためには、梗の部分までしっかりと熟している状態にさせなくてはならず、菌の付きやすい梗を無農薬で健全に保つには非常に管理が緻密でなければなりません。
そのためこの手法を実践しているのは、DRCなどの極一部のトップ生産者のみというわけです。
■新樽200%■
さて、ここで200%について解説となります。
通常樽のニュアンスを反映しやすい新樽で熟成された比率を%で示し、もちろん100%が最も高い比率となります。
成分の充実感があり樽の風味にも負けないブドウの力があるグランクリュなどの上級ワインほど、100%あるいはそれに近い比率となり、村名ワインや広域AOCなど格が下がるほど使用比率は低くなる傾向にあります。
特に近年ではブドウの繊細なニュアンスを感じやすくするために、その比率は低くなっている傾向があります。
そんな100%が最高の使用比率において「200%」はあり得ないのですが、その答えはこうです。
仕入れたワインを新樽100%で約半年熟成させ、さらに別の新樽に移し熟成させる。
という事で、ドミニク・ローランと新樽200%はセットで使われるほど特有の技法なんですね。
そして、樽へのこだわりが強いローラン氏は現在では樽を造るところからプロデュースしており、より質の高いワインを目指しています。
新樽200%と聞くと樽感ムンムンなイメージを持つかもしれませんが、よりエレガントで柔らかなワインを生む事も重視しているため、決して樽だけが主張しすぎる事はなく繊細なニュアンスや旨味も感じられる品質に仕上げており、それは逆に言えばブドウのポテンシャルの高さがあってこそとも言えるわけです。
【外観】
深みのあるルビーレッド。
熟成が進むほどレンガ色に近づいていきます。
【香り】
ラズベリーやプラムなどの熟した果実の香りに、樽に由来する木のニュアンスやコーヒーのような香ばしさが心地よく広がります。
熟成させれば果実香は円熟を感じさせる落ち着きある甘やかさが現れ、樽の風味も心地よく馴染み、紅茶や土にキノコといった熟成香も広がりを見せます。
【味わい】
若いうちは凝縮感のある熟した果実味が豊かに広がり、ほどよくしなやかなタンニンと酸味はバランス感覚に優れ、果実や樽の風味を伴った心地よい余韻が続きます。
熟成が進むほどタンニンや酸はさらにワインに溶け込むことで穏やかな印象になり、円熟を感じさせる甘やかな果実味と旨味に、樽香や熟成香も加わった複雑な風味は魅惑的で、長い余韻へと導いてくれます。
《飲む時の適正温度》
【14℃~18℃】
その充実感ある香りと味わいを感じるには、このくらいの温度帯が最も広がりある風味を楽しめるでしょう。
少し冷やし気味にすれば酸味が際立ち軽快さのある飲み口になりますし、温度を上げるほど酸は穏やかに感じられ、甘味や複雑な風味の広がりある味わいを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から5~20年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ赤のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 3
2004年 2
2005年 5
2006年 3
2007年 2
2008年 3
2009年 5
2010年 5
2011年 3
2012年 4
2013年 3
2014年 4
2015年 5
2016年 4
2017年 4
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
豊かな香りと、豊潤で複雑な味わいを持ったワインです。
香りが取りやすく、温度が少しずつ上がる事で甘味を感じやすいように設計された、ふくらみのあるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
ラムチョップ
アワビバター
など、上質で豊かなコクのある味わいの料理に合わせる事で、芳醇なワインの味わいが料理を引き立て、また、料理がワインを引き立て、複雑で豊かな風味の広がるマリアージュが楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
いつものブルゴーニュ・ピノとはちょっと違った味わいを楽しみたい時は、このようなワインを選択肢にしてもおもしろそうです。
樽のニュアンスを抑えてエレガントなワインを造る事が主流のブルゴーニュ・ピノにおいて、「新樽200%」は逆に興味深く感じます。
樽のニュアンスが苦手な方には向かないかもしれませんが、いろんなワインを楽しみたい方、またはそのような方へのプレゼントにしても興味深く喜んでいただけそうです。
「このワイン『新樽200%』なんです」
と言葉を添えれば、
「え?200ってどういう事?」
となり尚効果的でしょう。
《こんな場合には不適切!?》
樽の控えめなワインが好みが好きな方は選んではいけません。
なんと言ってっも「新樽200%」ですから(笑)。
とは言っても主張しすぎる樽感ではなく、全体の調和の中にある要素の一つが心地よい樽感といった品質ですから、毛嫌いしないでいただければ幸いです。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「5年熟成の2014。これ結構楽しみにしてたんだけどな~。美味しいことは美味しいのですが、早かったのかな。樽の香りが支配的でその他の要素を打ち消してしまっているように感じます。」
【良い口コミ】
「5年熟成の2014は結構果実味がありますね。フルーティーな飲み口を巨峰を思わせる酸味がまとめる感じ。樽は結構しっかり。15℃くらいで飲むと心地いいですね。」
「ピノなのに赤果実ってよりはプラムやなんかの黒果実の味わいがするね。6年熟成の2013って事だけど、土やキノコにスパイシーな風味も複雑性を高め、酸やタンニンも感じるがしなやかだからスッと飲めるとこがいいね。」
「5年熟成の2014は抜栓直後から強い香りが広がり重厚感があります。味わいは硬いようにも思えますが、決して飲みにくいわけでもでもなく美味しい。そして2日目になると非常に滑らかな質感に変化しこちらの方がいいですね。」
「あぁ?なんだぁ?ブルゴーニュ・ピノにしてはなんだか男っぽいじゃねぇかぁ。でも優しさもあるな~。俺みたいってか!?(笑)。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 10%
美味しい 55%
普通 35%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
そんなにたくさんの口コミがあったわけではありませんが、充実感のある香りとまろやかな味わいは、飲み手に高い満足度を与えている傾向を感じました。
興味深かったのは、エレガント系のブルゴーニュ・ピノを造る生産者が多い昨今にしては、果実感や樽をしっかり感じられるような造りをしている点で、そのような差別化も飲み手を楽しませる要素なのかもしれないと感じる結果となりました。
以上です。
なかなか興味深い生産者でした。
巷では「新樽使いの魔術師」とも呼ばれているみたいです。
どれほどの魔術か・・・
体験してみたくはありませんか(笑)。
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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