明けましておめでとうございます。
2020年の始まりです。
この記事を読まれる方は、この記事の公開日である元旦には訪れる方もほとんどおられないとは思いますが、節目という事でとりあえず(笑)。
さて、さっそく新年最初のワインの紹介と参りましょう。
クロ・デ・ペリエール。
グラン・クリュの無いムルソーにおいて、もしグラン・クリュに昇格するプルミエ・クリュがあるとすればまっ先に候補に挙がる畑で、最も優れると評される畑。
そんなクロ・デ・ペリエールを単独所有(モノポール)するのが今回紹介するアルベール・グリヴォ。
1876年から続くムルソーの名門であり、初代アルベール グリヴォー氏の孫にあたるバルデ家のドゥニーズ、ミッシェル、マルグリッドの3人兄弟で所有し、ミシェル氏が栽培から醸造まで行う責任者として品質を維持しています。
ムルソーのワインで多くの方に飲まれ(口コミされ)、そして口コミ評価の高いワインはどれだろうという客観的視点から調べてみた結果、2大巨匠と呼ばれるコシュ・デュリにコント・ラフォンはもちろん異質の存在感を放っていましたが、お値段も異質(笑)。
そんな巨匠のムルソーに比べれば、手頃な価格で最上級のムルソーが楽しめるとあって、多くの方を魅了しているのがアルベール・グリヴォのクロ・デ・ペリエールである事が、皆様の口コミから伝わってきました。
《ワイン名》 アルベール・グリヴォ ムルソー 1er クロ・デ・ペリエール
《価格》
【16000~27000円】
《ブドウ品種》シャルドネ
《ボディ》 ミディアム~フルボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ムルソー>プルミエ・クリュ クロ・デ・ペリエール
《生産者》 ドメーヌ・アルベール・グリヴォ
《特徴》
強靭なミネラルと豊富な酸
熟成で甘美で魅惑的な味わいに
このワインの特徴は、強靭なミネラルと豊富な酸に粘性のある質感など、充実感溢れる成分の豊かさにあり、若くして口にした場合、そのミネラルや酸は硬く閉じた印象ですが、適切な熟成を経たこのワインは、ボリューム感溢れるリッチな味わいになり、深いコクと上質な甘味を兼ね備えた品質は甘美であり魅惑的です。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■最上のプルミエクリュ■
このワインのリッチなボディを生む最大の要因は、ムルソーで最も優れたプルミエ・クリュである事。
プルミエ・クリュである通常のぺリエールに比べて粘土質の多いクロ・デ・ぺリエールからは、よりリッチで強靭なミネラルなどの成分を持ったブドウが育ちます。
その充実した成分は、若くして口にした場合硬い印象があり、熟成を経る事で成分が馴染み奥深い甘美さや旨味が現れてきます。
■手摘み収穫■
丁寧に収穫されることでブドウが傷つくことなく、品質の低いブドウを除く事も可能なため、より洗練度の高い上質なブドウのみを得られます。
■控えめの樽■
樽のニュアンスの反映しやすい新樽の使用比率は20%程度と低め。
ブドウの繊細なニュアンスも感じさせつつ、ほどよい樽のニュアンスも感じられる品質に仕上げています。
※1980年代に植え付けを行っているという事で、樹齢は40年弱。樹齢は高いほど成分を吸い上げる力も強く上質な果実を実らせるため、年々品質は良くなっていく事が推測されます。
【外観】
輝く淡いレモンゴールド。
熟成が進むほど濃いゴールドに変化していきます。
【香り】
柑橘類の爽やかさにメロンのフルーティーさに白い花の華やかさが広がり、ナッツにバターのニュアンスも感じられます。
熟成が進むほど果実香はアンズや黄桃など熟した果実の甘やかさが現れ、アーモンドや焼いたパンに蜂蜜のニュアンスも感じられる甘美で妖艶な香りが広がります。
【味わい】
若いうちは洗練された果実味があり、研ぎ澄まされたような美しい酸味と凛としたミネラル感はポテンシャルの高さを感じさせ、複雑な余韻があります。
熟成させるほど成分は溶け合いしなやかで粘性の豊かな質感は強まり、蜜のような甘やかさを帯びた果実味と旨味が妖艶な味わいを表現し、リッチな風味を残した長い余韻へと導いてくれます。
《飲む時の適正温度》
【8℃~14℃】
冷やし気味にすれば酸味が際立ちエレガンス溢れる飲み口になります。
温度を上げるほどふくよかで複雑な風味の広がりある、秀逸な味わいを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から7~30年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ白のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1989年 5
1990年 4
1991年 2
1992年 4
1993年 2
1994年 2
1995年 4
1996年 5
1997年 3
1998年 2
1999年 3
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 2
2004年 4
2005年 4
2006年 3
2007年 4
2008年 4
2009年 3
2010年 5
2011年 4
2012年 3
2013年 4
2014年 5
2015年 3
2016年 4
2017年 5
《適正グラス》
【ふくらみのあるシャルドネグラス】
少し温度を上げることで広がる風味を楽しめますから、香りが取りやすく温度も少しずつ上がるように設計された、ふくらみのあるグラスを選ぶことをおすすめします。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
アワビバター
キノコのリゾット
など、上質でコクのある味付けをした料理などと合わせることで、洗練された優雅な風味とコクの広がりあるリッチなのマリアージュを楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
ムルソーの優れたワインをお探しでしたら、最も優れた畑を単独所有で生産されるこのワインは選択肢に入れても良いのではないでしょうか。
コシュ・デュリやコント・ラフォンほど価格は高騰していませんし、品質も優れていますから、贈り物や特別な日に楽しむワインにも向いていると思います。
粘性が強くリッチで甘美なムルソーらしさを体感できる素晴らしいワインです。
《こんな場合には不適切!?》
不適切というよりは、その充実したミネラルや酸は若い場合硬い傾向にありますから、本来の魅惑的な味わいを引き出すには適切な熟成を10年くらいはさせた方が良いのではないでしょうか。
凛としてシャキッとした品質が良い場合は若くても良いと思いますが、飲み頃や適切な保存は意識しておきたいワインです。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「ムルソーで最も優れたプルミエ・クリュ。5年熟成の2013はエレガントで良質なワインである事には違いないが、ミネラルは思いのほか少なめで特筆すべきほどのスケールは無いかな。他の有名生産者がこの畑でワインを造ってもおもしろいかも。」
「11年目の06の開けたては、ゴージャスに広がる香りに圧倒されたが、1時間程度で弱まってしまった。ピークを越えてしまったのか?十分楽しめる品質だが、このワインのポテンシャルはそんなものではないはず。保存、あるいは状態の問題か?」
「8年経ってもまだまだ若々しさを感じる、ミネラル感と酸味。バランス良く素晴らしいワインですが、もう少し熟成させてから出会いたい2011とも言えるでしょう。」
【良い口コミ】
「22年経って飲み頃の95は美しいゴールド。ほどよいとろみがあってそれほど熟成香はないかな。溢れんばかりの旨味は格別で塩気を感じるが、スッと飲み込めるような透明感だってある。最後はカラメルのような風味を残した余韻があったよ。完璧だ。」
「20年の熟成を経た96は非常にリッチで素晴らしいですね。ぺリエールよりも粘土が多いクロ・デ・ぺリエールの方がリッチになるらしいですね。」
「13年目の06からはウイスキーを思わせる樽のニュアンスがあります。しかし時間が経過するほどに、煮詰めたオレンジの皮や蜂蜜にチョコレートなど、香水の如く押し寄せる甘やかな香りが現れ、凝縮感ある果実味と旨味が優雅に広がります。かと言って飲み疲れしてしまうようなところも無く、まさに飲み頃の魅惑的なワインだと思いました。」
「3年熟成の若き2015はムルソーっぽくない軽やかな香りで、メロン・柑橘類・白い花・樽・ナッツがある。飲み口はどの要素が主張しすぎる事はなくキレの良い酸が引き締め、爽やかかつ複雑な余韻があるね。ぼってりとしたムルソーのイメージを覆すような豊富なミネラルは凛とした質感を表現しており、いい意味で裏切られた。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 23%
美味しい 60%
普通 17%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
まず、このワインを口にしている方々はやはりと言いますか、非常に経験豊かなテイスティング能力も高い方々が多いという印象です。
そしてそんな優れた飲み手の方々を高い確率で魅了しているのがこのワインであり、特に適切な熟成を経たこのワインの評価は秀逸な傾向が強かったように感じられました。
一部で期待を下回るニュアンスや、早すぎて硬く感じた方もいらっしゃいましたが、品質自体を低く評価する事もなく、さすがはムルソーで最も優れた畑と評価されるだけの事はあると感じる結果となりました。
以上です。
このワインはやはりムルソーの最高の畑という事で、多くの方に飲まれていましたが、アルベール・グリヴォの生産者情報はあまり見つけ出すことができず、栽培や醸造に関するこだわりも未知な部分が多かったです。
例えばブルゴーニュで主流になりつつあるビオディナミ農法などの事にも触れられていませんでしたし、収量制限や厳しい選果あるいは醸造設備への投資などの情報も特に無しといった感じでした。
農薬バンバンでテキトーにワインを造っているとは思えませんが(笑)。
あまり情報を表に出さない生産者なのでしょうか。
あるいは私のリサーチ不足かもしれませんが。。。
とは言っても、実際飲まれた消費者の方々を魅了している事は確かなわけで、優れた土壌だけでは素晴らしいワインは誕生しませんから、それなりの理由があるのでしょう。
それなりって・・・
稀に見る抽象的表現!!
今回はこれくらいでお許しいただければ幸いです・・
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
2020年もよろしくお願い申し上げます。
コメント