モダン=現代的・当世風
クラシック=古典的
「このワインはモダンな味わいだね。そしてこっちはクラシカルだね~。」
このような非常に抽象的な表現に「???」と思ったことはないでしょうか。
モダンは現代的という事で、いわゆる流行といったニュアンスが強く、時代によって変化するもの。
現在のブルゴーニュにおいては、土地の特徴を反映したバランス良い味わいがモダンと言えるでしょう。
では、クラシックな味わいとは?
その答えはクラシカルな味わいと表現される生産者のワインを体感すればわかります。
さて、私は広域ブルゴーニュ・ルージュ(赤)を生み、日c本で購入可能な主要生産者を90程ピックアップし、その中で多くの日本の消費者の方々に実際飲まれ、そして口コミ評価の高いワインはどれだろうという客観的視点から調べてみました。
その結果、多くの方に飲まれ、高い満足度を獲得していると感じた生産者の一つがジェラール・ラフェ。
その他に特にそのような条件を満たしていると感じたのは、
■グロ・フレール・エ・スール
■ジョセフ・ロティ
■ダヴィド・デュバン
■フィリップ・ルクレール
■マーシャル・ド グラモン
以上の生産者達でした。
※他にも《フーリエ》《ドニ・モルテ》《フレデリック・コサール》《シモン・ビーズ》《フレデリック・マニャン》など多くの生産者が高評価を得ていましたが、価格も考慮して上で、あえて絞り込んだ場合、上記の生産者が特に優れた評価を受けていると感じました。
《ワイン名》 ジェラール・ラフェ ブルゴーニュ・ルージュ
《価格》
【3000円前後】
《ブドウ品種》ピノ・ノワール
《ボディ》 ライト~ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ
《生産者》 ジェラール・ラフェ
ここで簡単にプロフィール。
ジェラール・ラフェはモレ・サン・ドニに本拠地を置く有力生産者。
先代のジャン・ラフェはパーカーに4ツ星評価を与えられた人物で、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズにおいて最高生産者の一人と言われるほど。
2002年にドメーヌを引き継ぎ、ジャン氏と25年間共に働いてきた経験を軸にワインを生んでおり、父の時代と比較すればややモダン(現代的)になりましたが、それでも伝統的で昔ながらなのクラシカルなブルゴーニュを生む生産者として評価を集めています。
《味わいの特徴》
明るさや華やかさは弱く
田舎っぽい落ち着きを持つ
クラシカルブルゴーニュ
このワインの特徴は、モダン(現代的)なブルゴーニュ・ピノに見られるような、華やかな香りや明るい印象を感じる風味で、サラッと飲めるような品質ではなく、落ち着きある果実の風味や比較的豊富な酸に適度なタンニン、ドライフラワーや土に樽の風味が感じられる品質にあります。
そしてどこか昔ながらの田舎っぽさを感じさせ、飲み応えのある品質はクラシカルなブルゴーニュ・ピノと評価されています。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
※非常に情報の少ない生産者で、多少推測が含まれます。
■自然への敬意■
自然への敬意を払いブドウを栽培する哲学は先代から変わらないもの。
土地の特徴が反映した落ち着きあるワインが生まれます。
モレ・サン・ドニが本拠地という事で、このワインに使用されるブドウの産地は定かではありませんが、どこか田舎っぽい風味を生みだすモレ・サン・ドニのブドウを使用しているのではないかと推測されます。
■収量制限■
収穫量をあえて制限することで、残された果実に成分が集中します。
1ヘクタール当たり50ヘクトリットル以内というブルゴーニュの規定において、30~35ヘクトリットルはかなり少ないと言えます。
【外観】
透明感のあるルビーレッド。
熟成するほどレンガ色に近づいていきます。
【香り】
野イチゴやラズベリーのフレッシュさに、ブラックチェリーやブラックベリーのフルーティさ、樽のニュアンスに鉄分や土っぽいニュアンスも加わり、落ち着きも感じさせます。
【味わい】
野イチゴやラズベリーなどの適度な果実味を豊富な酸が引き締め、少しの甘味と旨味が広がりを見せ、適度なタンニンは構造ある味わいを表現、野性味のある果実の風味や樽のニュアンスを伴った余韻があります。
熟成するほど酸やタンニンは溶け合い滑らかな印象になり、キノコや落ち葉などの熟成を感じる風味に、ほのかな甘味も加わた円熟味が感じられます。
《飲む時の適正温度》
【14℃~18℃】
少し低めの温度にすれば、酸味を感じやすくエレガントで軽快な飲み口が楽しめますし、温度を上げるほど香りと味わいが広がり、豊かな風味を楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から3~10年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ赤のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
2009年 5
2010年 5
2011年 3
2012年 4
2013年 3
2014年 4
2015年 5
2016年 4
2017年 4
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
豊かな香りと落ち着いた味わいを持ったワインです。
香りが取りやすく温度が少しずつ上がり、甘味を感じやすいように設計された、ふくらみのあるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
キノコのリゾット
鴨鍋
など、ほどよいコクのある味わいの料理に合わせる事で、落ち着いた風味の広がるマリアージュが楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
ちょっと落ち着いた昔ながらのブルゴーニュらしさを体感したい方におすすめしたいワインです。
華やかで軽快なワインも多い現在ですが、昔ながらの雰囲気を味わえるブルゴーニュ・ピノも新たな発見があって楽しいと思います。
いくつかのワインを飲み比べる時の候補にも最適でしょう。
《こんな場合には不適切!?》
明るく華やかで軽快なピノを求める場合にはおすすめしません。
そして、広域ブルゴーニュとしては複雑性のあるワインですが、村名ワイン以上の奥深さはありませんから、期待しすぎるのも良くないでしょう。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「10年熟成の07です。弱いヴィンテージだけにちょっと枯れたかな。香りは弱く果実味も控えめで酸は強め。何とかバランスは保たれゆっくり楽しめるワインではあるが、もう少し早く飲むべきでしたね。」
「スケールとかは無くホッとするようなブルピノでいいのだけど、やっぱり薄さが気になるかな。クラスを上げると、じんわりと追いかけてくるような旨味がありますからね。」
【良い口コミ】
「苦味とも受け取れそうな絶妙なニュアンスは、ジェラール・ラフェが持つ独特のニュアンス。チェリーにストロベリーやプルーンなどの果実香は妖艶で、何回もクンクンしてしまう(笑)。3年目の2015は若く、チャーミングな酸がありますが、同時にコクや旨味もちゃんとあり、広域ワインとしては非常にレベルが高いでしょう。」
「今時あまり感じられないクラシックスタイル。果実味とタンニンの抽出は強めで、軽やかさや華やかさはゼロ。最初っからグッとくる味わいは飲み疲れするかもですが、これはこれで良し。4年熟成の2016は熟成後も楽しみな一本です。」
「6年熟成の2011は、淡いルビーレッドにブルピノらしい芳香性、凛としたミネラルに豊富な酸を追うように現れる果実味。そんなに奥深いわけではないけど、薄旨系の落ち着いた味わいは好印象。エチケットのデザインも田舎っぽさ満載で、ゆっくりとした時の流れを演出してくれる。」
「2年熟成の2017は甘酸っぱいクラシカルなブルピノ。ストロベリーを軸に、スミレにシナモンに樽、還元的な硫黄に青っぽいニュアンスもあります。味わいは軽快でスッと飲める感じですが、どこか存在感があります。若さもあってか酸は主張気味ですが、時間経過で落ち着きが出てきて少しの甘味も感じられますね。昔ながらの伝統的品質を維持しているような味わいは好感が持てますね。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると、
感動的!! 3%
美味しい 47%
普通 50%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
華やかで軽快なブルゴーニュではなく、落ち着きあるクラシカルなブルゴーニュだと感じる口コミが多い事が印象的でした。
クラシカル?と、思う方もおられますね。
春というよりは秋。
都会というよりは田舎。
昼光色というよりは電球色。
そんなイメージです。
ACブルゴーニュという事で、上級クラスのワインのような奥深さはありませんが、このクラスのワインとしては複雑で落ち着きのある味わいがあり、そのような品質に好感を持った方が多い印象です。
比較的タンニンや酸などの成分も豊かなため、10年程度の熟成に耐える傾向もありますが、枯れた印象になったワインもあるので、適切な保存やヴィンテージも考慮しておいた方が良いと言えます。
というわけで、枯れ気味以外で特にマイナスイメージのコメントはほぼ無く、一定のレベルを満たすワインであり、華やかで軽快なスルスル系の品質を求める場合にはおすすめしにくいですが、ゆっくりまったり落ち着いて楽しめる手頃なピノとして提案したいワインです。
以上です
クラシカルな味わいのイメージは広がりましたでしょうか。
クラシカルな味わいがあるからこそモダン(現代的)がわかるのであり、モダンばかりでは「そもそもモダンな味ってどういう事?」ともなりかねません。
あらためてワインの選択肢の多さ、懐の深さを感じる回となりました。
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
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