メドック格付け第1級のワインの中でも、最も男性的な長期熟成型ワインを生むことで有名です。
今回紹介するワインはシャトー・ド・ラ・トゥール。
こちらはグランクリュであるクロ・ヴージョの最大面積所有者であり、シャトー・ラトゥールとは無関係。
「関係無いんかい!!」
と、聞こえてきそうですが、ややこしいネーミングなのですね。(笑)
とはいえ、シャトー・ド・ラ・トゥールの歴史は古く1890年創設。
高い品質のワインを生み出し続けている事で、ロバート・パーカー氏をはじめとする評論家たちも高評価。
そして、実際飲まれた日本の消費者の皆様の口コミ評価も高いということで、良質なクロ・ヴージョを選ぶのであれば、このワインは選択肢に入れるべきだと感じたわけです。
あなたのワイン選びの一助になれば嬉しく思います。
《ワイン名》 シャトー ド ラ トゥール クロ ド ヴージョ
《価格》
【16000~3万円】
《ブドウ品種》ピノノワール
《ボディ》 フルボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ヴージョ>クロ・ヴージョ
《生産者》 シャトー ド ラ トゥール
《特徴》
力強く成分豊か
熟成で育まれるエレガンス
このワインの特徴は、繊細でエレガントなイメージの強いピノノワールにしては果実味やタンニンに樽のニュアンスといった要素が強く表現されている点にあり、熟成する事で成分は溶け合い、ようやくピノノワールらしいエレガントで優雅な質感に成長してゆく点だと考えます。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
・農薬や化学肥料を使用しないビオロジック農法を実践しており、健全で成分豊かな土壌が育ち、その豊かな成分を吸い上げた上質なブドウの果実が得られます。
・ブドウの果実のみを発酵させる生産者も多い中、ブドウの梗(実の付いた枝のような部分)も一緒に発酵させる全房発酵をさせることで、タンニンなどの様々な成分がしっかりと抽出されたワインとなります。
・そのような成分の豊かさは、若いうちは骨格ある質感でやや硬い印象を与えますが、長期熟成にも耐えるポテンシャルを持っており、熟成によって成分は溶け合い、ピノノワールらしいエレガントで優雅なワインへと成長していきます。
・樽のニュアンスが反映されやすい新樽を100%使用することで、樽感の強いワインに仕上げています。
近年ではあえて新樽比率を下げ、繊細なブドウの風味を感じやすくする造りにする生産者多いですが、上記のようなブドウの成分豊かな特徴である事で、100%の新樽の風味にも負けないバランスを保っていると言えます。
【外観】
深いルビーレッド。
熟成が進むほどレンガ色に近づいていきます。
【香り】
チェリーにブルベリーなどの果実香に、バラの華やかさや樽に由来するバニラのニュアンスも豊かに感じます。
熟成するほど果実香は、熟した果実からドライフルーツのような落ち着いた甘やかさが現れ、革製品や腐葉土といった熟成香も加わり、円熟を感じさせます。
【味わい】
凝縮感のある果実味は豊かに広がり、豊かなタンニンと酸は力強さのある質感を表現し、スパイシーなニュアンスも感じます。
熟成が進むほどタンニンや酸味などの成分は溶け合う事で、なめらかでエレガントな質感と旨味の強まった優雅な味わいが現れ、樽の風味や熟成香も加わった複雑な風味のある余韻が長く続きます。
《飲む時の適正温度》
【14℃~18℃】
その力強く豊かな香りと味わいを感じるには、このくらいの温度帯が最も広がりある風味を楽しめるでしょう。
少し冷やし気味にすれば酸味が際立ち軽快さのある飲み口になりますし、温度を上げるほど酸は穏やかに感じられ、甘味や複雑な風味の広がりある味わいを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から5~40年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ赤のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1978年 5
1979年 3
1980年 2
1981年 2
1982年 2
1983年 3
1984年 1
1985年 5
1986年 4
1987年 4
1988年 5
1989年 4
1990年 5
1991年 3
1992年 2
1993年 4
1994年 2
1995年 4
1996年 5
1997年 3
1998年 3
1999年 4
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 3
2004年 2
2005年 5
2006年 3
2007年 2
2008年 3
2009年 5
2010年 5
2011年 3
2012年 4
2013年 3
2014年 4
2015年 5
2016年 4
2017年 4
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
豊かな香りと、成分豊かで優雅な味わいを持った良質なワインです。
香りが取りやすく、温度が少しずつ上がる事で甘味を感じやすいように設計された、ふくらみのあるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
アワビバター
和牛サーロインステーキ
など、豊かなコクを持った料理に合わせる事で、豊かなワインの味わいが料理を引き立て、また、料理がワインを引き立て、複雑で優雅な風味の広がる極上のマリアージュを楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
しっかりガッシリとしたブルゴーニュピノノワールで、近年主流である樽は控えめでブドウ本来のエレガントな味わいを楽しむワインというよりは、樽もしっかり効いて、タンニンなどの成分の抽出もしっかり行っているクラシックな傾向のワインです。
エレガントでバランスの良いワインも素晴らしいですが、このようなあえてクラッシックな造りをするワインを選ぶことで、ピノノワールの違った表情を楽しめますし、逆に主流のエレガントさというものを改めて理解する事もできそうです。
もちろん品質は高く評判も高いワインですから、贈り物やプレゼントあるいは記念日に飲むワイン等にしても、十分に力を発揮してくれる事でしょう。
《こんな場合には不適切!?》
シャトー・ド・ラ・トゥールでありシャトー・ラトゥールではありません!!
シャトー・ラトゥールにしては安い!!という事で間違って購入しないようにしましょう。(笑)
とは言っても、ワインはお酒であり楽しむ事が一番大切だと思いますので、不適切な場合など本当は無いのかもしれません。
間違ってしまっても、これはこれで十分楽しめます。
そもそもこの記事を読むような方は、まず間違えませんね。失礼しました。
あえて言うなら、場面の雰囲気を悪くするような飲み方は不適切という事でしょう。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「別に悪いって言ってるんじゃないよ。ブルゴーニュってこんなに渋くて重いってことがあるの?って言ってるんだよ。」
【良い口コミ】
「10年物の07は力強く複雑だな。なるほどグランクリュってわけだ。」
「6年熟成の09はヴァニラの香り漂い、色も味わいもしっかりで強い酒質。思っていたよりも閉じていなくて、時間が経つほどに骨格ある味わいと樽感がしっかりと感じられます。長期熟成で球体を思わせるワインになるでしょうが、ポテンシャルエネルギーを感じる今でも十分楽しめます。」
「これはなかなか旨いな~。バランスが良くて上品でありながら深い。まさにブルゴーニュだな。13年目の2002だぜ。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 20%
美味しい 44%
普通 36%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
そこまで口コミが多くありませんでしたが、とてもタンニンが豊富で樽の効いた、しっかりとした造りである事が伝わってきました。
という事で、しっかり系の味わいが好みの方は非常に満足されている傾向がある印象で、長期熟成によってもなめらかでエレガントな品質に成長し、高評価を得ている事がわかりました。
ただし、若いうちは結構骨格ある味わいで、ポテンシャルは感じるものの、スルスル飲めるようなエレガントさは感じにくいようですから、そのような特徴も知っておいた方が良さそうです。
以上です。
シャトー・ド・ラ・トゥール。
なかなか特徴的なワインでした。
近年はクオリティの高い繊細なブドウの風味をバランス良く表現するワインが主流ですが、全部がそうなってしまってもおもしろくありません。
シャトー・ド・ラ・トゥールがどのような意識でこのようなワインを生産しているかは存じ上げませんが、とても興味深いです。
ドラえもん。
全員出木杉君では、なんにもおもしろくないでしょう。
ジャイアンがいて、のび太がいて、しずかちゃん(他多数)がいることで、全体がおもしろくなる。
ワインもそんな事でしょう。。。
かな?
という事で、このワインはややジャイアン寄りで、熟成によってジャイアンはやさしい勇敢さを持った大人へと成長してゆくのでしょう。。。
あなただけのの好みの一本、忘れられない一本が見つかる事を願っております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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