ワインを知らない人でもなんとなく知っている白ワイン産地と言えばシャブリ。
ワインに興味を持ち始め、特に優れた白ワインとして知る事になるのがモンラッシェ。
私の個人的イメージではありますが、おおよそ外れてはいないのではないでしょうか。
モンラッシェはピュリニー・モンラッシェ村とシャサーニュ・モンラッシェ村にまたがるグランクリュであり、世界の白ワインの頂点とも言える畑。
そんなモンラッシェは味わいも格別ですが価格もやはり高騰しており、安くても7万程度、DRCやルフレーヴとのモンラッシェともなれば100万円を超えることもザラで、非常に手の届きにくいワインとなっています。
しかしモンラシェを冠するワインもツーランク落として、ピュリニー・モンラッシェやシャサーニュ・モンラッシェといった村名ワインにまで落とせば、安いとまではいかないまでも、非常に優れた白ワインを比較的手頃に楽しむことができます。
今回はピュリニー・モンラッシェの村名ワインにおいて、日本の一般消費者の方々に多く飲まれ、そして口コミ評価(vinica)の高いワインはどれだろうという客観的視点から調べてみた結果、ルフレーヴと並んで異質の存在感を放っていたのがやはりソゼでした。
美しい酸とミネラルを持った清潔感ある品質は、多くの飲み手の心を掴んでやみません。
ここで、簡単にプロフィール。
ピュリニー・モンラッシェにおいて、ルフレーヴと並んで双璧をなす偉大な生産者として知られるエティエンヌ・ソゼ。
1925年、創始者であるエティエンヌ・ソゼ氏はドメーヌを設立。
年々規模を拡大し1950年頃には12haまで畑の規模を拡大。
1975年、2代目当主になったのはエティエンヌ・ソゼ氏の娘の娘である孫娘ジャニーヌ氏と結婚したジェラール・ブート氏。
ブート氏は、ディション大学で醸造を学びプス・ドールで経験を積み、大学で出会ったジャニーヌさんと1974年に結婚し、翌年亡くなったソゼ氏のドメーヌを引き継いだというわけです。
しかし、1991年エティエンヌ・ソゼは栽培から醸造までを一貫して行うドメーヌとしての看板をおろすことになります。
それは、ソゼ氏の娘が嫁いだジャン・マルク・ボワイヨに財産相続として畑を要求され、結果12haあった畑は9ha程度に減少したことが要因。
元々の顧客に対してのワインを賄うため、ブドウを買い付けてワインを製造するネゴシアンスタイルを選んだというわけです。
通常ならば、ワインをドメーヌ物とネゴシアン物に分け、ドメーヌ物の価値を高めるという手法が多いと思われますが、そのような事はせず自前のブドウでは生産量が足りない部分を仕入れたブドウで補うスタイルを選び、潔くドメーヌの看板を下ろしたことは、律儀な夫婦の人間性が感じられるエピソードです。
とは言え、日ごろから目の届く範囲にありブード氏の栽培理念に賛同し信頼のおける栽培農家によるブドウのみを仕入れており、その品質は落ちるどころかむしろ上昇しています。
以上がソゼの簡単な経緯です。
ピュリニー・モンラッシェを知りたいのであれば、ソゼのワインを飲まないという選択肢は無いと言えるでしょう。
《ワイン名》 エティエンヌ・ソゼ ピュリニー・モンラッシェ
《価格》
【1~1,5万円】
《ブドウ品種》シャルドネ
《ボディ》 ミディアム~フルボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ピュリニー・モンラッシェ
《生産者》 エティエンヌ・ソゼ
《特徴》
ピュリニーらしい硬質なミネラル
繊細かつ厚みもある美しさは
バランス感覚に優れる
このワインの特徴は、ピュリニー・モンラッシェ特有の鉱物や金属を思わせるミネラルを多く含んだ品質で、美しく伸びやかな酸も加わる事で背筋の伸びたよううな気品を感じさせる質感にありますが、厚みのある果実味やほどよい樽の風味も加わった複雑な味わいはバランス感覚に優れエレガントさがあります。
その凛とした佇まいは、熟成させることで丸みを帯びた円熟味が現れ、心地よい旨味や甘味を伴った品質に成長していきます。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■最上のテロワール■
世界で最高峰の白ワインを生む畑であり、気候や土壌などシャルドネにとって最高のテロワール(ブドウを取り巻く自然環境の全て)が整っています。
シャサーニュ・モンラッシェに比べると果実味はやや穏やかで、凛としたミネラルや美しい酸を持った気品ある品質がピュリニー・モンラッシェの特徴です。
■ビオディナミ農法■
無農薬・有機肥料で天体の動きも考慮したビオディナミ農法の採用で、微生物の働きなどによりピュリニー・モンラッシェの豊富なミネラルや美しい酸などの個性を反映した健全で成分豊かな土壌が育ち、その成分を吸い上げた複雑で洗練されたピュアなブドウが得られます。
■絶妙な樽使い■
樽の効かせ方が巧いと言われるソゼは、樽のニュアンスが反映されやすい新樽の使用比率は約20%。
若いうちは樽が前面に出る場合もありますが、熟成するほどワインに溶け込み、絶妙な複雑味を醸し出すようになります。
【外観】
輝く淡いレモンゴールド。
熟成が進むほど濃いゴールドの色調に変化していきます。
【香り】
グレープフルーツや青リンゴに白桃や蜂蜜などの爽やかかつフルーティな香りに、ナッツ類や樽に由来するバニラ、豊富なミネラルを予感させる金属や鉱物のニュアンスも加わった清潔感ある香りが広がります。
熟成するほど円熟を思わせる黄色い花に蜂蜜やバターにカスタードといったニュアンスが強まっていきます。
【味わい】
柑橘類やラフランスなどの厚みのある果実味を凛としたミネラルと美しい酸味が引き締め、気品を感じさせる味わいがあり、心地よい樽のやわらかな風味も加わった複雑な味わいは清潔感があり、エレガントな余韻へと導いてくれます。
熟成するほど果実感は熟した果実やハチミツのニュアンスが強まり、ミネラルや酸も溶け合う事で深いコクを持った味わいが現れ、優雅な余韻が訪れます。
《飲む時の適正温度》
【8℃~14℃】
冷やし気味にすれば酸味やミネラル感が際立ちエレガントな飲み口になります。
温度を上げるほどボリューム感ある風味の広がりを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から4~15年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ白のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
2003年 2
2004年 4
2005年 4
2006年 3
2007年 4
2008年 4
2009年 3
2010年 5
2011年 4
2012年 3
2013年 4
2014年 5
2015年 3
2016年 4
2017年 5
《適正グラス》
【ふくらみのあるシャルドネグラス】
少し温度を上げることで広がる風味を楽しめますから、香りが取りやすく温度も少しずつ上がるように設計された、ふくらみのあるグラスを選ぶことをおすすめします。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
天然真鯛のカルパッチョ
ホタテバター
など、上質でコクのある味付けをした料理などと合わせることで、バランスの良い風味とコクの広がりある優雅なマリアージュを楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
優れたピュリニー・モンラッシェを体感したいのであれば、美しい酸と豊富なミネラル感を表現したソゼの作品を選ばないわけにはいかないでしょう。
それほど多くの方の支持を得ておりますから、プレゼントや贈り物にも最適な優れたワインです。
美しい酸・ミネラル感・透明感を持ったワインを求める方、あるいはそれはどのような味わいなのかを知りたい方は、ソゼのワインで体感することが最も早い解決策ではないかと思います。
《こんな場合には不適切!?》
エレガンスとバランス感覚に優れた非常に美しいワインです。
ニューワールド系の果実味溢れる味わいや、グランクリュクラスのスケール感溢れる品質とは違った魅力を持っており、そのような品質を求める方には、その気品あるエレガントさを薄いと感じてしまう事もありそうです。
また、そのような強いワインの後にこのワインを口にしてしまえば、さらに薄く感じてしまう事もあり得ますから、続けていくつかのワインを楽しむ場合は飲み順も意識しておきたいですね。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「カリフォルニアのシャルドネばかりを飲む私にとっては薄いかな。きっと繊細で美しいというべきなのでしょうが、私にはブルゴーニュで言うとグランクリュクラスのパワーがないとダメみたいです。4年熟成の2015でした。」
「3年目の2015は、最初は爽やかなニュアンスが支配的、時間経過でキャラメルやベルギーワッフルの芳ばしさも出てきて良いのだが、果実感はやや弱く閉じた印象は否めない。数年後が非常に楽しみなワイン。」
「13年目の07を量販店で安く売られているのを見つけたから買ってみたんだけどね。これは完全にシェリー化つまり劣化してしまっているね。熟成酒は信頼できる店で買うべきかもね。」
【良い口コミ】
「11年目の08は熟成でだいぶ色も濃くなっているね~。柑橘類に洋梨、白い花にナッツやバターにハーブといった複雑さの増した香りが素晴らしく、酸やミネラルもいい感じに溶け込んで優しい果実味を支えているよ。」
「5年熟成の2014は白い花に柑橘類、そしてラムネを連想させる清涼感ある香りに心地よい樽感。芯のあるミネラルには旨味も伴っており、ほんのり上品な甘味を持った果実味で絶妙な酸味はバランス良く、キメが細かく透明感のある飲み口。余韻に残る伸びやかな酸も心地よく、ソゼらしさを堪能できる素敵なワインでした。」
「暑い日にピッタリのソゼ。3年熟成の2016にはソゼらしい際立つ酸があり、余韻は長いけど潔さもあるんですよね。」
「最初は閉じ気味の硬質レモン水の佇まい。しかし7年熟成の2011はここから良くなるんだ。少しずつ白桃やアンズに蜜やカスタード、それからナッツにバニラが広がりだす。ミネラルや酸のバランスも素晴らしくエレガンスを感じるね。ソゼって感じだよ。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 0%
美味しい 83%
普通 14%
良くない 3%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
ソゼらしい凛としたミネラルと美しい酸を持ち、スッと流れるような透明感溢れる質感に高い満足感を得た方がほとんどの印象です。
残念な劣化以外では悪いとまでの感想には至りませんが、若い場合少々閉じ気味の傾向があるのと、果実感溢れるワインが好みの方には、若干そのエレガントさを薄いと感じてしまう傾向もあるようです。
とは言え、グランクリュやプルミエクラスほどのスケール感やボリューム感は無いにせよ、洗練された清潔感ある造りへの満足度は高く、村名のピュリニー・モンラッシェの中ではルフレーヴと並んでトップクラスのワインである事が確認できました。
以上です。
ソゼのピュリニーの美しさがなんとなく伝わりましたでしょうか。
私もソゼを口にした時は、美しい酸・ミネラル感・エレガントとはこのような品質の事かと納得した記憶がございます。
やはり多くの方に選ばれ評価の高い生産者には、選ばれるだけの理由があるのだなと思います。
因果応報って事ですかね・・・。
《インドの悟りの人》
「お前が偉そうに因果応報とか言うな・・」
あ、その節はお世話になりましたが・・・
悟りの人が【お前】って。。。
因果応報とか言うとまずいですか?
インドの回での事、まだ根に持っているようです。。。
「・・・。」
ほら・・すねた。
・・・・・。
あ・・意味不明のストーリーを入れてすみません。
毎日記事を書いていると、たまにクセのある事したくなります。(笑)
さておき、ソゼは世界でも類い稀な優良生産者だと思います。
果実のボリューム感溢れるワインではなく、全体のバランスで気品と優雅さを表現した美しい白ワインをお探しでしたら、ソゼは必ず候補に入れるべきだと感じています。
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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