チャーミングで軽快なガメイのイメージを覆すボージョレの最高峰。
「ガメイって熟成できるんだね。」
「まるで上質ピノノワールそのものだ!!」
そんな口コミも多数見受けられる品質は、ワイン好きの方の好奇心を擽る絶妙な選択ともなるのでは!?
今回はそんなワインの紹介です。
ボジョレー・ヌーヴォーをはじめとする、カジュアルなワインのイメージが強いボジョレー。
しかしボジョレーにも格付けが存在し、以下の通りの階層になっています。
格上から順に。
1、村名AOC(クリュ・ド・ボージョレ)
※10の村が認定されています。
2、地区名AOC
《2-1》ボージョレ・ヴィラージュ
《2-2》ボージョレ+村名(村名AOC以外の村名)
《2-3》ボージョレ・シュペリウール
《2-4》ボージョレ
※以上の4つのAOCはすべて地区名AOCに分類されます。
※ボージョレよりボージョレ・シュペリウールとボージョレ+村名は少しだけ規定が厳しいため少し高品質。
※ボージョレ・ヴィラージュはさらに厳しい規定があるためより厚みのある高品質なワインと考えて下さい。
以上です。
今回は、そんな階層の中でも最上級であるクリュ・ド・ボージョレ、つまりボージョレの最高峰を見つけようというものです。
クリュ・ド・ボージョレを生み、日本で購入可能な主要生産者を20程ピックアップし、その中で多くの日本の消費者の方々に実際飲まれ、そして口コミ評価の高いワインはどれだろうと調べてみた結果、圧倒的に存在感を放っていたのがマルセル・ラピエール のモルゴン、そして次に挙げるとすればシャトー・デ・ジャックのムーラン・ナ・ヴァンでした。
ここで簡単に歴史を解説します。
シャトー・デ・ジャックはボージョレのムーラン・ア・ヴァン村において、最も歴史ある生産者。
1996年から、ブルゴーニュの超名門であるルイ・ジャド社が所有するワイナリーです。
2015年には、シャトーを率いてきたギョーム・ド・カステルノーの後任として、シリル・シルーズが栽培醸造責任者に就任し、さらなる品質向上を担っています。
《ワイン名》 ルイ・ジャド シャトー・デ・ジャック ムーラン・ナ・ヴァン
《価格》
【3000~3500円】
《ブドウ品種》ガメイ
《ボディ》 ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ボージョレ>ムーラン・ナ・ヴァン
《生産者》 ルイ・ジャド
《特徴》
上級ピノを思わせる
芳醇かつエレガントな品質
熟成で真価を発揮
このワインの特徴は、チャーミングで軽快なガメイのイメージを覆す複雑さや奥深さがある点にあり、まるで上級ピノノワールを思わせる芳香性やエレガントさは、熟成を経ることで真価が発揮されます。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■ムーラン・ア・ヴァンのテロワール■
ボージョレの最高峰であるクリュ・ボージョレの中でも、最も力強く長期熟成に耐えるワインを生むテロワール(ブドウを取り巻く自然環境)を持つと評されるムーラン・ア・ヴァン。
花崗岩砂層にマンガンの鉱脈が入り込んだ土壌が、そのような成分豊かな品質を生む理由の一つです。
■自然派農法■
化学肥料や農薬を極力使用しない減農薬農法(リュット・レゾネ)、一部では無農薬・有機肥料に加え天体の動きも考慮したビオディナミ農法を実践する事で、微生物の働きなどにより、ムーラン・ア・ヴァンの個性を反映した健全で成分豊かな土壌が育ち、その成分を吸い上げたピュアなブドウが得られます。
■緻密な栽培から醸造■
ムーラン・ア・ヴァンの個性を最大限に引き出すために、区画ごとに管理の方法を変える緻密さがあります。
醸造においては、ボージョレで主流でフルーティで軽快なワインを生む、マセラシオン・カルボニックではなく、時間と手間が掛かるものの上級ピノノワールで行われる伝統的な製法を実践しており、充実感と繊細さを持ち合わせたワインが生まれます。
【外観】
深みのある赤紫色。
熟成が進むほどレンガ色に近づいていきます。
【香り】
イチゴやラズベリーなどの赤い果実の香りに、バラの華やかさや、オリエンタルスパイスに樽のニュアンスも感じられます。
熟成するほど果実香は熟した果実の落ち着きが現れ、紅茶や土の風味も加わった複雑性も感じられます。
【味わい】
豊かな果実味はハッキリと感じられるものの透明感があり、キメの細かいタンニンと心地よい旨味と共に広がりを見せ、綺麗な酸が味わいをまとめます。
そして、果実やスパイスの風味を伴ったエレガントな余韻があります。
熟成するほど成分は溶け合い、しなやかさが増し、円熟した落ち着いた果実感やドライフラワーに紅茶のニュアンスが感じられる品質に成長します。
じんわりと出汁の効いたような旨味が伴った味わいは、上級ピノノワールを思わせる優雅さがあり、心地よい余韻へと導いてくれます。
《飲む時の適正温度》
【12℃~18℃】
低めの温度すれば酸味やフレッシュ感が際立ち軽快な飲み口になりますし、温度を上げるほど酸は穏やかに感じられ、甘味や複雑な風味の広がりある味わいを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から4~20年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ赤のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 3
2004年 2
2005年 5
2006年 3
2007年 2
2008年 3
2009年 5
2010年 5
2011年 3
2012年 4
2013年 3
2014年 4
2015年 5
2016年 4
2017年 4
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
芳醇な香りと、複雑な味わいを持った上質ワインです。
香りが取りやすく、温度が少しずつ上がる事で甘味を感じやすいように設計された、ふくらみのあるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
キノコのリゾット
ラムチョップ
など、豊かなコクのある味わいの料理に合わせる事で、バランスの良いワインの味わいが料理を引き立て、また、料理がワインを引き立て、複雑でエレガントな風味の広がるマリアージュが楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
ボージョレの最高峰を味わいたいのであれば、マルセル・ラピエールあるいはこのワインを選ぶべきでしょう。
それほど名実共に優れたワインで、チャーミングなボージョレが苦手という方の、イメージを覆す可能性を秘めたワインと言えます。
《こんな場合には不適切!?》
上質なブルゴーニュらしく、主張しすぎない果実味やキメの細かい穏やかなタンニン、そして美しい酸を持った女性的なしなやかさを持ったワインです。
パワフルな果実味に、骨格を感じさせる豊富なタンニンを持った男性的な力強さを持ったワインではありません。
そのような男性的ワインは、ボルドーの上質ワインやスペインのリベラ・デル・デュエロなどのパワフルなワインから選ぶと良いでしょう。
また長期熟成に耐えるワインですが、適切な保存あってこそです。
直射日光や高温環境などは避けましょう。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「旨いと言えば旨い。でももう少し早く飲んでも良かったのかも。18年熟成の99は若干枯れ気味かな?」
【良い口コミ】
「これはピノと間違える方も多いでしょう。5年熟成の2012は、私の知っているガメイのイメージを覆します。ブルゴーニュのワインなんだなぁ・・って思える品質。なかなかのものです。」
「元々ガメイは好きなんですが、シャトー・デ・ジャックのガメイは特に素晴らしい。熟したベリー系果実にプラムやバラにシナモンの香りもあります。タンニンはシルキーで、溢れる果実感を綺麗な酸がまとめます。4年熟成の2015。やっぱりいいですね。」
「いや~この前飲んだ熟成ガメイにハマりましてね。今回は8年物の2010を購入。これくらいの熟成だとガメイらしいキュートさもあり、スッと体に染み込んでいくような優しい飲み口がとても良い。」
「なんと26年物のマグナム1994。ガメイの長熟はすっかり角が取れしなやかな飲み口。まるで上質熟成ピノを飲んでいるような気分。貴重な体験をありがとう🎵」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 3%
美味しい 50%
普通 47%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
とてもバランスの良い上質ブルゴーニュといった味わいの傾向が強く、ピノノワールと間違えてしまうという感想を持った方が多かったことが印象的で、並のボージョレとは一線を画す品質である事が伝わってきました。
若くしても満足度は高いですが、20年前後の熟成酒を楽しまれている方も多数で、ボトルによっては枯れた傾向もあるようですが、素晴らしい熟成を経たワインへの高い評価も多く見られました。
ボージョレにおける最高峰のワインであり、最有力と感じたビオの先駆者マルセル・ラピエールと比肩する実力を持ったワインと感じる結果となりました。
以上です。
チャーミングで軽快なガメイのイメージを覆すボージョレの最高峰
そんな味わいのイメージは広がりましたでしょうか。
ワインに造詣が深い方々との集まりなどで、このようなワインが登場しても盛り上がりそうですし、プレゼントや手土産にしても、好奇心を擽る絶妙な選択ともなりそうです。
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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