世界屈指のメルロー。
ワインアドヴォケイトで2年連続100点満点(2015,16)など、時にペトリュスやル パンを超えるほどの評価を獲得しており、日本の経験豊富なワインラバーの方々の口コミ満足度を拝見すると、紹介すべき特別なポテンシャルを持つワインだと感じました。
イタリアワインの頂点やメルローの最高峰を楽しむ時、マッセートは選択肢に入れるべきでしょう。
この記事を最後まで読み進めていただき、知識と共に深まるワインの味わいを楽しんでいただければ幸いです。
《ワイン名》マッセート
《価格》
【7~17万】
※評価の高いヴィンテージや古酒ほど高額
《ブドウ品種》メルロー
《ボディ》 ミディアム~フルボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 イタリア>トスカーナ州>ボルゲリ
《生産者》 テヌータ デル オルネライア
マッセートを手掛けるテヌータ デル オルネライアは、1981年にボルゲリに設立されたワイナリー。
創設者であるロドヴィコ アンティノリ氏は、イタリアワイン界を代表するトップ生産者でソライアを生むアンティノリ家の従兄弟にあたります。
品質主義を追求するオルネライアは、カリフォルニアの重鎮アンドレア チェリチェフ氏や、ル パンやモンペラなど数々のシャトーを躍進させた天才醸造家であるミシェル ロラン氏の協力も得て、世界屈指のワインを生むワイナリーの地位を確立しました。2005年にはルーチェなどを手掛けるトスカーナの名門、フレスコ バルディ家が形成するテヌータ ディ トスカーナの傘下に入りますが、変わらぬ品質で世界中のワインラバー達を楽しませています。
今回紹介しているマッセートは、そんなオルネライアが手掛けるトップキュベ。
オルネライアのメルローの畑を独立させて誕生した銘柄で、1986年に「メルロー」としてリリース。1987年から「マッセート」と名がついています。
「イタリアのル パン」と呼ばれ、イタリアの権威あるガイドブックであるガンベロ ロッソでは、2021年現在トレ ビッキエリ(最高評価)を計10回獲得。
世界的ワイン誌ワインアドヴォケイトでは2006、2015、2016で計3度も100点満点を獲得するなど、世界的ワインへと成長した銘柄です。
《味わいの特徴》
傑出したメルロー
力強くも甘美で官能的
このワインの特徴は、凝縮された果実味や豊富なタンニンに由来する力強さがありますが、円熟した果実味は甘美で、ベルベットのようなしなやかなタンニンと相まって柔らかな飲み口であること。また、洗練された味わいは透明感やエレガンスも両立しており、長期熟成する事でより深みのある官能的な味わいへと成長していきます。
【外観】
深いルビーレッド
【香り】
カシスやプラムなど円熟した果実香に、樽に由来するバニラやタバコのニュアンスも加わり芳醇。スパイスやハーブのニュアンスも複雑性を高めています。
熟成するほど果実香はより円熟した甘美なニュアンスが強まり、ドライフルーツ、腐葉土、革製品といった熟成香も加わった魅惑的芳香に包まれます。
【味わい】
凝縮された果実味は心地よい甘味と深いコクを伴い、豊富でシルキーなタンニンと相まって力強くも甘美な味わいを表現。洗練された味わいは雑味なく透明感があり、上質な酸が味わいを優しくまとめると、複雑な風味や深いコクを残した余韻が長く続きます。
熟成するほど成分は溶け合い滑らかさが増すと同時に円熟した甘美な味わいはより深まり、革製品や腐葉土といった熟成のニュアンスも加わった味わいは複雑で妖艶。いつまでも続くような余韻に包まれます。
それでは、そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■品種の個性■
豊潤な果実味を持ち、穏やかな酸やタンニンと共に優しい飲み口を生む傾向のメルロー。
マッセートに使用されるメルローは特に凝縮され洗練されており、甘美で肉厚な果実味は妖艶で、豊富でシルキーなタンニンは構造を形成しつつ滑らかな質感を表現。洗練された酸は透明感や気品を表現する格別の味わいを生みます。
■3つの区画■
《マッセート アルト》標高が高い畑
小石と砂で形成される水はけの良い土壌で、ブドウは最も早く熟します。
円熟した果実味はしなやかで穏やかなニュアンスをワインに反映させます。
《マッセート セントラル》畑中心部
何万年も昔に海洋性物質が沈殿し形成された粘土質土壌を最も多く含む区画で、凝縮された力強さを表現。
濃密なマッセートらしさの由来はこの区画に由来しています。
《マッセート ジュニア》標高が低い畑
粘土と砂利で形成された土壌は瑞々しいブドウを生み、ワインに繊細さや滑らかさを与えます。
以上3つの個性がブレンドされることで、力強くも繊細なバランスを持ち合わせたワインが生まれます。
■樽の効かせ方■
ブドウの糖度や水分量が最も最適なタイミングで収穫されたブドウは、2度の選果をクリアしたブドウだけが醸造されます。
醸造を終えたワインは、ミディアムトーストの小樽(バリック)の新樽で区画ごとに12ヶ月熟成。さらにブレンドし12ヶ月熟成させます。
樽の風味が付きやすいのは、
小樽>大樽
新樽>古樽
で、小樽の新樽100%で造られるマッセートは樽の風味は強いと言えますが、それに負けないブドウの凝縮感があることでバランスが保たれています。
また、小樽は強すぎる酸やタンニンを和らげる効果もあり、比較的若いうちから飲みやすいワインを生む傾向があります。
※このように小樽を使用して若いうちから楽しめる造りを、大樽を使用する伝統派に対してモダン派と呼びます。
《飲む時の適正温度》
【14℃~20℃】
少し低めの温度にすれば酸やミネラルが際立ち引き締まった印象。エレガントな飲み口が楽しめます。
温度を上げるほど果実感や複雑な風味が広がり、ふくらみのある優雅な味わいが楽しめます。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から5~35年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
参考までに、ボルゲリのヴィンテージチャートとワインアドヴォケイトの得点も載せておきます。
良い年ほど成分が充実し、飲み頃になるのは遅いが長期熟成に向く。
難しい年ほど成分はやや希薄になり、早く飲み頃に達するが長期熟成には向かない傾向があります。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1991年 3
1992年 2
1993年 4
1994年 3(91)
1995年 3(94)
1996年 4
1997年 5(94)
1998年 4(97)
1999年 4(96)
2000年 3(92)
2001年 5(98)
2002年 3(95)
2003年 3(93)
2004年 4(96)
2005年 4(94)
2006年 5(100)
2007年 5(96)
2008年 4(96+)
2009年 4(94+)
2010年 4(98)
2011年 4(95)
2012年 4(95)
2013年 5(97)
2014年 3(94)
2015年 5(100)
2016年 5(100)
2017年 3(97)
2018年 3
()内の数字はワインアドヴォケイトの得点
《適正グラス》
【チューリップ型ボルドーグラス】
香りが取りやすく温度が少しずつ上がるように設計されたボルドーグラスを選ぶことで、バランス良く味わいを感じ取れます。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
和牛サーロインステーキ
天然うなぎの蒲焼
ワイン単体でも十分に楽しめるスケール感がありますが、特に上質でコクのある味わいの料理と合わせる事で、さらに互いの味わいを高め合う極上のマリアージュを楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《飲んだ人の口コミ》
【ネガティブな口コミ】
6年熟成の09は凄いポテンシャル。開けるにはまだ早い。
25年熟成の94はマイルドで甘美で洗練されており確かに素晴らしいですが、メドック格付け第1級の当り年のような記憶に刻まれるような味わいではなかった。
20年熟成の99は軽いブショネ。雑巾のような事はなく、ちょっとピーマン的な香り?全然美味しいと思ったけど、経験者曰くこんなものではないと。。。状態良いのって、どんだけ凄いのだろう。。。
【良い口コミ】
サッシカイア、ソライア、オルネライア、ルーチェなど、そうそうたるトスカーナ9種を飲んだが、16年熟成の04のマッセートが一番美味いと感じた。樽のバニラ感が心地よく丸みのあるモダンな味わいだった。
4年熟成の2014はまだ早いとも思いましたが、弱いヴィンテージである14ゆえに早飲みでも素晴らしい仕上がり。世界最高クラスのメルローだけに見られる弾けるようなラズベリー感は官能的で、ルパン99が思い浮かんだ。
11年熟成の05はもっと熟成させても良いらしいけど、とても美味しいと思いました♪
これ最高です。18年熟成の99は黙って出されたら、ペトリュスと答えるかも!!
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると、
感動的!! 47%
美味しい 50%
普通 3%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
価格も別格ですが飲み手の満足度も比例している印象。
類い稀なスケール感と深遠な味わいを持っているようで、メルローらしい柔らかさや樽のバニラ感も加わったモダンテイストなワインであることが伝わる口コミの数々でした。
ヴィンテージにもよりますが、10年以上(20年以上がより良い)寝かせた方が満足度は高い傾向。
稀に見る秀逸な銘柄で、イタリアワインの最高峰の一つだと感じる結果となりました。
まとめ
それでは最後に情報整理です。
マッセートは
【価格】
7~17万
※評価の高いヴィンテージや古酒ほど高額
【味】
凝縮された果実味や豊富なタンニンに由来する力強さがあるが、円熟した果実味は甘美で、ベルベットのようなしなやかなタンニンと相まって柔らかな飲み口。また、洗練された味わいは透明感やエレガンスも持ち合せており、長期熟成する事でより深みのある官能的な味わいへと成長する。
【飲み頃】
ブドウ収穫年から5~35年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
ボルゲリのヴィンテージチャートとワインアドヴォケイトの得点は以下の通り。
良い年ほど成分が充実し、飲み頃になるのは遅いが長期熟成に向く。
難しい年ほど成分はやや希薄になり、早く飲み頃に達するが長期熟成には向かない傾向。
5点 秀逸な年
4点良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1991年 3
1992年 2
1993年 4
1994年 3(91)
1995年 3(94)
1996年 4
1997年 5(94)
1998年 4(97)
1999年 4(96)
2000年 3(92)
2001年 5(98)
2002年 3(95)
2003年 3(93)
2004年 4(96)
2005年 4(94)
2006年 5(100)
2007年 5(96)
2008年 4(96+)
2009年 4(94+)
2010年 4(98)
2011年 4(95)
2012年 4(95)
2013年 5(97)
2014年 3(94)
2015年 5(100)
2016年 5(100)
2017年 3(97)
2018年 3
()内の数字はワインアドヴォケイトの得点
【口コミ】
価格も別格だが飲み手の満足度も比例している印象。
類い稀なスケール感と深遠な味わいを持っており、メルローらしい柔らかさや樽のバニラ感も加わったモダンテイストなワインであることが伝わる口コミの数々。
ヴィンテージにもよるが、10年以上(20年以上がより良い)寝かせた方が満足度は高い傾向。
以上です。
世界屈指のメルローでした。
かなり高額なワインですが、ペトリュス(約32~170万)やルパン(約27~300万)の高騰ぶりを考えると、安く感じてしまうという錯覚がおこりそうです。。。
あなたのワイン選びの一助になれれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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