「コスパが良い上級ブルゴーニュピノはありませんか。」
こう聞かれたなら、私はその産地の候補にニュイ・サン・ジョルジュを挙げます。
なぜならコート・ド・ニュイにおいて、ヴォーヌ・ロマネ、シャンボール・ミュジニー、ジュブレ・シャンベルタンなどは知名度も抜群で品質も高いですが、価格もどうしても高騰しがちです。
かと言って、マルサネやフィサンではやや力不足な感じもします。
ところが、ヴォーヌ・ロマネの隣であるニュイ・サン・ジョルジュはどうでしょう。
グランクリュこそ無いものの優れたプルミエクリュがいくつも存在し、しかも価格がそこまで高騰していないという事で、コスパの良い上級ピノの産地と言えるでしょう。
そして、「1万円台で美味しいワインを探しています。」
こうなれば、私はラルロのモノポール(単独所有畑)を迷わず提案します。
1987年に保険会社であるAXAがドメーヌ・ジュール・ベランを買収し、ドメーヌ・デュジャックで働いていたジャン・ピエール・ド・スメ氏を責任者として招き、ニュイ・サン・ジョルジュに本拠地を置きドメーヌ・ド・ラルロとしてスタートしました。
2014年からは女性醸造家ジェラルディーヌ・ゴドー(アレックス・ガンバルの醸造責任者)が責任者となり、これまでのスタイルを重視しつつ製造にあたっており、デュジャック仕込みの全房発酵で造られるワインは、どのラインナップのワインも評判で人気は高いものとなっています。
今回はニュイ・サン・ジョルジュで多くの方に実際に飲まれ、そして口コミ評価の高いワインはどれだろうという客観的視点から調べてみたわけですが、ラルロのモノポール(単独所有畑)であるプルミエクリュ クロ・デ・フォレ・サン・ジョルジュはいくつかあるラインナップの中でも一番に多くの方に飲まれ、そして満足度の高い評価を得ていました。
上級のニュイ・サン・ジョルジュを選ぶのであれば、必ず候補に入れておくべきワインだと感じました。
《ワイン名》 ドメーヌ ド ラルロ ニュイ サン ジョルジュ プルミエクリュ クロ・デ・フォレ・サン・ジョルジュ
《価格》
【13000~17000円】
《ブドウ品種》ピノノワール
《ボディ》 ミディアム~フルボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ニュイ・サン・ジョルジュ>プルミエクリュ クロ・デ・フォレ・サン・ジョルジュ
《生産者》 ドメーヌ・ド・ラルロ
《特徴》
複雑で骨格ある味わい
雑味無く透明感も感じさせる
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■モノポール■
このプルミエクリュはラルロが単独で所有する畑、つまりモノポールであり、ドメーヌを代表する看板ワインです。
土壌も複雑で優れており、ラルロの生産するニュイ・サン・ジョルジュの中では最も複雑で骨格ある品質に仕上がり、洗練された果実は雑味無く透明感を感じさせるもので、長期熟成によっても深まる味わいを楽しむことができます。
■ビオディナミ農法の実践■
無農薬・有機肥料で天体の動きも考慮したビオディナミ農法の採用で、微生物の働きなどにより健全で成分豊かな土壌になり、その成分を存分に吸い上げた上質なブドウが育ちます。
■全房発酵■
一般的にはブドウの粒のみを発酵させるのが主流ですが、粒の付いた枝のような部分を梗(こう)と呼び、その部分も含めて全て発酵させるのが特徴的で、全体の約半分が全房発酵のブドウが使用されます。
それによって、滑らかなタンニンが得られ長期熟成に耐える事や、梗由来の独特の苦味や風味が加わり、複雑な味わいになります。
※この全房発酵は非常に難易度の高い手法としても知られ、適切に行わないと青臭さ・酸味・ギスギスしたタンニンが出てしまいます。
そのためには、梗の部分までしっかりと熟している状態にさせなくてはならず、菌の付きやすい梗を無農薬で健全に保つには非常に管理が緻密でなければなりません。
そのためこの手法を実践しているのは、DRCなどの極一部のトップ生産者のみというわけです。
■ほどよい樽香■
樽の風味の反映されやすい新樽の使用比率をあえて低くし(50%程度)、ブドウの繊細なニュアンスも感じられる程度の、ほどよい樽の風味が感じられるワインになります。
【外観】
深みのある美しいルビーレッド。
熟成が進むほどレンガ色に近づいていきます。
【香り】
ラズベリーやブラックベリーにプルーンなどの芳醇な果実香に、バラの華やかさ、ハーブにカカオにタバコのニュアンスも心地よく感じられます。
熟成するほど果実香は円熟を感じさせる熟した果実や、ドライフルーツの甘やかさが現れ、紅茶に革製品や腐葉土といった複雑で奥深いニュアンスが広がりを見せます。
【味わい】
若いうちは洗練された果実味が豊かに広がり、ほどよい酸味は美しく味わいをまとめます。
骨格を感じさせるタンニンはキメは細かくなめらかな質感を表現し、心地よい旨味と複雑な風味を伴った長い余韻があります。
熟成するほど成分は溶け合う事でなめらかな質感になり、果実味も円熟を感じさせる上質な旨味を伴った甘美さが現れ、優雅な風味を伴った余韻が長く続きます。
《飲む時の適正温度》
【14℃~18℃】
その充実感のある心地よい香りと味わいを感じるには、このくらいの温度帯が最も広がりある風味を楽しめるでしょう。
少し冷やし気味にすれば酸味が際立ちエレガントな飲み口になりますし、温度を上げるほど酸は穏やかに感じられ、甘味や複雑な風味の広がりある味わいを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から5~30年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ赤のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1990年 5
1991年 3
1992年 2
1993年 4
1994年 2
1995年 4
1996年 5
1997年 3
1998年 3
1999年 4
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 3
2004年 2
2005年 5
2006年 3
2007年 2
2008年 3
2009年 5
2010年 5
2011年 3
2012年 4
2013年 3
2014年 4
2015年 5
2016年 4
2017年 4
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
複雑で豊かな香りと、充実感のある味わいを持った秀逸なワインです。
香りが取りやすく、温度が少しずつ上がる事で甘味を感じやすいように設計された、ふくらみのあるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
和牛のタタキ
うなぎのかば焼き
など、上質で豊かなコクのある味わいの料理に合わせる事で、複雑なワインの味わいが料理を引き立て、また、料理がワインを引き立て、複雑で妖艶な風味の広がる極上のマリアージュが楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
ニュイ・サン・ジョルジュで優れたワインをお探しでしたら、このワインを候補に入れるべきでしょう。
次に紹介するように、実際飲まれた方の評価も非常に高く、価格は安くはありませんが本物を理解できる方も納得の品質のワインと言えるでしょう。
そんな特別感のあるワインは贈答用やプレゼント、特にワインに造詣が深い方などにはニュイ・サン・ジョルジュのトップクラスという選択は、絶妙に知的好奇心をくすぐる可能性も大いにあり得そうです。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「ふと開けてしまった5年目の2012は、私に『今ではない』と語りかけてくるようで、硬いというよりは混沌だ。時間が経てばまとまりが出てきて良いのだが、もう一本は寝かせておこうか。」
「熟成を感じさせる果実感はやや黒果実優位で、プラムなどのジャミーな傾向だ。8年熟成の09は酸もタンニンも穏やかな印象で良質なワインだが、感動を覚える事はない。」
【良い口コミ】
「2年熟成の2015って事で早すぎるか!?と思ったけど、このヴィンテージだからかな、旨すぎるぜ!!ビッグヴィンテージありがとう。」
「女性的と評されるクロ・ド・ラルロに対して男性的と評されるモノポール。ベリー系果実に加え全房発酵由来の茎のニュアンスも感じるアロマにスパイスも加わります。洗練された果実味は雑味無く透明感があり、タンニンはシルキーで凛としたミネラルも感じ、エレガントさが際立つワイン。6年目の2013は時間経過でさらに開いていき、とても好みの一本でした。」
「6年熟成の2011だ。熟したベリーにチェリーそして樽を感じる香り。タンニンはしっかりで骨格を感じるがキメが細かく繊細さがあり、深みのある味わいがあってなかなか良いじゃないか。」
「注がれた瞬間から湧き上がるような香りに既に魅了されてます。そしてそれに負けないくらいの味わい。広がる上質な甘味と、ハーブに革製品などの複雑なニュアンスがたまりません。13年の熟成を経た05はパワフルと言うよりは優しい印象で、バランスが素晴らしいですね。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 17%
美味しい 70%
普通 13%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
一部で好みでなかったり、若くて硬さを感じた方もいらっしゃいましたが、品質自体を悪いと評価する事はなく、大半の方がその充実感とバランス感覚に優れた品質に、感動あるいはもう少しで感動というレベルの評価をされている傾向を感じました。
ヴォーヌ・ロマネでもかなりの高評価を得ている造り手で、その他のワインも多くの方々に選ばれ高評価を得ているラルロは、ブルゴーニュを代表するトップ生産者である事は揺るぎないと再認識する結果となりました。
ヴィンテージにもよりますが、最低でも5年は熟成させた方が良いのではないかと思います。
以上です。
なかなか興味深いワインでした。
ところで、ヴォーヌ・ロマネ、シャンボール・ミュジニー、ジュブレ・シャンベルタンは華やかで目立つ存在。
一方、モレ・サン・ドニ、クロ・ヴージョ、ニュイ・サン・ジョルジュはやや地味で落ち着いた印象を持っているのは私だけでしょうか。
クラスで言うと、運動もできて明るくてモテる人気者が前者で、努力家で地道に頑張るけどそんなにモテないのが後者のような存在です。
勝手な個人的妄想なので深く受け止めないで下さい。。。
ただ私自身は後者の要素満載の経験値がありましたので、このようなニュイ・サン・ジョルジュに勝手ながら親近感を持ってしまいます。
《仮想ニュイ・サン・ジョルジュ》
「お前なんかと一緒にするな。」
と、怒られてしまいそうですね。(笑)
どうでもいい話を失礼しました。。。
とにかくラルロが優秀な生産者であり、その中でもこのモノポールは特に看板ワインであり、非常に多くの飲み手を魅了しているのは事実。
あなたのワイン選びの一助になれれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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