「don’t Think feel」(考えるな、感じろ。)
そんなブルース・リーの名ゼリフを思い出させてくれた生産者の紹介です。
「Vin Vivant(ヴァン・ヴィヴァン)」
意味としては「生き生きとしたワイン」という事ですが、当主であるフレデリック・コサール氏は言います。
「ワインは頭で考えるな!良いワインは口に含んだ瞬間必ず魂が揺さぶられるような感動がある!それは、テロワールやミネラルの波動がブドウに変化し、そのブドウの波動がワインに変化し、そしてワインの波動が人間に伝わっている証拠だ!」
つまり、Vin Vivantとはそのような魂を揺さぶられるような波動を持つワインであり、格付けや知名度の色眼鏡を通してワインを味わうのでなく、ただただワインの本質を感じ取れと言っているのでしょう。
まさに「don’t Think feel」です。
そして、彼自身がそのようなワインを造ろうとしている事は言うまでもありません。
さておき、私はサン・ロマンで多くの方に飲まれ(口コミされ)、そして口コミ評価の高いワインはどれだろうという客観的視点から調べてみました。
その結果、完全に異質の存在感を放っていたのがシャソルネイ、と言うよりは私の調べる限りサン・ロマンにおいてはシャソルネイ以外に目を引く評価を得ているワインは存在しませんでした。
簡単に歴史を紹介します。
酪農を家業にする家系に生まれたフレデリック・コサール氏は、厳しい父の影響で家業を継ぐための学校に通ったり会社で研修を受けるが、家業は継がない事を決意。
以前から興味のあったワインを志し、23歳にして醸造学校で学んだ後クルティエ(ブドウ・果汁・ワインの生産者と、それらをを仕入れてワインを造り販売するネゴシアンを仲介する仕事)を始め、1996年には遂に自らの理想のワインを造るためにドメーヌを設立、2006年からはネゴシアンとしても活躍。
以上です。
サン・ロマンというややマイナーイメージのある産地という事で、価格も非常に抑えられており、飲み手の高い満足感を獲得しているこのワインは、必ず知って、そして試していただきたいワインだと強く感じています。
《ワイン名》 シャソルネイ サン・ロマン コンブ・バザン
《価格》
【6000~7000円】
《ブドウ品種》シャルドネ
《ボディ》 ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>サン・ロマン
《生産者》 ドメーヌ・ド・シャソルネイ
《特徴》
洗練された品質は
全ての要素が高次元で支え合い
バランスの良い味わいを表現
このワインの特徴は、清潔感や透明感を感じさせるような洗練された品質にあり、柑橘類の爽やかさやラフランスなどのフルーティーで上品な甘味、凛としたミネラル、ほどよ良い酸味にじんわり広がる旨味など、クオリティの高い様々な要素が互いを支え合うようなバランス感覚を持っている事です。
そのような優れたバランス感覚は、若くしても生き生きとした味わいが楽しめ、熟成する事でも奥深い味わいが現れるポテンシャルを持っている事も特徴と言えるでしょう。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■ドメーヌの立地■
ドメーヌはサン・ロマンの村から2キロほど離れた隠れ家のような場所にあり、近くには全く民家もなく携帯の電波すらないような場所。
コサール氏はあえて有害電波の無いクリーンな場所で醸造を行う事で、ブドウのありのままのパワーをワインに表現しようとしています。
■優れた土壌■
2009年の地質調査の結果、このワインを生む畑「コンブ・バザン」はモンラッシェと同じ地層である事が判明しました。
そのため、果実味やミネラルなどの成分の充実感のある上質なブドウが育ちます。
■自然派ワイン■
無農薬・有機肥料で天体の動きも考慮したビオディナミ農法の採用で、微生物の働きなどにより健全で成分豊かな土壌が育ち、その成分を吸い上げた複雑で上質なブドウが育ちます。
また、酵母は添加するのではなく自然酵母の働きのみを使用。
そしてSO2(二酸化硫黄)を添加しない事、無濾過にするなどを実践しています。
これらの取り組みは、土地の豊かな成分を吸い上げたブドウのありのままのエネルギーをワインに伝える、という自然派ワインの考えに基づいていると言えます。
■ヴィエイユ・ヴィーニュ■
平均樹齢約50年の古木(ヴィエイユ・ヴィーニュ)は、土地の成分を吸い上げる能力が高い事などから、上質な果実を実らせることができます。
■樽はバランス良く■
樽香が反映しやすい新樽の使用比率はヴィンテージごとに変えています。
それはヴィンテージによってワインの出来栄えが違うからで、ブドウ本来の風味を感じやすくし、ほどよい樽のニュアンスも感じられるバランスの良いスタイルに仕上げる狙いがあります。
【外観】
透明感のある淡いレモンゴールド
熟成が進むほど濃いゴールドに変化していきます。
【香り】
レモンなどの柑橘類の爽やかな香りに、青リンゴやラフランスのようなフルーティーな香りも広がり、ミネラルを感じさせる石灰のニュアンスに樽の風味、ほんのり蜜の甘やかさも心地よく感じられます。
熟成するほど果実香は円熟を感じさせる熟した果実や、樽に由来するバターのような落ち着きある香りが膨らみ、甘やかな蜜のニュアンスも強まります。
【味わい】
洗練された果実味は爽やかで豊潤かつ透明感があり、ほどよく美しい酸は味わいをまとめ、凛としたミネラルはしなやかに骨格を形成し、上品な蜜の甘味を伴った旨味がじんわりと広がった後、長い余韻があります。
熟成が進むほど果実味は落ち着いた印象の円熟味が感じられ、酸やミネラル分が溶け合い融合することでしなやかさと旨味が増し、上品な甘味を伴ったエレガントな余韻が長く続きます。
《飲む時の適正温度》
【8℃~14℃】
冷やし気味にすれば酸味が際立ちエレガントさが増します。
温度を上げるほどふくよかで複雑な風味の広がりを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から2~20年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ白のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 2
2004年 4
2005年 4
2006年 3
2007年 4
2008年 4
2009年 3
2010年 5
2011年 4
2012年 3
2013年 4
2014年 5
2015年 3
2016年 4
2017年 5
《適正グラス》
【ふくらみのあるシャルドネグラス】
少し温度を上げることで広がる風味を楽しめますから、香りが取りやすく温度も少しずつ上がるように設計された、ふくらみのあるグラスを選ぶことをおすすめします。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
地鶏のタタキにレモンを添えて
天ぷら各種をレモンと塩で
など、比較的繊細な味わいの料理などと合わせることで、洗練された心地よい風味とほどよい甘味やコクの広がりある上質なマリアージュを楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
上級ブルゴーニュ白ワインを比較的手頃で楽しめる優れたワインです。
地質はモンラッシェと同じであるにも関わらず、産地がサン・ロマンというだけで価格もかなり値打ちになるのですね。
様々な場面で活躍の期待が見込める優れ者である事は揺るぎないでしょう。
《こんな場合には不適切!?》
ワインはお酒であり楽しむことが最も大切だと考えますから、場面の雰囲気を悪くしたり、生産者に敬意の無い飲み方をしない限り不適切な場面というのは無いのかもしれません。
その事を踏まえてあえて言うとすれば、濃厚な赤ワインの後にこのワインを口にすると、せっかくの奥深い味わいを薄っぺらく感じてしまう事もありそうです。
順番が逆ですね。
飲み順も意識しておくことで、より全ての楽しめるのではないでしょうか。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「14年熟成の05はイエローが強めの濃い色調、柑橘類の香りが広がり味わいの成分も豊かのような気もするが・・・、ちょっと酸が強すぎないかな?良いワインなのだろうが他の要素を打ち消すほどの酸には疑問が残る。」
「悪いとまではいかないけど、なぜか2005だけは酸っぱいのよ。」
【良い口コミ】
「4年熟成の2014はフルーティーな風味で蜜のような上品な甘味が心地よい。比較的酸は穏やかでエレガントな味わいが魅力的。地質がモンラッシェと同じという事で、なるほどって感じです。」
「素晴らしい造り手で私のお気に入り。3年熟成の2016は果実味と酸味に旨味も豊富で、爽やかな柑橘類の風味には皮ごとレモンのニュアンスがあり、なんだかゴマの風味?もありますね。もう少し熟成させるとさらに良くなるのでしょうが、今飲んでもバランス良く素晴らしい味わいです。」
「柑橘系の爽やかさとラフランスのようなフルーティーな甘さを予感させる香り、味わいは軽快な爽やかさに始まり、じんわり広がる旨味が秀逸。単調な旨味ではない奥深さがあります。酸味は穏やかで心地よく凛としたミネラルもあり、全体の調和が素晴らしくいろんな料理にも寄り添いそうですね。9年熟成の09は格別に幸せな時間を私にくれました。」
「5年熟成の2013らしいけどな。難しい事は抜きにして、この白ワインは俺が飲んだ中では過去最高に旨いぜ!!」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 20%
美味しい 44%
普通 36%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
赤ワインに続いて非常にハイレベルでコスパも抜群というのが第一印象です。
2005に限っては原因不明の激酸があるようですが、それ以外のヴィンテージはそのポテンシャルの高い品質に、感動あるいはもう少しで感動レベルの評価をされる方が多い印象で、具体的にこのワインの悪い点を表現するコメントは見当たりませんでした。
赤ワインに比べて若いうちから楽しめる品質でもありますから、非常に隙も少なく選びやすい優れたワインだと確認する結果となりました。
以上です。
ワインは知識を増やして脳で楽しむというアプローチもあると思いますが。
コサール氏が言うように、一切の先入観を除いてワインの本質を感じるという事も大切だと感じます。
「don’t Think feel」ですね。
「幸せはなるものじゃなく、感じるぅものだぁ」という歌もありましたし(笑)。
話がそれました。
さておきコサール氏のワインからは、テロワール(ブドウを取り巻く自然環境)の持つエネルギーの波動というものが、ワインの中に込められているという事は確か。
選択肢の一つにこのワインを候補として考えてみてはいかがでしょうか。
・・・
あ・・。
そうです。
考えてはいけません。「don’t Think feel」
感じましょう(笑)。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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