言わずと知れたムルソーの2大巨匠であり、世界を代表する白ワイン生産者と言えるでしょう。
しかしムルソーにはその2大巨匠に続く存在と言われ、近年の品質の高さはそれらに迫り、あるいは凌駕してしまうのではないかと思わせる生産者が頭角を現しており、価格の面でもそれは現れてきています。
実際ムルソーのワインで多くの方に飲まれて(口コミ)され、そして口コミ評価の高いワインはどれだろうという客観的視点から調べてみた結果、非常に希少性の高いことと一般的知名度があまり無いこともあってか、2大巨匠ほど多くの方には飲まれていませんでしたが、非常にワインに造詣の深い経験豊かな方々がこのワインを選んでおり、そして非常に高い評価を与えておられました。
そして特に単独所有(モノポール)であるクロ・デ・ブシェールへの評価は高く、紹介すべきワインだと感じたわけです。
歴史は1830年からと古く、現当主のジャン・マルク・ルーロ氏は1989年からドメーヌを継承しており、伝統と新しい技術を融合させたスタイルで成長を続けています。
各ワイン専門誌の評価も非常に高く人気も高い生産者ですが、日本への輸入量が非常に少ないため非常に手に入れにくいワインです。
しかし、本物を理解するあなたには試すだけの価値のある偉大なムルソーだと感じています。
《ワイン名》 ドメーヌ ルーロ ムルソー 1er クロ・デ・ブシェール
《価格》
【5~8万円】
《ブドウ品種》シャルドネ
《ボディ》 ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ムルソー>プルミエ・クリュ クロ・デ・ブシェール
《生産者》 ドメーヌ ルーロ
《特徴》
ボリューム感とエレガンス
を併せ持つ
至極のムルソー
このワインの特徴は、ボリューム感のある香りと味わいを持っていますが、磨き抜かれたような雑味の無い質感と、凛としたミネラルや美しい酸味はエレガンスも併せ持っているところで、それらの要素が全て融合することで至極のムルソーの味わいを表現しています。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■優れたプルミエクリュ■
ブシェールは、グット・ドールやポリュゾといった非常に人気の高い一級畑に隣接しており、日照にも恵まれることで充実した成分を持ったブドウが育ちます。
■ビオディナミ農法■
無農薬・有機肥料で天体の動きも考慮したビオディナミ農法の採用で、微生物の働きなどにより健全で成分豊かな土壌が育ち、その成分を吸い上げた複雑で上質なブドウが育ちます。
■エレガンス重視の醸造■
「ここのテロワールには肉厚なムルソーより、エレガンスのあるムルソーが向いていたんだ。」
ジャン・マルク・ルーロ氏はそう語るように、エレガントさを表現する造りを実践しています。
特に果汁とその他の固形物をいっしょに漬け込む浸漬(マセラシオン)の工程において、十分な撹拌を行う事でリッチで豊かな風味を引き出すことをせず、撹拌をあまりしない事で豊潤さよりも純粋さを得ることを実践しています。
※通常白ワインは浸漬(マセラシオン)は行わないのが主流です。
詳しくは白ワイン造り方で
■控えめの樽■
エレガンス重視の醸造と通ずる理由ですが、樽香が反映しやすい新樽の使用比率を10~30%程度にすることで、ブドウ本来の風味を感じやすくし、ほどよい樽のニュアンスも感じられるスタイルにしています。
【外観】
輝く淡いレモンゴールド。
熟成が進むほど濃いゴールドの色調に変化していきます。
【香り】
柑橘フルーツの爽やかさにリンゴやラフランスのフルーティーさ、白い花の華やかさに石灰のようなミネラル香も広がり、バニラやナッツ類に上品な蜂蜜などの心地よい香りも感じられます。
熟成が進むほど、果実香は黄桃や熟したリンゴなどのニュアンスに変化し、黄色い花のボリューム感に、クリームブリュレのような香ばしい甘やかさも妖艶に広がりを見せます。
【味わい】
若いうちは洗練されたしなやかな果実味に、美しい酸味と凛としたミネラル感は背筋の通った品位ある味わいを表現し、心地よい風味を伴った余韻が長く続きます。
熟成させるほど成分は溶け合いしなやかで粘性の豊かな質感は強まり、上質な蜜のような甘やかさを帯びた果実味と旨味が妖艶な味わいを表現しつつ、美しい酸味はエレガントさを感じさせ、リッチで上品な風味を残した余韻はいつまでも続くような深さがあります。
《飲む時の適正温度》
【8℃~14℃】
冷やし気味にすれば酸味が際立ちエレガンス溢れる飲み口になります。
温度を上げるほどふくよかで複雑な風味の広がりある、秀逸な味わいを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から5~30年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ白のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1989年 5
1990年 4
1991年 2
1992年 4
1993年 2
1994年 2
1995年 4
1996年 5
1997年 3
1998年 2
1999年 3
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 2
2004年 4
2005年 4
2006年 3
2007年 4
2008年 4
2009年 3
2010年 5
2011年 4
2012年 3
2013年 4
2014年 5
2015年 3
2016年 4
2017年 5
《適正グラス》
【ふくらみのあるシャルドネグラス】
少し温度を上げることで広がる風味を楽しめますから、香りが取りやすく温度も少しずつ上がるように設計された、ふくらみのあるグラスを選ぶことをおすすめします。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
地鶏のグリル
のどぐろのアクアパッツァ
など、上質でコクのある味付けをした料理などと合わせることで、洗練された気品溢れる風味とコクの広がりある優美なマリアージュを楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《こんな場合におすすめ》
非常に希少性の高い偉大なムルソーです。
ワインに造詣の深い方にこそこのワインの価値は伝わるのではないか思いますから、最上級の敬意を込めての贈り物や、大切な日に楽しむ特別なワインなどにしてもよいのではないでしょうか。
コシュ・デュリでもコント・ラフォンでもなく、ルーロのモノポールを選べる方はなかなか少ないでしょう。
《こんな場合には不適切!?》
それほど偉大なワインですから、飲む場面や飲み頃にも意識を向けたいワインではないでしょうか。
せっかくの素晴らしいワインもまだ開いていないでは残念ですし、そもそもワインい興味が無いような方となんとなく飲んでしまうのも勿体ない気がします。
「なにこれ美味しー!!」
と、新たなワインラバーを生むという意味では、ありかもしれませんが(笑)。
それから適切な保存も楽しむためには必要でしょう。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「3年熟成の2015は期待値が高かっただけにね。やや香りが弱く感じられ酸が優勢な味わいかな。もちろん悪くは無いが、熟成後の方が良いだろう。」
「ルーロの看板ワイン。3年熟成の2015は素晴らしバランス感覚で、熟成させればどうなるか凄く楽しみ。ちょっと高いけど(笑)。」
【良い口コミ】
「7年熟成の2011は外観からすでに艶やかで、桃やラフランスに黄色い花のフルーティーでボリューム感のある香り。飲み口もしなやかでムルソーらしいトロリとした質感があります。何が主張するというよりは全体のバランスで格別の味わいを表現しており、芳醇さとエレガンスが波のように何度も押し寄せます。いつかまたいただきたい。そんな記憶に残る味わいです。」
「5年熟成の2013は最初少し硬い印象もあるが、柑橘類に白い花にリンゴのアロマが心地よい。口当たりはしなやかで上品な果実と、口の中で溶けるような甘味を伴ったミネラルが上質なバターを連想させる。美しい酸も秀逸なバランスを整えており、時間経過と温度の上昇でさらに開花する味わいも素晴らしい。」
「4年目の2015です。少し早いかなという不安もありましたが、全然OK。ミネラルの豊富さがわかるツルツルの液面に香り、レモンパイやカスタードを連想させるような上品な甘味を美しい酸がまとめ、いつまでも続くような余韻があります。今でもこんなに美味しいのに、熟成後はどんな凄い事になってしまうのでしょう。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 20%
美味しい 70%
普通 10%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
まずはこのワインに辿り着く方々は非常に造詣が深く、経験豊かな方ばかりというのがとても印象的です。
味わいの傾向は非常に凝縮感とエレガンスに溢れる傾向が読み取れ、樽がよく効いて熟した果実感のあるコッテリ系を求める方にはおすすめしにくかもしれません。
特に若い場合は抜栓直後硬い傾向もありますから、飲み頃や抜栓のタイミングを考えるべき品格溢れるワインだと感じました。
そして、長期熟成を経たこのワインの評価が見当たらないところが気がかりでしたが、かなりポテンシャルの高い酸とミネラルは長期熟成にも十分に耐え、妖艶で深遠な味わいに成長していく事は想像しやすいものでした。
価格においてもコシュ・デュリやコント・ラフォンに迫る(超える場合も)勢いで、知名度こそそこまで無いのかもしれませんが、秀逸な生産者と認識する結果となりました。
以上です。
非常に興味深い生産者のモノポールであり看板ワインでした。
ブルゴーニュのワインをたくさん調べていくと、やはり人気で消費者の皆様にも評判の高いワインというのは、共通して優れたバランス感覚を持っており、生産者もまたそのようなワインを生もうとしている傾向を強く感じます。
ボクシングの場合も、パンチが強いだけでもスタミナが凄いだけでもパンチを全部よけるだけでもダメですからね。
もの凄い華麗な足さばきとボディワークでパンチを全てよけているのに、攻撃になったら子猫のような猫パンチでは可愛くて面白すぎますが勝てないでしょう。
すぐにボクシングで例えます(笑)。
さておき、そのように何か一つが欠ける事もなく、全てが揃いそして支え合うような味わいを高次元で表現されているのがルーロのムルソーなのだと思うわけです。
白ワインの最高峰を味わいたい時。
ルーロのクロ・デ・ブシェールを選ぶ事は、ごく自然な事なのかもしれません。
あなたにとって善きワインとの出会いが多くなる事をお祈りしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
コメント