「ブルゴーニュの神様」
ワインを志す方ならば必ず知っているであろう偉人、アンリ・ジャイエ。
そんな故アンリ・ジャイエの元で修業し、現在もブルゴーニュのトップ生産者として活躍する生産者が存在します。
メオ・カミュゼ、フーリエ、シャルロパンがそれにあたり非常に評価も高く人気で、それぞれが秀逸なワインを生んでいます。
そして忘れてはならないのが、アンリ・ジャイエの甥にあたり真の後継者と呼ばれるエマニュエル・ルジェ。
1976年からジャイエ氏の元で修業、共にワイン造りを行い、更にジャイエの引退後、実際に畑の管理から醸造の全てを任されており、ジャイエ氏の所有する大部分の畑を引き継いだという実績があります。
そんなルジェの生み出すワインはどのクラスも秀逸で、パーカー氏に「ブルゴーニュで造られる最も優れたピノ・ノワールを象徴している」と称されています。
そして実際に飲まれた方の口コミ評価も非常に高いものがあり、知名度だけでなく、それを無視した客観的視点から見ても紹介すべきワインだと感じました。
そんなルジェのワインは、品質の高さ故に近年は価格も高騰し、なかなか手の届きにくいワインとなっていますが、村名のニュイ・サン・ジョルジュは手軽な価格(それでも高額ですが)でルジェを楽しめるという事で人気を集めており、秀逸なニュイ・サン・ジョルジュを選ぶのであればこのワインを選択肢に入れないわけにはいかないと思いました。
《ワイン名》 エマニュエル ルジェ ニュイ サン ジョルジュ
《価格》
【26000~40000円】
※ヴィンテージによって価格は変動します。
《ブドウ品種》ピノノワール
《ボディ》 ミディアムボディ
《甘辛》 辛口
《産地》 フランス>ブルゴーニュ>ニュイ・サン・ジョルジュ
《生産者》 エマニュエル ルジェ
《特徴》
複雑で肉厚でありながら
洗練された透明感を持ち併せる
このワインはニュイ・サン・ジョルジュらしい肉厚で複雑な風味と、ルジェらしい非常に洗練された透明感に溢れた造りの融合した、非常に完成度の高い品質にあります。
そのような品質になる理由をいくつか挙げましょう。
■完全除梗
アンリ・ジャイエの教え同様に、ブドウの梗(果実の付いた枝のような部分)は一切使用しない事もルジェの大きな特徴。
そうする事で、より洗練度の高い透明感溢れる品質になります。
※ただしDRCなどの極一部のトップ生産者は、ワインの複雑性や熟成能力を高めるために、梗の部分を全て使用する全房発酵を行っています。
全房発酵は非常に難易度の高い手法としても知られ、適切に行わないと青臭さ・酸味・ギスギスしたタンニンが出てしまいます。
そのためには、梗の部分までしっかりと熟している状態にさせなくてはならず、菌の付きやすい梗を無農薬で健全に保つには非常に管理が緻密でなければなりません。
■低温浸漬
果実の香りや色の要素を抽出する工程を5~7日間ごく低温で行う低温浸漬という方法を行うことで、純度やフレッシュ感を保つことを可能にしています。
■新樽100%
樽のニュアンスが反映しやすい新樽の使用比率を100%にすることで、心地よい樽の風味を感じられます。
これは、エレガントで優雅なヴォーヌ・ロマネが50%であるのに対し、肉厚で複雑なニュイ・サン・ジョルジュの品質に対するバランスを考慮した使用比率と言えるでしょう。
【外観】
透明感のある深いルビーレッド。
熟成進むほどレンガ色に近づいていきます。
【香り】
ラズベリーやブラックーベリーなどの甘味を感じさせる果実香に、バラやスミレの華やかさ、ニュイ・サン・ジョルジュらしい土っぽさや樽の芳ばしさに、紅茶の風味も加わり複雑です。
熟成が進むほど果実香は熟した果実の甘やかさや、ドライフルーツの落ち着いた妖艶なニュアンスに変化していき、紅茶や腐葉土になめし革といった熟成香も深まり、複雑で官能的な香りが広がります。
【味わい】
洗練された美しい果実味が口の中に広がり、深みのある旨味がじんわりと広がります。
酸やタンニンはワインに馴染んでおり、比較的穏やかで滑らかな質感を表現し、複雑な風味を伴った余韻が長く続きます。
熟成するほど果実味は円熟味を増し、魅惑的な甘味を伴った旨味も感じられます。
酸やタンニンなどの成分はさらに溶け合うことでシルクのような舌触りになり、バランスの取れた妖艶な味わいは、紅茶や土になめし革といった複雑な風味を伴った優雅で官能的な余韻へと導いてくれます。
《飲む時の適正温度》
【14℃~18℃】
その優雅で透明感に溢れた香りと味わいを感じるには、このくらいの温度帯が最も広がりある風味を楽しめるでしょう。
少し冷やし気味にすれば酸味が際立ちエレガントさが際立つ飲み口になりますし、温度を上げるほど酸は穏やかに感じられ、甘味や風味の広がりある複雑な味わいを楽しめるでしょう。
※ワインを飲む時の適正温度については、
第11回【ワインの適正温度】
でも確認できます。
《飲み頃と当たり年》
【飲み頃】
ブドウ収穫年から5~30年
※一般的傾向や口コミから推測
【当たり年】
良いヴィンテージのワインほど飲み頃になるのが遅く、長期熟成にも向きます。
難しいヴィンテージほど比較的早くから楽しめ、飲み頃の期間は短くなる傾向です。
一般的にブルゴーニュ赤のヴィンテージチャートは以下の通り。
5点 秀逸な年
4点 良い年
3点 平均的な年
2点 やや難しかった年
1点 難しかった年
0点 悪い年
1990年 5
1991年 3
1992年 2
1993年 4
1994年 2
1995年 4
1996年 5
1997年 3
1998年 3
1999年 4
2000年 3
2001年 3
2002年 4
2003年 3
2004年 2
2005年 5
2006年 3
2007年 2
2008年 3
2009年 5
2010年 5
2011年 3
2012年 4
2013年 3
2014年 4
2015年 5
2016年 4
2017年 4
《適正グラス》
【バルーン型ブルゴーニュグラス】
優美で複雑な香りと味わいを持った秀逸なワインです。
香りが取りやすく、温度が少しずつ上がる事で甘味を感じやすいように設計された、ふくらみのあるバルーン型ブルゴーニュグラスを選ぶと良いでしょう。
※ワイングラスの選び方の知識は、
第13回【ワイングラスの特徴・選び方】
でも確認できます。
《相性のいい料理》
和牛のタタキ
アワビバター
など、上質で豊かなコクのある味わいの料理に合わせる事で、優雅なワインの味わいが料理を引き立て、また、料理がワインを引き立て、複雑で官能的な風味の広がる極上のマリアージュが楽しめるでしょう。
※もう少し相性について知りたい方は、
第15回【ワインと料理との相性・マリアージュ】
でも確認できます。
《飲んだ人の口コミ》
【悪い口コミ】
「9年目の2010は劣化とまではいかないが、状態が良くないのであろう。梅を甘く煮詰めたようなニュアンスに、萎れた華、酸は強めでルジェらしい透明感が無い。」
「全く雑味の無い味わいは素晴らしいですが、同じ金額を払うのであれば私はラルロを選ぶでしょう。」
「21年の熟成を経た98は透明感があり美しいワインである事は間違いない。ただこのワインの前にロックのクロ・デ・コルヴェを飲むべきではなかった。順番が逆なのである。つまり薄く感じてしまうのだ。」
【良い口コミ】
「5年目の2014です。ルジェの中では一番手頃で正直そこまで期待していなかったですが、これは良いですね。薄めの美しいルビー色。甘やかなベリーに土っぽさを感じる香りで、酸とタンニンはキレイに溶け込み滑らかな質感で、ブラックティのような渋味がアクセントになります。時間経過と共にニュイサンらしい土っぽさにスパイスの効いた風味が強まり、甘やかさと苦味が増します。4時間もすれば甘露感が強まり、じんわりと広がる旨味が支配的に。さらに翌日は抵抗なく舌を流れるような美しさを纏い、香水のような香りと醤油を思わせる旨味も加わる。非常に変化が楽しく、熟成にも期待できる素晴らしいワイン。」
「ヴァン・ナチュール以外でこれほどのワインに出会うとは驚きだ。9年熟成の08は時間が経つほどに開いていき、ますます良くなっていく。私の価値観をも揺らがせる恐るべき生産者か!?」
「澄みきった色調に、やさしいベリー香。熟成を経た果実味の甘やかさは秀逸で、一切雑味が無い。この質感は完全除梗でなければ表現できないでしょう。19年熟成の98は別格の素晴らしさです。」
という皆様の声でした。
その他にもたくさんの口コミがありましたが、集計してみると
感動的!! 28%
美味しい 54%
普通 18%
良くない 0%
というニュアンスが伝わってくる結果でした。
流石ルジェだなというのが第一印象で、その完全除梗由来の洗練された透明感と、ニュイ・サン・ジョルジュらしい複雑さが感じられる美しいワインである事が、皆様のレベルの高い口コミから伝わってきました。
なるほどと思ったのは、悪い口コミで紹介したように、その透明感溢れる品質は強い風味を持ったワインの後に口にすると、そのエレガンスに満ちた繊細な風味を感じにくくしてしまう事もあるという事です。
ですから、いくつかのワインを続けて飲む場合、飲み順を考える事はこのクラスのワインの場合特に重要だと感じました。
以上です。
ニュイ・サン・ジョルジュの肉厚さ複雑さと、ルジェの洗練された透明感溢れる造りが融合した味わいのイメージは広がりましたでしょうか。
ブルゴーニュピノノワールの美しさ複雑さに魅了されるのが怖い方は、ルジェのワインに手を出してはいけません。
高確率で魅了されます(笑)
冗談はさておき、それぐらい美しいワインを生む生産者である事は、価格の高騰ぶりからもうかがい知る事ができます。
それでも選択肢の一つにルジェのニュイ・サン・ジョルジュを入れておくことは、賢者の選択と言えるでしょう。
あなたのワイン選びの一助になれれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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